ルヴァンカップ鳥栖戦~フェリペのゴール

2017/05/10 ルヴァンカップ予選リーグ サンフレッチェ広島vsサガン鳥栖 エディオンスタジアム広島

 日が沈み掛けた空はコバルトブルーのような透き通ったような青がきらめいていた。観客はいないけどその景色が観れただけでもよかったかもしれない。

 カップ戦の常として両チーム普段試合に出てない選手が中心となったメンバーだった。とはいえ連携を根幹とするサンフレッチェには不利である。特に攻撃陣にシュートの上手い選手がまるでいないものだから尚のこと厳しさを感じるのだった。

 ところが蓋を開けてみると結構鳥栖のプレスをかわしているのである。お互いの距離感を保ちギャップを生んでは前に運んでいく。それは華麗であると感じることもあれば一体誰にパスを出したつもりなんだと唖然とするようなミスパスもあるのだった。

 やっぱりサブの選手だからレベルが低い。そう思っていたらスルッと相手をかわして攻めていく。敵と敵の間をすり抜けていく様はサンフレッチェの神髄である。ところがゴールに近付いたところで精度が落ちる。一瞬ボカッと空いたゴール前にボランチの松本はミドルシュートを打ったが、その方向は見事に明後日の方だった。

 その後も稲垣がミドルシュートを放つも枠のはるか上。フェリペが裏へ完全なスルーパスを出すも茶島はGKにぶち当てる。更に次なるチャンスでもGKを意識して枠を外してしまう。ああ、サンフレッチェの選手はみんなシュートがヘタだ。特に攻撃のポジションである茶島の決定力の低さには目を多いたくなった。

 茶島ってループシュートと打てないのだろうか。

 そんな疑問が浮かぶのも、中盤ではボールの運び役として高い技術を見せる茶島はゴールの時に限って精度が落ちるからだ。いい加減プロとしてやっていたらわかりそうなGKの動きというのがまるで読めてないのだ。だから茶島のシュートはいつもGKにぶち当たってしまうのだ。

 そしてFWの皆川はというとこの日もシュートが打てない。もう本当にこの選手はプロとしてのキャリアを諦めなければいけない時期に差し掛かってるかもしれない。そしてシュートが打てないという意味ではフェリペ・シウバも同じだった。未だにゴールを決めたことのないフェリペにはもはや外れ外国人という感情しか持てないのだった。

 ところがこのフェリペが前線で相手のボールをパスカットする。そしてゴールに向かってドリブル。対応する鳥栖のDF。フェイントを入れ右に抜けると飛び出したGK。が、次の瞬間フェリペはボールを浮かした。ふわっと上がったそのボールはGKの頭上をすり抜けゴールにすいこまれたのだった。

 入った。ゴール、ゴール、ゴール。フェリペのゴール。これだ、こういうシュートを打って欲しかった。茶島、これをやってくれよ。

 初めてフェリペの技術の高さが試合で生きたような気がした。もしかしたらサンフレッチェで一番シュートが上手いかもしれない。たった一本決めただけだが運や偶然で決まったゴールでないのは明白だった。

 今シーズンまだ勝ちのないエディオンスタジアム。あともう1点あれば安泰なんだがこれが決まらない。そこで守備の安定も兼ねて青山と塩谷が交代で入るのだった。

 それでも入らない。青山のスルーパスに皆川は反応できない。塩谷のミドルシュートもDFに当てられてしまう。CKを蹴っても単純にクリアされてしまうのだ。そんな入らないシュートは段々と時間稼ぎへと試合展開を変化させていくのだった。

 守って守って守って。最後は引いた状態が続いてしまった。それでもこの1点を守りきってサンフレッチェは勝利したのである。今期初めてのエディオンスタジアムでの勝利を決めたのだった。

 この一勝がチーム浮上の原動力になる。そんな決まり文句が頭に浮かんだのはこれがフェリペのゴールだったからだ。高い評価を得ていながらなかなか機能してなかったフェリペが結果を出した。本人も自信が持てただろう。

 そんなに甘いものじゃないのは分かっている。それでいながらこれからの躍動を感じる。鳴り物入りで入団したフェリペの成功はチームにとっても大きな鍵を握っているのだった。

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