天皇杯マリノス戦~敗戦から見えたもの

2017/09/20 天皇杯4回戦 横浜Fマリノスvsサンフレッチェ広島 ニッパツ三ツ沢競技場

 リーグ戦から8人替えたサンフレッチェ。皆川と工藤の2トップというのは新しい試みであると共に試合に出てない2人にとっても格好のアピールの場であるのだった。

 ところが立ち上がりはマリノスの方が優勢だった。ちっともボールに触れない。DFへのバックパスを追いかけるも追いつけない。が、それが運良くコーナーキックとなったのだった。

 蹴るのはフェリペ・シウバ。ゴール前へ向かったボールは野上が当てるもポスト。ああ、と頭を抱えそうになるもいち早く反応したのは皆川だった。ボレーでゴールに叩き込んでしまったのだった。

 あの点の取れない皆川が決めた。そんな意外性から唖然としてるのも束の間、今度はフェリペが決めた。カズからのパスを受けて反転、ミドルシュート。素晴らしい弾道でその技術の高さが伺える。一体、どうしてこんなシュートを打てるのに今まで活躍できなかったんだろう。

 そんな疑問は他の選手にも見受けられた。稲垣は豊富な運動量とプレスで危険の芽を摘み、茶島は鋭いドリブルで相手の守備ラインに混乱を与え、高橋は最前線までオーバーラップしてクロスを上げる。各自が自分の持ち味を生かしてる様にやっとヤン・ヨンソン監督のサッカーがチームに浸透してきたのではと胸躍るのだった。

 そんな気分の良さから皆川が絶好のシュートチャンスで決めきれなかったことにもまだ笑ってられた。工藤が全くシュートが打てないことにも目をつむることができた。ところがDFからのつなぎがすぐに相手ボールになってしまうようになるとさすがに危機感を抱くようになってしまったのだった。

 後半になって明らかにマリノスの方が出足が速い。そして前への比重を高めている。防戦一方のサンフレッチェ。サイドからの進入をくい止めようとペナルティエリア内で立ちはだかった水本にウーゴはクロスをぶち当てた。

 ピーッ!

 主審の笛が響きわたる。何と、これをハンドとしてPKを宣告してしまった。どこをどう見えて手には当たってない。わき腹に当たったとする水本の主張を全く意に介さない。信じられない。あれがハンド。一体この審判はどこを見ていたんだろう。

 するとこのPKをウーゴはあっさりと決めて1点差とされてしまった。でもまだ勝っている。これ以上失点をしなければいい。ところがトップの皆川はちっとも競り合いで勝てなくなってしまった。その為マイボールにできない。ついには足をつってしまい青山に交代してしまう。もはやこれは逃げ切りの体制に入ったのだろう。

 ところが交代してもマリノスの勢いを止めることができずあれよあれよと言う間にペナルティエリアに進入させてしまう。ゴール前にいるサンフレッチェの選手はことごとくクリアすらできない。かわされ、かわされ、かわされると最期はゴール前のウーゴ、同点弾を決めたのだった。ああ、あともうちょっとだったのに。2点差を終了間近に追いつかれる。このひ弱さは本当に昔からずっと変わらないのだった。

 延長戦。それはもうサンフレッチェに勝ち目のない話だった。フェリペも交代し前線にはロペスと工藤。そしてこういうせっぱ詰まった場面で絶対に決めないのがロペスなのだ。更に工藤はというとチャンスというチャンスをことごとく潰していた。

 柏からのクロス。工藤のヘディングは枠に入らない。中盤からのラストパスも決めれない。裏へのスルーパスも打てずに終わってしまう。そう、サンフレッチェにはもはやシュートを決めれる選手がいないのだった。

 そうこう言ってる内にGKからのパントキックが前線のウーゴに渡りサイドに流れる。守備の戻りが遅い。だがまだゴールには距離もあるし角度もない。それなのに打った。するととんでもない軌道で変化を遂げゴールに吸い込まれてしまったのだった。

 終わった。残り時間1分。喜ぶマリノスの選手を尻目に茫然自失とする。勝利を目前として最期の最期で追いつかれ結局は逆転される。あまりにも惨めな敗戦だった。

 足をつった選手がピッチに座る。両者を比べてみて明らかにサンフレッチェの方が足をつった選手が多かった。それだけ戦ったということだろう。でもそれだけ戦ったのに勝つことができなかった。結局のところ決めるべきところで決められなかったのが大きかった。そしてマリノスはウーゴ一人で3点も決めた。結局はFWの差であるのは明白だった。

 それでもゴールを決めた皆川、フェリペ。枠にさえ飛ばせなかった工藤。他にもこの試合は今後の棲み分けとして大きな分岐点となりそうだった。敗戦はいつだって痛い。でも個々の選手にとってその重さは大きな違いとなっていそうなのだった。

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