住宅ローン 優遇金利の落とし穴!

夢のマイホーム。

休みの度にあちこちの住宅展示場を見学に行き、ネットで色んな情報を収集し、綿密な資金計画を立てて、ようやく手に入れたマイホーム。
今も昔も自分の家を持つ、と言うのは多くの人の願望です。
しかし、ようやく手に入れたマイホームを、返済途中で手離さなくてはなせなくなった、そんな不幸な人も大勢います。
世界中に蔓延しているコロナウイルス。今後、コロナが原因で、家を手離さなくてはならない、そんな人達が増えてくるのでは?
そんな気がしてなりません。

私が住宅金融公庫を利用した頃の金利は、固定金利で年利5.9%と言うアゴが外れるほどの高金利でした。そして、3年目で借り換えを実施したのですが、それでも変動で3.375%という、今では信じられないような高金利でした。とにかく少しでも早く繰り上げ返済をして、残債を減らそうと努力しましたが、バブルの終焉とともに景気は右肩下がりで、毎月の返済でいっぱいいっぱい。なんとか繰り上げ返済ができるようになった頃には、すでに返済期間も残り1/3程度の時期に来ており、手続きの手数料とか経費を計算すると、たいして繰り上げ返済する意味はありませんでした。
繰り上げ返済は返済期間の初期のうち、いわゆる元金の残債が多いうちにするほど効果があります。早ければ早いほど良いのですが、100万単位の返済が必要なので、なかなか難しいですね。
現在はすでに返済も終り、無罪放免の身ですが、結果的に借り入れ元金の倍近くを返済したことになります。さぞ銀行屋さんは喜んだ事でしょうねー。

現代の金利はタダみたいに低く、羨ましい限りですが、それでも30年、35年と言う返済期間の長さを考えると、借入する上でよ~く吟味し、細心の注意を払わなければいけません。
こっちの銀行の方が金利は高いけど、たくさん借してくれるから、なんて安易な考えで計画すると後で泣く事になりかねません。返済は通常、所得の25%以内と言われていますが、十分に余裕を持っていないと、アクシデントがあった時に対処できなくなりますよ。無理な借り入れは厳禁です。

台風や地震、交通事故や病気、そう言う自然災害や交通事故などのアクシデントは、加入している保険で回避できますが、今回のコロナショックは休業補償は期待できません。補償どころか、逆に給料減額。更にはどこかのタクシー会社では何十人と言う規模で解雇、と言う最悪の事態も考えられます。まさに降って沸いた災難ですね。
コロナの場合は日本だけでなく世界中が同じ状態ですから、今回は特例として住宅ローンの返済は3ヶ月待ちましょう。と、銀行が待ってくれるとはとても考えられませんし、晴れた日に傘を貸してくれますが、雨の日には貸してくれない、それが銀行です。ですから返済計画と返済には十分注意し、せっかくのマイホームを手離さなくて良いように心がけましょう。

ずいぶん前置きが長くなりましたが、住宅ローンを借りる時、昔なら住宅金融公庫で借りるのが一般的で、銀行は公庫の窓口としてどの銀行でも金利は一律同じでした。現在、金利は銀行によって自由に金利を設定できますが、この金利の事を店頭表示金利(基準金利)といいます。そして、店頭表示金利からこれまた銀行が自由に設定した優遇金利を差し引いたものを実行金利(実質金利)と言い、優遇措置を受けられれば店頭金利よりもずっと安い金利で融資を受けられるので返済は楽になります。

例)店頭金利(2.475%)−優遇金利(1.6%)=実行金利(0.875%)
店頭金利は定価、優遇金利は値引きと考えるとわかりやすいでしょう。
(店頭金利=基準金利、実行金利=実質金利とも呼ばれています)

優遇金利を適用するには、銀行側から提示される条件を満たす必要があります。でも、そんなに難しい条件ではありません。また、銀行によっても条件はまちまちなので、いくつかの銀行を当たり優遇金利を適用できる銀行で融資を受けるのが良いでしょう。大抵は無意識のうちに優遇金利で融資を受けているとは思いますが、長い返済期間ですから、0.1%の差でも借り入れ額しだいでは大きな金額になります。少しでも有利な金融先を選定するべきでしょう。

また、優遇される期間が全期間であったり、借入れ当初から5年間のみ、であったり色々パターンがあるようです。住宅金融公庫時代にも、ステップ償還と言う、5年までは低金利で5年過ぎると金利がボーンとアップする制度がありました。家を建て、子どもに金がかかる頃から金利が上がる事で、返済に苦しくなる人が結構いました。一見すると優しい制度に思えますが、気を抜くと危険な制度だったのかな、と思います。

優遇金利が適用され、安い実質金利で融資を受ける事ができた。と喜んでばかりはいられません。当然ですが、借りたものは返さなくてはなりません。順調に返済していても、コロナショックのような事態が発生し、返済が滞るかもしれないし、長い返済期間ですから、わずかの残高不足で引き落としができなかったり、うっかり入金を忘れていた、と言う事もあるでしょう。1度くらいは大丈夫だろう、すぐに入金しておけば大丈夫だろう、と言う甘い考えは捨てた方が良いです。

優遇措置が認められて、実質金利で借り入れができる事は返済する上でとてもありがたい事です。ところがこの優遇金利が曲者なのです。
優遇金利を適用するにあたってのルールを理解されているでしょうか?

