ガンバ戦~Jリーグ再開

2018年7月18日 サンフレッチェ広島vsガンバ大阪 エディオンスタジアム広島

 ワールドカップ、夢の祭典。日本代表も奮闘し本当に楽しめた大会だった。それもそのはず、気負うことなく観れるからである。どこが勝とうと単純にそのプレーを堪能すればよかった。だがサンフレッチェの試合となれば違う。勝たなければならない。その切迫感はとても単純に楽しむことなどできないのだった。
 そのワールドカップによって中断したJリーグであるが、再開最初の試合である。首位で折り返してるもののリセットされたも同然である。それにより低迷してるチームが浮上するかもしれないしその逆だってあるかもしれないのだった。
 むわっと蒸し返す空気の中で選手はピッチに現れた。キックオフ前には両チーム円陣を組み黙とうを捧げられた。ほんの1週間前広島を中心に起こった豪雨災害の被災者への追悼。スタンドも話声すら止み静粛が訪れる。暑い空気がまとわりつく。異常な暑さが続く。もしかしたらあの豪雨もこの気温の影響なのであろうか。
 黙とうが終わり再びスタンドから声援が飛び交う。そしてゆったりとした立ち上がり。いやこれはスタミナを考慮したせいだろうか。それとも単にワールドカップで世界の選手の速いプレーに見慣れたからだろうか。
 とはいえルーズボールはお互い譲らない。青山がスライディングで収めようとするとガンバはファビオが滑り込む。するとその勢いが強く青山に激突してしまった。
 ピーッ!
 レフリーが笛を響かせながら走ってくると手にはカードが握られていた。そしてファビオに突き出したそのカードの色は赤だったのである。
 おおお。早くも数的有利である。しかもこの気温。人数の差は大きなハンデとなるのだった。
 ここで一気にたたみ掛けてやれ。そんな意気込みをかけたものの丁寧に丁寧につないでいく。ガンバも無理に奪いに来ない。ブロックを敷かれた守備に遅攻を繰り返す。パスで崩そうとするも崩れない。この展開、人数の少ないガンバにしてみればカウンターの狙いどころでもあった。
 その証拠に右サイドの裏にはスペースがあった。守りながらもDFが高い位置を取ろうとしている。そこに気づいたのか、柏が右サイドの裏のスペースにフリック。走りこんだ和田がクロス。中央に放り込まれたボール目掛けてパトリックが飛び上がる。
 ドン!
 そんな音が聞こえてきそうな豪快なヘディングがゴールに突き刺さったのだった。
 先制。まずはリードすることができた。とはいえガンバの攻撃力は侮ることができない。追加点を入れないとまだまだ安心はできないのだった。
 一人少ないガンバは個での突破でゴールに迫ってくる。攻撃への脅威はやはりある。対するサンフレッチェはせっかく奪っても速い攻撃をしないせいで数的有利さをあまり感じない。ガンバの守備ブロックの周辺を延々とボールを回しているのである。青山がフリーでボールを受けた時、遠目から打ってきた。が、それはシュートではなくゴール前へ上げたクロスだった。
飛び込んだパトリック。またしても頭にガツンと当ててゴールに叩き込んだのだった。
2点目。これで大分有利になった。でも2点差はまだ当てにならない。現に日本代表はワールドカップで2点差をひっくり返されて負けてしまった。特にハーフタイムを挟むとチームが激変する場合がある。そんな流れを変えない為にも後半もギアを緩めずにマイボールの時間をつくるのだった。
プレスに来たガンバの選手。それを青山は柏とのコンビネーションで切り抜けると柏がカットインからドリブル。パトリックを狙ってクロス。だがこれはDFとの競り合いでこぼれるとシュートを打った選手がいた。ゴールまで真っすぐに飛んだそのシュートは3点目を告げると決めたのが工藤だったのを知るのだった。
おおおおお、工藤。今シーズン初ゴール。やっとめぐってきた先発のチャンスで決めることができた。でも工藤自身はまるで嬉しそうな顔をしていない。それもそのはず、FWとしてもっと数字を残しておきたかった。それでもやっとその足掛かりができた。これを弾みにゴール数を伸ばしてもらいたい。そう思っていたら工藤はティーラシンと交代してしまった。フル出場できない、この辺も工藤にとって不満の残るとこなんだろう。
するとその代わったティーラシン、柏からのクロスをDFと競り合いながらもダイレクトボレーで決めた。チームが勝つのは嬉しい。それでもチーム内のライバルがこうやって簡単に決めてしまう現状に危機感を持っているだろう。
4-0というスコアで勝つことができた。開始早々の退場による運の良さがあったのは事実だった。明らかにガンバの選手は消耗してミスが多くなっていた。高温多湿なこのコンディションにおいては相当な負担となっただろう。
それでも工藤のゴール、再開後の勝利というのは紛れもないポジティブな要素だった。
一つ一つの積み重ねであるリーグ戦。すぐに次の試合はやってくるだけに過剰な喜びはできない。そこがワールドカップと違うとこ。そしてこうやって勝ち続けることでいつしかサンフレッチェからも代表選手として選出されないだろうかと思うのだった。

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