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ホコリまみれの工事現場から、デジタルマーケティングの世界へ vol.1

「倉庫の片付けいつまでかかりそう?もう時間ないぞ。」

ある日の父の言葉だ。

祖父の代から続いた電気工事業は、建物が崩れ落ちるかのように音を立てて一気に廃業まで追い込まれた。

借りていたビル地下1Fの倉庫。

窓一つない冷めたコンクリートのなか、従業員1名と、実兄と、私の3人は静かに"店仕舞い"をすすめていた。

人間とは冷酷なもので、ある日をきっかけに助けてくれなくなる。大変だね、という同情の言葉とともに、波がスーッと引いていくかのような感覚で離れていく。

先のこと見据えたり、周りを見渡すたびに「なるほど、地獄とはこういう景色なのか」とやけに冷静な自分がいたことを鮮明に覚えている。

仄暗い地獄の中ではあったが、多くのひとが見ることなく一生を終えるであろうこの地獄の景色に出会えたことは、人生に大きな意味をもたらしていると感じる。

今後の身の振り方は決まっていない。どう生きていくか、途方にくれた。

だが、のんびりしている時間もない。ただ1つ考えていたのは、デジタル業界にどう潜り込むか、という1点だけだった。

理由は単純。大学を卒業してすぐにお世話になったデジタルマーケティング会社の社員さんたちの、あの「かっこいい大人」への憧れを思い出したからに他ならない。

どんな大人になりたいか(すでに大人だったが...)、それを優先して進んだ先にきっと答えはあると信じていた。


祖父や父が残そうとした会社を超えること。

今はそれが大きな目標となっている。

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