マリノス戦~明日につながる勝ち点1

2017/07/07 横浜Fマリノスvsサンフレッチェ広島 日産スタジアム

「森保監督退任」
 そのアナウンスはショッキングであると共にある程度の予想はついていた。J2降格圏内。その中での4連敗。何かを変えないといけないのは明白だった。
 この成績不振は監督だけのせいではないだろう。補強選手が軒並み外れ特に前線では点を取る選手がなく、消去法で皆川が選ばれてるという状態。大型FWであるにも関わらずシュートが苦手でヘディングも下手ときてるのだから点が入らないのも無理もないのだった。
 ところがコーチから昇格した横内監督はやはり皆川をトップに選んできた。そして森島をシャドーに入れて柴崎をボランチに下げた以外はほとんどいつもと変わらないメンバーだった。やっぱりそんな変化は起こらないかと思っていたがよく観るとGKは中林、右サイドは高橋が入っているのだった。
 観客席からは選手なんて豆粒のようにしか見えない日産スタジアムには放水作業が行われる。これってどこでもやってるのだが、ボールが転がりやすいという特徴を勘案すればパスサッカーのサンフレッチェの方が有利のような気がしたのだった。
 ところがマリノスは残留争いのサンフレッチェに負けることなぞ微塵も考えてないはずである。それでも監督解任の劇薬を受けたせいか、サンフレッチェは落ち着いた球回しから相手の出方を伺っていたのだった。
 回して回して中央に入れると戻して。
 それは攻めているようでちっとも攻めてないとも言えるが同時に相手に好きなようにもさせてなかった。つまりは一進一退、動く様子のないスコアは普通のゲームになってるだけマシなのかもしれないのだった。
 相手にボールを奪われても最後の最後で身体を張る。ボール奪取からつなげていく。そこで相手にボールの取り所を与えずに前に当てていくのが攻撃の常道といったとこか。ただ、生憎今はトップにいるのが皆川。あそこに当てても何も生まれないのだった。
 それでもたまに魅せるのが全身を使ったボールキープにより味方の上がりをつくった。おお、これはよく収めたという感嘆をあげたもののそれがゴールにつながらない。柏が左サイドからクロスを上げても中で合わせられない。CKを蹴っても駄目である。そう、皆川はヘディングもシュートも下手なのだった。
 攻めても攻めても点が入らない。でも流れはサンフレッチェにある。このまま攻め続けるとどこかの拍子で決めることはできるのではないだろうか。
 森島が絶妙のタイミングで打った。が、GK正面。ルーズボールをロペスが放つ。それもGK正面。青山がバイタルエリアに入れたボールはシュートすら打てない。ああ、決まらない。そして柏が放ったクロスに皆川は当てることすらできずにGKにチャッチされてしまった。
 そこからマリノスの攻撃が始まる。右サイドで受けた斎藤学がドリブルを始める。そのドリブルに追いつけない高橋。その為前にぽっかりとスペースができスルーパス。入ってきた前田は追走する柏の守備などまるで気に掛けないかのように簡単に決めてしまった。決められてしまった。80分という最悪な時間に失点してしまったのだった。
 ガクッとうなだれたくなるも応援席のチャントは声量を落とさない。いや、むしろ一層音量を高めていったような気がする。皆まだ信じてる。このまま終わらないということを。
 ところがこの後の交代が工藤とフェリペだった。点を取るべく交代がこれなのかよとまるで期待感がなかったもののかといって他にいないのも事実なのだった。
 終了への時間は刻一刻と迫っている。ロペスが中盤を斜めにドリブルする。足を引っかけられ倒れるもフェリペがボールを縦に送る。
 柏が走り込む。
 クロス。
 が、DFに当たり跳ね返ると起きあがったロペスの元へ。
 ボレーシュート!
 ゴールまで一直線。文句の言いようもない真っ直ぐの弾道でゴールネットに突き刺さったのだった。
「どわあああああっ!」
 一斉に立ち上がるアウェイゴール裏。
 それぞれが溜まってた鬱憤を吐き出すかのように雄叫びを上げる。そしてロペスコール。追いついた。追いついた、追いついた、追いついた。
 まだ逆転のチャンスはある。こうなると欲が出てきたものの、さすがにこの少ない残り時間では再びゴールを決めることはできなかった。それでも勝ち点1、引き分けによる勝ち点を得ることができたのだった。
「とりあえずはアウェイで勝ち点1上げたんだからよかったですね」
 仲間がそう呟く。
 ところが忘れてはいけない。今シーズンのサンフレッチェはホームで勝ててないのだ。
 森保監督の退任。それはショッキングだったもののショック療法となってくれればいい。そしてその足がかりとしてこの勝ち点1が踏み台となってくれることを願うのだった。

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