長崎戦~平和都市のダービーマッチ

2018/04/28 V不ファーレン長崎 vs サンフレッチェ広島 トランスコスモススタジアム長崎

 平和祈念マッチと銘打ったこの一戦。同じ被爆地同士がJ1で試合をするなどと想像した人はいるだろうか。地域リーグから始まりつい6年前までJFLにいた長崎がまさかJ1に昇格するとは。全くの想定外の事態にたまたま勢いに乗れたんだろうと高をくくっていたら4連勝してしまった。侮ることのできない相手なのだった。
前節負けたサンフレッチェとしてはここでの結果は今後に大きな影響を与える。連敗でもしようものならズルズルといきかねない。そんな切迫感があるからか、立ち上がりから素早い寄せ、前からのチェックというのを徹底してた。ただその割に開始早々にクロスを入れられヘディングシュートを打たれたのにはやはり長崎の方に勢いがあるのかもしれなかった。
それでも中盤でボールホルダーへガツンと当りにいく。ファールかと思いきや笛は鳴らない。前線へとパスを出す。そこからチャンスが生まれる。右サイドバックの和田が上がる。右でのショートパスが続く。そして和田からクロスが入る。パトリックが落とす。そのこぼれ球を渡がシュートを打つ。だがそれは枠に入らない。オーバーヘッドや振り向きざまからシュートを打つもどれも枠には入らないのだった。
決めきれない渡。ほんの少しのポジションのズレだろう。ゴールに飢えてるからこそゴールに近づき過ぎてしまう。だけどシュートへの意識があるからこそパトリックからのこぼれ球に反応できる。あと少し、あと少しが決まらない。本人ももどかしいだろうが応援してるサポーターももどかしい。ハーフタイムでティーラシンに交代してしまったのは残念だったのが正直なとこだ。
ところがそのティーラシンが入ってからというもの攻撃が活性化された。ティーラシンがボールを収める。後ろの選手もそれで押し上げの時間ができる。柴崎のアーリークロスをパトリックがヘディング。バーに当たってわずかに入らなかったものの段々とゴールが近づいてるような気がした。
ボールを取られても前線からのチェックですぐに取り戻す。ピッチを大きく使い前へ後ろへと使い右サイドのパス交換から裏へ出すと和田のオーバーラップからグラウンダークロス。ゴール前にいたのはティーラシン。振りぬいたシュートはGKの掌に当たったものの止めるより威力が優りゴールに零れ落ちたのだった。
入った、入った、入った。先制点。交代してわずか5分くらいだというのにもう決めてしまった。タイの英雄ティーラシン。今更ながらその触れ込みは本物だった。
先制した後も攻撃への姿勢は崩さない。右サイドからの展開が多かったものの左サイドからも柏がドリブルで切りくずす。2人、3人という守備網を切り込みゴールに迫っていく。CKに逃げられたものの柏のドリブルは大きなアクセントになっている。そして柴崎からのCK。ニアにいた佐々木がバックヘッド。ネットが揺れた。ファーサイドに入った。あまりにも呆気ない追加点に虚を突かれてしまった。
DFの佐々木はヘディングが強い。長身に見えるもののごく平均的な身長だけどヘディングができてしまうのはジャンプ力があるんだろうか。それともタイミングの問題なのだろうか。水本といい野上といい、今のサンフレッチェにはヘディングに強い選手が揃ってる。それ故にセットプレーの得点が効率よく決まるのだった。
その後、柏から吉野、佐々木から川辺への交代がある。2人共レギュラーへ向けてアピールしたい。ところが攻撃はどことなく一服したようになってしまった。1点でも返したいと迫る長崎の攻撃は無難に抑えているものの更に点を入れてたたみかけることもなかった。そこは2点差の中でのリスク管理として理にはかなってる。そしてその理にかなった部分を交代の2人はそつなくこなしているのだった。
無理につなぐことなくクリアするとこはクリアし、クロスが入っても野上を中心としたDF陣が跳ね返す。シュートらしいシュートも打たせてない。そのお陰で守備の時間が続いていても特に焦ることはなかった。
スタンドのアウェイエリアでは我らの広島とチャントが繰り広げられる。勝ってる時にされることの多いチャント、1対1の局面ではガツンとボールを刈っていくことによりよりその勝利への確信を高めていくのだった。
そしてそのまま0−2で終了。勝つことができた。連敗することはなかった。好調の長崎を下すことができたというのも大きい。崩れかけた自信は固まる。そしてこのまま連戦を乗り切っていきたい。
この勝利でもう昨シーズンの勝ち点を上回った。たった1年でこうも変わってしまった要素は何なんだろう。監督の采配、守備の堅さ、新加入選手の活躍。いろいろな要素があるだろう。だけど少なくとも今は楽しくサンフレッチェの試合を観れる。長崎の青い空の下でそんな想いと共に幸福感に浸るのだった。

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