ガンバ戦~今初勝利の味
2017/04/07 ガンバ大阪vsサンフレッチェ広島
4連敗、勝ち点1。そんなチームに何を想うかというとそれはせめて引き分けてくれればいいだった。勝利などもう望んでない。90分しっかり堪えてスコアレスドローに持ち込んでくれれば御の字である。そんな後ろ向きな感情しかないのだった。
濡れたピッチでのナイトゲーム、もう桜が咲いてるとはいえ夜になると気温が下がる。そのせいか選手の動きが悪い。いや、ここ最近サンフレッチェの選手の動きのよかったとこなんて観たことないのだった。
後ろでボールを回せば前からのプレスにボールを取られる。そして全員でブロックを敷いて守備に徹する。ところが人数をかけてもボールが奪えない。奪ったところで前線に出してもワントップの工藤は全くボールを収めることができないのだった。
出し手と受け手の意図が合ってない。特に工藤の動きというのは前線へのパスに対してことごとく逆の動きをしている。右に出せば左に動く。スペースに出せば足下で受けようとしてる。縦へ出すとパスに追いつけない。ああ、もしかして工藤は失敗だったのでは。この選手、シュートの精度がない上にゲームをつくる能力にも欠けている。とんでもない見込み違いだった。
そしてもう一人の見込み違いがフェリペである。超絶テクニックで攻撃の核となる選手という触れ込み通りの活躍は一向に見せない。ゴール前の密集にパスを出してはカットされる。その結果カウンターを受け自陣に戻らざるをえない。結果守備ばかりしてるように見えるのだった。
その結果際どいシュートを打たれてしまう。その都度「ああ」と目を背けそうになるのだが、この日は林が冴えていた。強烈なシュートをことごとくセーブしてしまうのだった。ああ、あの鉄壁のセービングをする林が戻ってきたのだ。そしてそれに呼応するかのように守備陣はシュートに対しては身体を張りブロックしてしまう。崩されても最後の最後は防いでしまう、あの粘りっこいサンフレッチェの守備が戻ってきたのだった。
後ろが守れば前は安心して攻めることができる。ガンバのプレス網をくぐり抜け前線へ進んでいく。リーグ戦2試合目のスタメンとなる右サイド高橋もがんばって高い位置でボールを受ける。1対1を仕掛ける。ミキッチ程成果はあげられないが、チャレンジする姿勢に喝采をおくりたくなった。
確かにゴールは上げられない。前線の連携で相手の守備を崩すということができないだけにシュートすら打てない。それでもこうして攻めてるだけで満足してしまう。あまりにもゴールがないだけにもはや得点の期待はしてないのだった。
ところがバイタルエリアの密集地からフェリペがシュートを打つ。
「行った!」
思わず立ち上がりそうになる。が、ガツンとゴールバーに跳ね返される。ああ、もう少し低ければ。そう頭を抱えそうになった次の瞬間セカンドボールをヘディングする姿があった。そのシュートは山なりだった為打ち損ねのようだった。
駄目だ、こりゃ。そう諦めた次の瞬間ボールはゴールに吸い込まれたのだった。
「入った。入った、入った、入った。ゴール、ゴール、工藤のゴールだ」
興奮は本人も一緒のようで勢いそのままサポーター席めがけて走る。期待を背負ったストライカーにとって今までの鬱憤を晴らしたかのように高揚してるのが遠目からでも分かるのだった。
それでもまだ1点。ガンバの攻撃力にすればそれをひっくり返すのなんか容易い。だからこそこの1点を守るべく皆が守備に奮闘するのだった。
インターセプトを狙い、打たれてもブロック、そして最後の砦林のビッグセーブ。勝てるかも、勝てるかも。そんな誘惑に胸が高まる。いやいかん、こんなとこで浮ついていたら勝てる訳がない。もう1点取るくらいじゃなきゃ。
それでも時間が進むにつれて段々現実的に時間稼ぎへと移行する。無理をせず行けなければボールを下げる。ロペスがサイドでボールキープする。そんな中でも隙を突いて攻めようとするとファールを受けFKを貰うことができる。得点は1点だが、これはいい流れのように感じた。するとガンバもシュートに精度がなくなり救われる。
アディショナルタイム、あと5分。あと4分、あと3分・・・・。
そして鳴った終了の笛の音が響いたのだった。勝った、ああ、勝ったんだ。今シーズン初勝利。その達成感からか、工藤はピッチに仰向けになったまま動けなくなっていた。
やっと勝てた。今シーズン初勝利の相手がガンバというのは予想の範疇ではなかっただけにその高揚感は一塩だった。やはりまだ降格を覚悟するには早かったようだ。そしてやっとシーズンが始まったような気がするのだった。
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