鳥栖戦~困難な勝利

2016/09/17 サガン鳥栖vsサンフレッチェ広島 ベストアメニティスタジアム

 残り6試合。ああ、もうそれだけしか残ってないのか。勝って、勝ってこれで連勝していくと思った途端にするすると勝ち星を落としていき、いつしか優勝争いには厳しいポジションになってしまった。もう今年は駄目だろう、正直なとこそんな諦観もあるのだった。

 台風が近づいてることもあり大粒の雨。必然的に選手の顔には水滴が滴り落ちてくる。だがそんなコンディションもモノともせずサンフレッチェは攻める、攻める、攻める。相手のプレッシャーも巧みなパスで切り抜ける。そして再び攻撃へと転じるのだが入らない。シュートが入らない。攻めても攻めても点が入らないのだった。

 ウタカが抜ける、オフサイド。茶島が反転してシュート、枠の外。CKから千葉のヘッド、ブロックされセカンドボールがウタカに入るもこれも決めきれないのだった。入らない、入らない。ああ、どうしてこうもシュートが入らないのだろう。

 この展開、たった1週間前に観たような気がする。そう、前節がそうだった。チャンスを生かしきれずワンチャンスにやられる。そんな悪夢が蘇るのだった。

 そして相手のCKがあるとそれだけで緊張感が走る。もしかしてこの一発でやられるんじゃないだろうか。もはやCKの守備に関してはちっともアテにしてない。だが事なきを得るとやはりそう何試合も続けて同じパターンで失点することはないようだった。

 それでもやはり点が入らない。鳥栖の守備が堅いのか。それともサンフレッチェの攻撃尽に最後の精度が足りないのか。そう考えると確かにウタカはGKをかわしながらもシュートを打つ前にすっ転んでしまった。そして茶島も変わらずシュートが入らない。ああ、これでは点が取れない。相手のペナルティエリアの外をグルグル回している時、活路を見いだせなかった。

 ゴールからは遠い位置で塩谷が受ける。中央へ縦パスかと思われたがそのまま脚を振り抜いた。え、と意表を突かれたがそのボールは光を帯びた矢のように飛ぶとゴールネットに突き刺さった。

「うおおおおおおおおっ!」

 立ち上がった。雄叫びを上げた。信じられない。全員がブロックを敷いてる鳥栖の守備においてまさにあそこしかない箇所を突いたのだった。

 先制、とりあえずは有利になった。でもこれではちっとも安心はできない。そしてFKからヘディングで決められてしまった。ああ、何やってんだよと嘆いたものの判定はオフサイド。助かった。鳥栖の選手は抗議してるがそれほど際どい判定だった。

 だがその後、茶島のワンタッチから裏へ出たボールはウタカのオフサイドと思いきや笛が鳴らない。キヌ・ミヌと競りながらもゴールに突き進んだウタカ、GKをもするっと抜けるシュートがゴールに入ったのだった。

 2点目。ゴールも認められた。再び抗議する鳥栖の選手。確かにこれも際どい判定だった。だがその後、ペナルティエリアに入った茶島は切り返し、そしてシュート。これが弧を描いてファーサイドに突き刺さり3点目を得たことでもう勝利は確定的とも言えた。願わくばこの後、あと何点取れるかだった。

 が、ここから猛攻が始まったのは鳥栖の方だった。まるで全選手上がってるのではというくらいに迫力がありCKに逃れるのがやっとだった。するとこのCKでまたしても決められた。当たり損ねのように見えたことで事故のようにも感じ、まあ1点くらいはしょうがないだろうと余裕を持つと今度は3人くらいのマークをかいくぐりキヌ・ミヌに決められるともう尋常ではなくなった。もうそれは危機感で一杯なのだった。

 やばい、やばい、やばい。まさかこのまま追いつかれるんじゃないだろうか。鳥栖のスタジアムは異様な盛り上がりを見せていよいよ怪しくなる。クリアしても拾われカウンターを仕掛けようとするとカットされて逆に逆襲を受け、ゴールキックで難を逃れたと思ったら林はラインの外へキックしてしまう。もはやずっと水の中で息ができないような状態なのだった。

 ウタカとの交代で入った皆川。この日は異常にボールが収まらない。茶島と代わった浩司も存在感が薄くミキッチと代わった清水もボールを取られるシーンが目立ち交代選手が何の助けにもなってないのだった。

 終われ、終われ、終われ。なんともどかしい時計の進み。相手GKまでもが入ったCKにはまたやられるかも、という切迫感があった。それでもそのピンチを脱してもそのまま攻撃に移れない。そういう意味でもやはり勢いは鳥栖の方が強いのだった。

 長い長いアディショナルタイム。無事、それをやり過ごすとホッと胸をなで下ろすのだった。それと共に地響きのようなブーイングがスタジアムにこだまするのだった。

 判定も含めて今日は運も見方しただろう。でも3点も取って安心できないとはやはり守備に問題がある。塩谷のスーパーゴール、ウタカの個人技、茶島の強引なまでのゴール。それら素晴らしきゴールがあって勝ったのに素直に喜ぶことはできなかった。

 ほんの1つボタンの掛け違いで結果が変わったかもしれない。やっぱり勝つっていうのは本当に困難なことなんだというのを思い知らされたのだった。

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