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神戸戦~素晴らしき勝利

2017/11/18 ヴィッセル神戸vsサンフレッチェ広島 神戸ユニバー記念競技場

 2週間の中断期間の後のリーグ戦。無得点による3連敗の中、その中断はありがたかったもののいっそこのまま再開してほしくないと思ってた。それほどまでにサンフレッチェに勝つイメージというのが浮かんでこないのだった。
 残り3試合。勝ち点1差での降格圏順位。つまりもう絶対に勝たないといけない。そしてそういう試合で負け続けてしまった。その結果がこの順位なのである。それもこれも全ては点が取れないことに起因していたのだった。
 3試合連続無得点。その打開策としてアンデルソン・ロペスをトップに据えてきた。そして右SBに椋原。トップ下の柴崎は久々の出場となった。この組み合わせは新しい試みではあった。
 ところがこれが意外にも機能する。ロペスは無理のあるパスでも足下に納めるし柴崎はそんなロペスと有機的なポジション取りからゴールに迫る。そして椋原は最後列からオーバーラップを見せクロスを上げる。そこは丹羽に比べてキックの精度は高かくゴールへの匂いを感じさせるものがあった。
 ところがゴール前で連携を見せても最期が決まらない。ボランチの稲垣が駆け上がって真正面からシュートを放ったものの、それはゴールの枠はるか上を越えていった。ああ、そういえば稲垣って積極的にミドルシュート打つ割には入った例がないんだった。
 そんな折、相手の攻撃を中盤で奪うと小気味いいパスワークが繰り広げられる。左SBの高橋が上がるとその軌道に出てまた折り返す。そしてまた前線へ走った高橋へ出るとクロスを上げる。ペナルティライン中央に向かって放物線を描いたボールに飛び込んだ。ヘディングはジャストミートしゴールにガツンと突き刺さったのだった。
 美しい、華麗、魅惑的。2人、3人と絡んで守備を崩したこのゴール、まさにサンフレッチェならではのゴールだった。そしてそのヘディングを叩き込んだのは意外にも稲垣なのだった。確かにあの選手の運動量がないと演出できないゴールではあったが、さっきまでシュートが入らないと散々こき下ろしてことに申し訳なさを感じつつも喜びを爆発させるのだった。単なる先制点というだけでなく広島ならではのゴールというのが素晴らしかった。
 ゴールの後も勢いを殺すことなく前へとなだれ込むように攻撃のパスが繰り広げられる。そしてここで追加点と取っていれば楽になるのだがそういう時に限って逆襲を受けてしまう。そしてサイドから隙間を縫うようなパスが出るとペナルティエリアに入った渡邉千真に決められる。止めに入った椋原はがっしりとガードされ全くの無力化されてしまった。数人絡んで奪ったゴールの後で個人の力でゴールを奪われた。果たしてそれはサンフレッチェの守備が弱いのか、本来のFWがそうあるべきなのか。シュートの入らないサンフレッチェにしてみれば、それは羨望でもあるのだった。
 その後サイドからのクロスに裏に抜け出されてハーフナーにシュートを打たれる。が、ふかしてくれて助かった。そして逆サイドからもクロスが入り小川のシュート。これもポストに当たり難を逃れた。ホーッと胸をなで下ろすも守備の隙を感じざるをえなかった。
 そんな時、ヨンソン監督はパトリックを投入した。柴崎との交代で前線でのターゲットを増やすということは勝つというメッセージだった。そしてそれに呼応するように椋原のオーバーラップからのクロス。GKを通り越した先に待ちかまえていたのはパトリック。頭に当てると逆サイドのゴールに流し込んだ。
 ゴール。入った、入った、入った。勝ち越しゴール。残り時間をからいってもかんり有利になる得点。パトリック、パトリック、パトリックーッ!
 勝利へ向けて、そして残留に向けての大きな足掛かりとなる得点にパトリック本人も激高する。ここ5試合ゴールのなかったこともあり、溜まっていたものを吐き出すかのようだった。
 そして後は時間の経過を待つだけ。ただ神戸も追いつくべく前に重心を傾けてきた。バイタルエリアから細かいパスをつなぎドリブルでえぐってくる。ルーカス・ポドルスキーに入ると相対した椋原などは吹き飛ばされてしまいシュート体制に入られてしまう。それでもGK林の懸命なセーブによりゴールを許さない。DFも身体を張ってる。CKにFKといったピンチが続く。息をもつけない。途切れない攻撃。だがそんな防戦一方な中で茶島がボールをカットした。
 縦へ失踪するドリブル。茶島のスピードは瞬く間にゴール前までたどり着きパトリックへ。が、ここで何らかの躊躇が生まれたか、折り返してしまうと相手にボールが渡ってしまったのだった。せっかくゴールを決めたというのにここ最近シュートを決め切れてないというマイナスイメージは払拭できてなかったのだろうか。
 そしてシュートが入らないという意味ではもっと深刻な皆川がロペスに代わって投入される。だが、こういう状況になるとむしろ心強い。相手の攻撃を跳ね返す、イーブンなボールを収める、身体を張って時間を稼ぐということにかけてはこれほどうってつけの選手はいないのだった。
 ゴール前に人数を掛け跳ね返して跳ね返した時、終了のホイッスルが鳴った。勝った、勝てた。ベンチお含めた全ての選手、スタッフ、そしてアウェイ席に大挙して押し寄せたサンフレッチェ・サポーターは喜びを爆発させたのだった。これで順位の上では降格圏を脱出できた。あとは2試合勝てば残留決定なのである。
 サンフレッチェの良さもウィークポイントも顕著に現れた試合だった。それでもこの土壇場で補強をした選手が結果を出したというのが大きい。まだまだこのチームは延び代がある。やはり生き延びないといけない。どんな形であろうと残留をしていきたい。それを強く思わせた勝利だった。

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