FC東京戦~ストライカーの欠如

2017/04/30 FC東京vsサンフレッチェ広島 味の素スタジアム

 ゴールデンウィーク。

 この響きは特別な高揚感をもたらす。連休、新学期の後、そして何より気候として温暖で一番過ごしやすい時期というのが大きい。そんな中でのアウェイゲームは本来であればまたとない楽しみだった。それがややもすると苦行であるかもしれないのだった。

 それもそのはず、今シーズンのサンフレッチェは絶不調。新戦力として獲得した選手はことごとく外れ、未だに選手の構成に悩んでる感がある。その為、スタメンの発表を見ないと誰が出るのか分からないのだった。

 そんな浮かない気分のまま訪れた味の素スタジアム、アウェイのスタンドには予想外に人がいた。それどころか空席が次々に埋まっていく様子に一刻も早く仲間を見つけなければと探すもどこにいるのか分からない。さすがにそれだけ人がいると無理があったものの、お互い通信という文明の機器により合流することができたのだった。

「いやあ、勝てませんねえ」とドクトル。

 フェリペは外れだったとか工藤がGKとの1対1を決めないと言った話をしていると段々と悪口大会へとなっていく。ああ、この光景。2002年の降格争いをしてた頃と一緒だ。点が取れない。それなのに簡単に失点してしまう。せめて今日は開始10分は踏ん張って欲しい。そんな極めて消極的な願望しか出てこないのだった。

 強い日差しによりスタンド屋根の陰の境目がくっきりと見えるピッチで試合は始まった。堪えろ、堪えろよと最初から失点への警戒ばかりをする。それでも攻められる。ペナルティエリアに入られる。シュートを打たれる。だがそれらは精度のなさに助けられた。いや、もしかして今日は運がいいのかもしれない。

 それでも高萩洋次郎のスルーパスで崩された時には肝を冷やされた。敵として観てみるとやっぱり上手い選手なんだと感じる。高萩がいたお陰で優勝することができた。それに引き替え今のサンフレッチェには高萩のポジションだったシャドーの人選に苦慮しているのだった。

 柴崎を軸としてアンデルソン・ロペスが出るがこの選手、キープ力がありいいとこまでは行くがどうにもシュートが下手くそだ。一度自ら持ち込んでゴール前まで進出したものの結局摘み取られてしまったようにあと一歩が足りないという非常にもどかしいとこがあるのだった。

 そんななかなか攻撃に進めない状況においてサイドからクロスが上がる。だがこれが決まらないどころか枠にさえ入らない。せっかくサイドで持ち上がったとしても中で合わせる人がいないと何の意味もないのだった。少なくともワントップの工藤はクロスのターゲットとして物足りなさがあった。

 それでもDFを背負った工藤は反転、ゴール前に出た。ワッと盛り上がるアウェイゴール裏。だがこれをGKにぶち当てた。ああ、工藤ってGKとの1対1苦手なんだよな。そんなストライカーとしての致命的な欠点をまざまざと見せつけられたのだった。

 そんな最後の一手が詰めれずもどかしさを感じてる中、相手のCKとなってしまう。それでも何度かあったセットプレーを防いでたことからそれほど不安を感じずに観てたら決められてしまった。しかもゴール前で頭に当てたのはサンフレッチェの選手である。だがよりによってそれを後ろに逸らしてバックヘッドになってしまった。するとそれがFC東京の選手への絶好のパスとなってしまい簡単にゴールに決められてしまった。ああ、どうしてヘディングをあんな方向へやってしまうんだろう。ウワーっと盛り上がるFC東京の応援を後目にため息が漏れるのだった。

 それでもサンフレッチェの応援席は気落ちするどころか一層声を張り上げていく。自分たちにできるのは応援でチームを盛り立てていくこと。そんなみんなの気概がサンフレッチェを余計に前に突き動かす。右サイドにミキッチが入り左右のサイドから崩していく。特に左の柏はドリブルで相手を抜いていく。抜いて抜いてクロス、パス、そしてシュート。多彩なバリエーションからゴールへの予感をたぐり寄せる。が、決まらない。シュートが入らない。枠に入れても東京のGK林にことごとくセーブされる。入らない。入らない、入らない、入らない。

 あと5分あれば、あと10分あれば、あと15分あれば。時間が進むに比例してもっと時間が欲しくなる。それほどまでに攻め立てている。いつかは入りそう。それでいて入らない。これこそが今シーズンのサンフレッチェである。どこをどうやっても点が入らない。そして空しく終了のホイッスルが鳴ってしまったのだった。

 また負けた。また点が取れなかった。そんな落胆があるものの皆選手を拍手で讃えてた。結果が出ないでもこの温かさ、サンフレッチェサポーターは素晴らしい。でも結果が欲しい、結果が欲しい。

「点が取れないねえ」

 ドクトルがつぶやいたがその理由は明白だった。

 点が取れない。点を取る選手がいない。これはまさにストライカーの問題だった。工藤、ロペス、2人とも絶望的に得点力がない。唯一前線でシュートが上手いのが柴崎だがそもそもがゲームをつくる方の選手。交代で入った皆川に至ってはもう来シーズンはプロの道を諦めた方がいのではというレベルである。

 ストライカー、ストライカー。そう呼べる選手がたった一人いないだけでサッカーとはここまで苦戦するんだと思い知らされたのだった。

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