この社会は、住宅ローンに限らず、様々な事が契約によって成立しています。契約には契約内容を細かく規定してある約款が存在する事は皆さん御存知の事と思います。契約にはこの約款が大切で、約款の内容をよく理解して契約しないと、とんでもない事になる事があります。生命保険の約款などは、わざとだろう?というくらいに読みにくい小さな文字で、膨大な量の約款が書かれいます。大抵の人はめんどくさがって詳しく読み解く事はしません。でも、この約款には非常に大事な事が明記してあり、会社側に有利な事はたくさん書いてあるものの、利用者側を守る事はあまり書かれていません。それだけにちゃんと読む必要があるのです。

住宅ローンの契約書には

一度でも延滞したら優遇金利の適用を受けられなくなる

という事が書かれているのをどれくらいの人が御存知でしょうか?
融資を受ける時、恐らく融資担当者はその事を説明しているはずですが、聞いてはいても忘れていたり、意味をよく理解していなかったり、借りる前には 延滞なんてするはずない、絶対しない、と高をくくっている方も以外に多いのではないでしょうか。

それでは優遇金利の適用を受けられなくなるとどうなるのでしょうか?

例えば、一度延滞をしたとします。するとすぐに銀行から引き落としができませんでした、何時何時に再度引き落としをしますからそれまでに入金をしてください、と言う連絡がきます。その時はいつもの返済額+延滞金を入金する事になります。再引き落としまでに入金しておけばそこでその件は終りです。めでたしめでたし。
ついでに来月分の引き落としの為に、いつもと同じ金額を口座に入れておきました。ところが、また、残高不足で引き落としができませんでした。との連絡が来ました。
ギリギリの金額ではあるものの、ちゃんと不足の無いように入れておいたはずなのに!なんで?不審に思い銀行に問い合わせてみたところ・・・

お客様は先月分の引き落としに延滞があったため、優遇金利の適用が取り消されて基準金利(店頭金利)の御返済となっております。よって、御入金されている口座の金額では不足となりますので、至急不足分と延滞金を口座へ御入金下さるようお願いします。

と言う事でした。延滞を起こしたために優遇金利の適用が取り消されてしまい、基準金利が適用されてしまったのです。いつものように実質金利での返済額ギリギリしか入金してなかったため、残高不足になってしまったのでした。
ずっと滞りなく返済を続けてきて、たまたま残高不足で引き落としができず、延滞になってしまったからと言って、直ちに優遇金利が取り消されるものではないかも知れません。しかし、契約書に一度でも延滞が発生したら優遇金利の適用はなくなる、と謳ってある以上、そうなってしまっても文句は言えません。融資を受ける時はその覚悟を持っおかなければいけないでしょう。

それでは、優遇金利の適用がなくなり、基準金利となってしまったらどうなるでしょうか?

上記に書いた例、

例)店頭金利(2.475%)−優遇金利(1.6%)=実行金利(0.875%)

だと、これまで支払っていた金額の3倍近い金利で支払いを続けて行かなくてはならない事になります。(最初に書きましたが私の時は変動で3.375%でしたから当時は高かったですね)現実的には相当にきびしい支払いになる事は必至ですね。また、住宅ローンは返済期間が長いだけに、これだけ金利に差が出ると支払い総額は相当大きな額になってしまいます。一度の延滞は致命的とも言えるミス、絶対にやってはならないミスなのです。

さらに、前回と今回の残高不足で延滞は2回となってしまいました。
まだ延滞で済んでいるうちはいいですが、滞納となると話は深刻です。
1ヶ月程度はまだ良いですが、2ヶ月、3ヶ月となると督促状だけでなく、電話も来るようになり、精神的にもダメージを受けるようになってきます。
また、支店長が厳しい人に交代したり、銀行側の経営方針の変化でも督促、催促のしかたは変わりますから注意が必要です。

実際問題として、優遇金利が適用されないとなると返済はかなり厳しいでしょうね。切り詰めて切り詰めてなんとか返済していければよいですが、
延滞が続くと督促状が届き、返済を迫る電話がかかってくるようになり、精神的にも追い詰められてしまいます。
差し押さえられて競売を回避するには、任意売却をして返済に充てる、という方法もありますが、どうしても残債は残ってしまいます。
家は手放した上に返済は残ると言った最悪の結果にもなりかねません。

それじゃあ自己破産か、個人再生か・・・
全てを手放す自己破産は可能ですが、個人再生では住宅ローンの免除はありません。住宅ローン以外に借り入れがある場合、それらはある程度免除されますが、住宅ローンは払い続けるしかありません。
ということは・・・家を残すにはとにかくどうにかして返済していく、それしか無いという事になります。

念願のマイホームを手に入れたために地獄のような生活になってしまった、そうならないように返済計画には余裕をもつ事、そして返済は確実に!うっかりしていた、なんて事はくれぐれもないよう注意が必要です。

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