鹿島戦~打つ手なき敗戦

2017/10/14 鹿島アントラーズvsサンフレッチェ広島 カシマスタジアム

 寒い。
 つい数日前まで夏のように暑かっただけに雨によって下がった気温には氷点下のような寒さを感じた。そして無駄に広いスタジアムのせいで閑散とした客席の印象が尚更そのイメージを助長させるのだった。
 当然のことながら水分を含んだピッチはスリッピーになってる。ボールも滑ってよく走りそうだ。これはパスが主体のサンフレッチェにとって悪くないコンディションであるはずである。が、実際にはボールよりも選手ばかり滑っていた。
 鹿島の攻撃に蓋をし、攻撃に厚みを増し、セカンドボールを拾って2次攻撃、3次攻撃へとつなげるものの肝心のシュートまでたどり着けない。鹿島の守備がいいのかもしれない。が、ここぞという場面でサンフレッチェの選手が転んでしまうのだった。
 その最たるがアンデルソン・ロペス。条件は一緒のはずなのになぜか転んでるのは黄色いアウェイユニフォームの選手ばかりなのだった。
 とはいえ攻めてる限り不利には見えない。いつかチャンスが訪れるという気がしてくる。右に振り左に振り、手数ばかり掛けている割にフィニッシュに持ち込んでないにも関わらず圧倒的優位にいると勘違いしてしまう。そこに隙があったのかもしれない。
 中盤でボールを奪われるとぽっかりと空いたスペースで土居が受けゴールへ向かう。懸命に追う千葉と青山。特にディフェンスとして残ってた千葉は追いつくも簡単にかわされミドルシュートを打たれるとGK中林の手の届かないとこに簡単に決められてしまった。それはまるでシュート練習であるかのように見事なまでにあっさりと決めたゴールだった。
 あれだけ手数を掛けてフィニッシュまで持ち込めないサンフレッチェに対してたった一瞬の隙を突いて決めてしまう。両者の立ち位置を如実に物語っているかのようだった。得点力のないサンフレッチェにとってこの失点によりすでに勝ちについては難しくなってしまったものの、せめて引き分けに持ち込んでいきたかった。
 するとペナルティエリア内パトリックに1本のボールが入る。胸トラップで落とすとそこにアンデルソン・ロペス。決まった、と思ったシュートはGKに弾かれてしまった。
 ああ。決まったかと思った。あれを決めなかったらいつ決めるんだよ。全てが全て完璧な形だったのに最期の最期が決まらない。結局勝てないってそういうことなんだろう。
 それを如実に表したのがその後の失点だった。サイドからグラウンダークロスを入れられるとゴール脇で競りながらも中に入れられゴール前どフリーでシュートを打たれ決められる。2失点目。もうこれで決まった。勝ちは100パーセントなくなったと諦めざるを得なかった。
 それでも何かを残したい。せめて1点取りたい。丹羽と交代いて入った茶島がミドルシュートをバーに当てた。パトリックも遠目からシュートを打った。柏もドリブルで何度も仕掛けた。だがどれもゴールという成果につながらない。あれだけ走ってるのに、あれだけハードワークしてるのにどうしてここまで結果が伴わないんだろうという理不尽さを感じる。
 だが後になって考えてみるとサンフレッチェの選手はここぞという場面でゴール前に誰もいないのである。チームとして攻めてる時は人数はいるものの敵の人数も揃っている。そしてそんな密集を打ち砕く突破力は持ち合わせてない。だから攻めてる割にはペナルティエリアには入ってないのである。
 攻めてるような気分にさせられて結果的には負けている。いい試合をしてたと思わせて負けてしまう。前線には屈強なストライカーのパトリックが入った。ディフェンスにも丹羽や椋原が入った。それでも負けてしまう。果たしてこれ以上打つ手はあるのだろうか。放心状態はしばらく解けず、盛り上がる鹿島のスタンドの声援が聴覚に鳴り響いてくるのだった。

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