FC東京戦~完全なる敗北

2018/04/25 FC東京 vs サンフレッチェ広島 味の素スタジアム

 雨上がりの夜。空気が澄んで軽い肌寒さを与える空間に舞い降りた照明の光は何度も通ったスタジアムをどことなく違った雰囲気を与えるのだった。
 首位決戦。城福監督にとっては古巣のチームとの対戦。本来なら盛り上がる要素はあるものの、日程の影響で客の集まりにくかったのはしょうがなかった。それでもそれなりに人が集まってるのはやはりアクセスの影響だろうか。
 止んだと思ってた雨は再びしとしとと降ってくるようになった。そんな中で始まった試合だった。
 開始5分。ペナルティエリアに侵入してきたディエゴ・オリベイラ。懸命に止めようとした佐々木が切り返しに引っ掛かけてしまった。
 PK。ああ、佐々木またやってしまった。
 アグレッシブな守備が持ち味だが今シーズンこれで3回目である。あまりにも多い。さすがにこのPKはディエゴも決めてしまったがあまりにも早い失点がPKというのはあまりにも痛すぎるのだった。
 更にこの後、先発出場を果たした川辺が中盤の底でのワンタッチパスをカットされカウンター。またしてもペナルティエリアに入ったディエゴ。溜めて溜めて溜めて横パスをするとスピードに乗った永井に豪快に決められてしまった。おお、川辺、せめてミスパスの後永井を捕まえることくらいできなかったのだろうか。
 よもや前半の内にこんなに簡単に2点差をつけられるとは思わなかった。でも試合を続けていればこんなこともある。後半に攻勢をかけようと前掛かりになると今度は高萩が見事なスルーパスを披露。ドリブルで突き進むディエゴ。追いかける野上は追いつけずゴールのポストに当てて入れられてしまった。その決定力、スピード、テクニックはサンフレッチェの守備の一枚も二枚も上をいってたのだった。
 3−0。もはやこれで勝負あったような気がした。サンフレッチェの攻撃は全て読まれてるような気がする。ボールを受けた選手が次の手を考えて少しでも立ち止まるとすぐに背後からボールをかっ攫ってしまう。その素早い寄せにまるで太刀打ちできないかのようだった。
 この状況に活路を見いだそうと吉野を下げ稲垣を投入する。レギュラーを狙ってる吉野にしてみれば失意の交代である。ところがその交代後にゴール前パトリックがシュート。GKに弾かれるももう一度シュート。更にブロックされるとそのセカンドボールを押し込んだ。1点返したのだ。そして決めたのは稲垣なのだった。
 2点差。まだまだ遠いとはいえこれで勢いが増しいよいよ攻勢を強める。フェリペが交代で入ると前線で巧みにフェイントでかわして相手の虚を突く。和田も上がりクロスを上げる。中央からも狭いスペースを狙ってペナルティエリアに潜り込もうとする。が、入らない。あまりにも多すぎるゴール前の人数に皆弾き飛ばされてしまうのだった。
 押してる、押してる、押してる。でも入らない、決められない、決まらない。どこをどうやったら決められるのかわからない。そういえば昨シーズンはこういう展開で一向に点が取れずに苦労した。先制されるとそのまま亀のように閉じこもって守られた。そしてそうされることによって本当に点が取れないのでどのチームもみんな真似するようになってしまったのだった。これはまずい。このままノーゴールで終わるとやっぱりこうやってゴール前を固めた状態にされるとこじ開けることができないとまた今シーズンもその戦法をやられそうである。
 入らない、入らない、入らない。和田のクロスもGKにキャッチされてしまう。攻め手はいるものの段々精度が落ちて余計ゴールが遠ざかってるようなのだった。そしてほぼ全員が前に比重を高めて攻撃したにも関わらずゴールが奪えなかった。パトリックのフィジカルでも打開できなかった。セットプレーでも決めきることができなかった。パスの連携もゴールに至るまでは崩せなかった。負けた。いいようにやられた。完敗であった。
 開始早々のPKがなければ。追加点をあげてなければ。ディエゴを押さえる守備ができていれば。もっと早い時間にゴールを決めることができていれば。色んなことが後悔となってたらればの仮定を反芻してしまうのだった。
 してやったりという様子のFC東京。1位2位の直接対決は見事に2位のチームが勝利したのだった。
 フル出場させてしまったパトリック。スタメンを目指す吉野と川辺の起用によっての敗戦。佐々木のPKを与えてしまう守備。マイナス要素ばかりが目についてしまう。確かにまだ勝ち点では6ポイントも差がある。けれどもたった1回の敗戦がまるでこの世の終わりのごとく感じるのは今シーズン初めてリーグ戦で負けたからである。ただ問題はこの次である。さすがに連敗をすると厳しい。そして修正すべき課題も多く突きつけられた。果たしてこの試練を乗り越えることができるか。それができた時、また違った風景が見えるような気がするのだった。

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