FC東京戦~勝ちきれないチーム

2016/06/15 FC東京vsサンフレッチェ広島 味の素スタジアム

 新宿駅の京王線はちょうど帰宅ラッシュと重なったこともあり、すざましいまでに混んでいた。ただ、仕事帰りという意味では一緒であったもののこの中でスタジアムを目指してることに違和感を憶える。それもそのはず、試合日になると見かけるレプリカを着た人の姿をとんとお目に掛けることができなかったからだ。

 それでも飛田給駅に着くとバラバラと降りていく人がいた。そしてスタジアムへ行く道すがら弁当でも買おうと店に目をやるとどこも並んでいる。もうこのまま何も持たずスタジアムへ行ってしまった方がいいのではと判断に迷ったりもした。

 だがやっぱりレジに並び数分間買い物に時間を費やすと時間の余裕はなくなっていた。早足でスタジアムへたどり着くとアウェイゴール裏で仲間を捜し合流することができた。この日、アウェイエリアがかなり限定されてたことが見つけやすさにつながった。が、同時にそれは観戦者を密集させることにもなり多少の窮屈さを感じさせた。

 肩を寄り添うようにして座りながらキックオフ前に何とか弁当を食べ終わろうと勤める。元々食べるのが遅いぼくはこういう時もどかしさを感じる。両隣にいる仲間の足下にはすでに食べ終わった弁当の跡がある。やっぱりもうちょっと早く来たかったものだ。だが平日のナイトゲームだとどうしてもそう都合良くいかないのが現状である。

 自分がそんな切羽詰まった状態だった為、キックオフは気づいたら始まってたという感じだった。声援を発するサポーターの中でぼくは夕飯をやっと食べ終え残骸を処理する。どこか乗り遅れた気分になるのだった。

 ところがピッチの上ではあまり動きのない展開ばかり続いていた。特にサンフレッチェはボールを持っても後ろで回してるだけで一向に前に運べない。足下に入れ、チェックをかわす為に戻して。そんなことの繰り返しなのでディフェンスとその手前の中盤でボールを行ったり来たりしているだけなのだった。

 攻め手がない。このところのサンフレッチェはいつもこんな風に手詰まり感がある。そして少し前に出ようとチャレンジを挑むとことごとくボールを取られゴールに迫られるのだった。どちらも守備は低い位置でブロックを敷いて対処してるもののFC東京の方がゴールに迫っているのだった。

 そんな膠着状態とも言える動きのまま前半を終え、ぼくらはどことなく釈然としないものを感じながらハーフタイムを迎える。

「FC東京ってここ3試合くらい無失点らしいですよ」

 仲間が教えてくれた。

 それを考えれば致し方ないのかもしれない。だけどあまりにも攻め手がない。シュートらしいシュートってあっただろうか。ああ、ペナルティエリア外から打ったあの当たり損ねのやつがあったなと話してる内に仲間がピッチ内を指さした。

「あれ、浅野いなくないですか?」

 アップをしてるサブの選手の中に確かに浅野はいない。ということは後半頭から出るということだ。

「代わるのは宮吉だな。ゴールを狙う動きがちっともなかったもんな」

 そんなことを言っていると選手が現れた。確かにその中に浅野はいた。そして後半が始まると確かにゲームは動いていくのだった。

 裏を狙いサイドを使いゴールへ迫っていく。FC東京のディフェンスラインも下がっていく。そしてペナルティエリア内でのウタカの切り返し。マークを外すとゴール前へ。チョコンと触った浅野。それによりゴールに入ったのだった。

 ドワッと立ち上がったアウェイゴール裏。たちまち浅野のチャントが繰り広げられる。今シーズン1ゴールしかない浅野に多少の不安を覚えてたがそれは全くの杞憂であった。

 よし、このまま追加点をいけよ。そんな盛り上がりをみせたもののここで途端に攻め込まれる。バタバタと落ち着かない。そしてサイドから上げた半分やけくそ的なクロスにこれまたやけくそ敵に伸ばした足に当てられ綺麗にゴールにぶち込まれてしまったのだった。早い、早い早い失点なのだった。前節に続いてせっかく先制したのに5分もせずに追いつかれてしまったのだった。

 再び点を入れよう。そう意気込むもどうもこの後プレーの精度がない。林はゴールキックをラインを割ってしまうしパスミスは出るしシュートは枠に入らない。そのせいでカウンターを受け肝を冷やす場面が何度も訪れる。必死に守備に戻り何とか失点はくい止める。危ない、だけど点を取らないといけない。そんなことを繰り返す内にタイムアップのふえは吹かれてしまったのだった。

 また勝てなかった。

 そんな諦観した感情がありながらも多くのサポーターは選手に声援を送っていた。

 明日の仕事のこともあるしぼくらは早々にスタジアムを切り上げる。

「でも、これだけ歯がゆい結果になりながらも心に余裕があるのは4年で3回も優勝したせいだろうな」

 ドクトルが言うことにぼくは頷く。だがそれ故にチームの中にもマンネリ感もあるのかもしれない。選手の入れ替えもなくなってきたしどことなく停滞感がある。その状態、今一つパッとしなかった2014年シーズンに似てるのだった。

「水本も怪我してしまったし塩谷もオリンピック代表に内定したし若手が台頭する選手が出てほしいよな」

 そんなことを話し合いながらぼくらは人混みの中、駅へ向かうのだった。

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