甲府戦~勝利の陶酔感

2017/05/20 ヴァンフォーレ甲府vsサンフレッチェ広島 山梨中銀スタジアム

 何かを変えなくては。
 そう考えるのは当然のこと。今シーズン、未だに1勝しかしてないというのは問題だ。そしてその解決策として真ん中の前と後ろを替えた。それにより、ついに工藤は見切りを付けられたという気がした。
 前線で張ってても何のインパクトも残せない工藤。我慢して使い続けてきたがここで皆川が起用された。といってもこれは消去法でしかなかった。今シーズンまだゴールのない皆川であるが他にいないのだからしょうがないことだった。
 そしてCB。ここについても失点の多さを考えれば致し方ない。しかも最近の千葉はフィードや組立においてもどことなく行き詰まってしまってるように見えた。そして野上自身のプレーも悪くないのでここは順当な交代とも言えた。
 そんな布陣を敷いたサンフレッチェだが、照り返す日光の中、最初こそ落ち着いてボール回しをしてるような気がした。が、甲府がカウンターで息を吹き返すと前掛かりに畳みかけてきた。そしてサイドからクロス。足を伸ばしてクリア。するとちょうどそれが真ん中に転がっていくと狙い澄ましたミドルシュート。低い弾道のボールは水本に当たることによって軌道が変わるとそのままゴールに入ってしまった。
 失点。ああ、また失点した。クリアしてもクリアしても相手ボールになってしまい最後は相手にフリーで打てるようなセカンドボールあ行ってしまう。攻められすぎ。だから結局こういう結末に至るのだ。
 げんなりとしてしまう。どうせこのまま点が取れずに終わってしまうのだろう。そんな諦念感が思考を支配した。そして攻撃の形になるとどことなくズレてるパスが命取りとなるカウンターを受ける様にその想いは強くなるのだった。
 だがそんな中にでもロペスが強力なミドルシュートを打つ。後ろからの青山のクロスを皆川がヘディング。どちらも可能性を感じさせながらもバーに当たったりGKに阻まれたりした。が、そんな時皆川に入った。
 ターンする皆川。振り向きざまシュート、と思いきやスルーパス。そこに出てきたロペス。中へ折り返す。マークを外した柴崎がまさに当てるだけで入った。入ったのである。ゴール、ゴールだった。
「うおおおおお!」
 雄叫びをあげてしまった。ワントップ、ツーシャドウの3人の連携。各自がそれぞれ自分の役割をこなしゴールにつながった。3人はこのゴールの祝福として抱き合っていた。
 振り出しに戻し後半CK。ちっとも入らないサンフレッチェのセットプレー。すると柴崎のキックはニアサイド野上の頭上を越えたとこでワンバウンドし蹴り損ねのように見えた。が、逆にそのボールの軌道が甲府の選手の脚を止めてしまいゴール前で水本が頭で押し込んだのだった。
 逆転。しかもゴールを決めた水本は失点の借りを自分で返したのだった。
 それでもまだ安心はできない。サンフレッチェの守備の弱さは想像を絶するものがある。もはや前線に皆川一人を残して全員で引いて守る。だが今シーズン、人数を掛けて守っても守りきれない。かといって攻めていけばカウンターを食らってしまう。
 跳ね返す。皆川が前で収める。そこから展開しようにも自由にはさせてもらえない。が、ファールを貰う。これが助かった。労せずしてポジションを修正することができるのである。
 他にもロペスがボールキープにより時間をつくることによって全体を押し上げることができた。どうにも今まで良い印象のない2人が効いていたのである。
 そしてミキッチの突破から皆川シュート。これで追加点と思っていたらラインを割ってたという判定でノーゴールになってしまった。取らせてやりたかった。ここまで奮闘してくれたのならゴールという結果を残させてやりたかった。でも結局脚をつってしまい交代を余儀なくされたのだった。
 あとは時間を稼ぐだけ。それなのによりによって最後の最後にCKを与えてしまう。しのげ、しのいでくれ。そんな願いを込めて声援が一層大きくなる。
 キックが入る。ファーサイド。密集の中をシュート。
 うわっ、目を覆いたくなった。が、それを枠を捉えることができずコロコロと後ろに転がっていったのだった。
 と同時に試合終了。勝った、勝てたのである。もはや明白に残留を目標に掲げるようになったサンフレッチェはまずはその足掛かりとなる1勝を手にすることができた。チームが勝てない、そんな状況にありながらもアウェイゴール裏はぎっしり詰まっていた。
 この余韻に酔いたい。そしてもっとこの陶酔感を味わいたい。その為にもまた次なる試合での勝利を願うのだった。

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