大宮戦~スタジアムへ到着

2017/08/24 大宮アルディージャvsサンフレッチェ広島 NACK5スタジアム

 仕事を終え大急ぎで電車に乗る。とはいえ千葉から埼玉への移動はそもそも距離があるので当然のことながら間に合う訳がない。そんな慌ただしさの中、メールを見てみるとどうやら現地では雨が降ってるらしい。ああ、そんな用意などやってこなかった。レインコートも大ビニールも家にはあるのに一切持ち合わせてない。もはや濡れることは覚悟しないといけないようなのだった。
 電車の速度が恨めしい。これでも結構な速度が出ているのだろうが亀のような愚鈍さを感じる。自分がこんなにも焦ってるのに他の乗客ときたらサタデーナイトを満喫しようと皆リラックスしている。この意識の違い、ぼくはまるで一人だけ異世界にいるような感覚にとらわれる。
 何せ今回の対戦は残留に向けての大一番の勝負である。直接対決とも言えるこのカードは間違いなく勝った方が大きなポイントを得ることができる。思えば2006年も残留争いの終盤戦にこのカードがあった。そしてあの時は負けた。そしてその敗戦が結果的にJ2降格につながったようなものだった。
 今シーズン、ホームではすでに0ー3という屈辱的なスコアで負けてしまった。そして2年前には守備の要であった佐々木が悪質なタックルを受けシーズンを棒に振ってしまった。それはサンフレッチェの世代交代にとって大変な弊害となったこともあり、色んな意味で因縁のある相手である。勝たなければいけない。絶対に勝たなければいけないのだった。
 そんなモチベーションがあったせいか、ぼくは大宮駅に降り立つと同時に走りだした。試合開始時間は迫ってる。遅れたくはない。呼吸にリズムを取りながらランニングしていくのだった。
 ところが気力に体力がついていかない。胸が苦しい。息が続かない。汗が滴り落ちる。夕立が降ったというのにちっとも涼しくはない。おういえば雨降ってないな。もう上がってしまったようだ。この時間に来たのはあながち間違いではなかったのかもしれない。
 スタジアムのアウェイゲートを潜ることができた。階段を昇ってる間声援のボリュームが段々と大きく感じられた。ああ、もう手の届くとこまで来た。
 そしてスタンドに出るとそこには席に入りきれない人の群だった。こんなにもいて本当に席の確保はできたのだろうかと不安になる。が、2階席の真ん中を探してると向こうから気づいてくれて手を振ってくれた。ああ、やっぱり持つべきものは友達なんだ。
 仲間に合流する。
「お疲れ、走って来たの?」
「うん、お陰で吐きそうだよ」
「でも走れるだけ大したもんだよ」
 年甲斐もないようでいながら一応誉められたらしい。でもこんな汗だらだらの男が隣に座ってさぞうざかったに違いないのだった。
「今日は勝たないと」
 そう、今日は勝たないと。でも呼吸すらしんどいぼくは次々に落ちてくる汗をタオルで拭いていくのに精一杯なのだった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?