大宮戦~負けに等しい引き分け

2017/08/24 大宮アルディージャvsサンフレッチェ広島 NACK5スタジアム

「おいおい、どうしたんだ?」
 スタンドから見下ろしたピッチでは攻められるサンフレッチェの姿しか見えなかった。縦へ突破される。クロスは入れられる。シュートは打たれる。この試合、条件敵に勝たないといけないのはサンフレッチェのはずなのに。
 大宮はゴールを目指して突進してくる。対してサンフレッチェは攻撃をしていかない。後ろでボールを回してばかりで前にいけない。もうこの時点でどちらが上位にいるチームなのか誰が観てもわかってしまうのだった。
 こんなのでヨンソン監督は満足するんだろうか。時折パトリック目指してロングボールが蹴られるが、そのどれも精度がなくて単発で終わってしまう。大宮が2次攻撃、3次攻撃と繰り返してくるのに対してそれはあまりにも勢いに欠けてるのだった。
 それもそのはず、サンフレッチェの選手はちょっとプレッシャーを掛けられると途端にボールを失ってしまうのである。かつてはパスでいなしてすり抜けていたというのに。プロとしてずっと生活してる選手にも関わらず下手になるということってあるのだろうか。その辺が大いなる謎なのであった。
 それでも右サイドからの崩しの機会が訪れる。ロペスに渡る。するとロペスは相手が何人いようとゴールへ向かってドリブルを始めてしまう。結果相手にカットされ攻撃を終わらせてしまうのだが、肝心なところで適当にゴール前へクロスを上げるとかパスをするという選択肢がない。どうしていつもドリブル一択なんだ。その辺がチーム内得点王という位置づけに違和感を持ってしまう。なぜならこの選手にはあまりにもガッカリするプレーが多すぎるからだった。
 せっかくゴールに近い位置までいけたというのに球離れが悪く攻撃を終わらせてしまう。結果、カウンターを招いてしまう。適当に中に蹴ればパトリックがいたにも関わらず。その辺の引き出しの少なさがブラジル人ぽくないのだった。
 もはや頼みはパトリックしかいない。GKもロングフィードもラストパスも全部パトリックめがけてしまう。そんなバレバレの状態で自分のボールにしてしまうのだから凄い。そしてゴール前の小さなクロスに相手DFと競りながらもゴールに入れてしまった。パトリック、やっぱり凄すぎるよ。
 先制ゴールに沸くアウェイゴール裏。ここから畳みかけてやりたい。ところがここで失点が怖くなったのか、途端に腰が引けてきたのである。
 攻め込まれ、攻め込まれ。もはやクリアするのが精一杯。そんな様子に気をよくした大宮は一層攻撃の圧力を強めてくる。CK、ヘディング。入れられた。簡単に同点にされてしまったのだった。
 どうしていつもこうなんだろう。まるでわざとやってるかのように同じパターンでやられてしまう。そして再び点を取らなければいけなくなるのだった。
 ところがプレーに精度がない。野上はロングフィードがずれる。ロペスはずれてる。サイドバックの高橋はろくすっぽ縦への勝負をしない。これで点が取れるか。それは果てしなく無謀な挑戦のように思えた。
 対して大宮のパスはよくつながる。プレスをかけても簡単にかい潜る。もはやサッカー選手としての質が一段違うような気がした。それならせめて選手交代で打開を計りたい。
 それなのにヨンソン監督はちっとも選手交代をしようとしない。それも忍耐なのかと思ってた時期もあったが、実は監督も引き出しが少ないんじゃないだろうか。もしかして同点で満足してるのでは、そんな様子も伺えたのだった。
 一応終了前に稲垣とフェリペを入れたものの、あまりにも遅きに失した感があった。打つべき手があったんじゃないか、そんな消化不良感は残ってしまった。
 かくして試合は同点のまま終わった。負けたに等しい結果でだった。
言葉を失ってしまう。それでもスタンドは総立ちになり90分の死闘を繰り広げた選手へ拍手が鳴り止まないのだった。
 不甲斐なさ、稚拙さ、ひ弱さ。もはやパトリックがいなければ高校生にも勝てないんじゃないかという手詰まり感。そんなものを内包しながら皆が皆讃える。それが広島の流儀であり仲間意識なのであろう。なのでぼくもそれに習い一緒に拍手に加わった。
「でも負けなくてよかったよ。あんなボロボロの状態でよく引き分けで止まった」
 仲間が発したコメントがこの試合を総括してたのかもしれないのだった。

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