建築技術7月号 スリリングかつチャーミングな構造デザインの話が満載で、必読です。

建築技術 No.846 2020年7月号 特集記事は、「代々木」からのメッセージ 1964から2020へつなぐ構造デザインの軌跡。

建築を学ぶ人にとっては必読の特集記事だと思います。

手元に一冊、買っておいた方が良いと思います。

東京オリンピックが開催されようがされまいが必読です。

代々木の体育館の構造設計がどのようになされていたかが、生々しくかつスリリングに語られています。座談会での言葉から、当時の緊迫感、スタッフが注いだ情熱をうかがい知ることができます。直近の耐震補強がどのようになされたかという記事も、具体的な内容にまで触れられていて、とても興味深く読むことができます。

テーマとして代々木に止まることなく、空間構造の変遷についても単なる形態の話ではなく、施工技術との関わりや社会的な背景なども含めて記述されています。

新国立競技場のコンペ案についても何と向き合うべきであったかという問題が浮き彫りにされています。キールアーチについても、ここで述べられているようなことがらを論点にすえた議論が必要であったということに気づかされます。

AND展2019の企画「大学における初期の構造力学によってスタジアムの基本構造を解いてみる」の内容が紹介されている記事は、とてもチャーミングです。5つの構造形式の競技場の構造計算の略算の手書きメモが構造設計の面白さを伝えてくれています。建築を学びつつ、少し力学をかじった人であれば、この記事を読むと構造設計の仕事に関わりたくなるかもしれません。

有明体操競技場の張弦梁(BSS Beam String Structure)の構造設計についても、どのような検討がなされて実現へと導かれていったかというプロセスが生き生きと伝わってくるストーリーが語られています。検討段階でのスケッチなども掲載されていて、竣工した建物を眺めるだけでは分からないこともうかがい知ることができます。

一連の記事を読み進めると「IN-BETWEEN」やArchi-Neering Design:ANDというキーワードにも向き合うことができ、これからの構造設計のあり方、構造との向き合い方のヒントを得ることができます。

新国立競技場のコンペ案の閉会屋根の検討の話の中では、組織運営のプロセスについても語られています。当時、間に入った組織がうまく機能していなかったことが想像できます。それと同様のことが、今のコロナウィルス感染症対策でうまく機能していない社会の仕組みにもあるように感じられました。

ある対談の中で語られている次のようなメッセージには、建築の構造に携わるものだけでなく、今の社会で生きているもの全員に突きつけられている課題が提示されているように思えます。

「さまざまな問題の解決方法を発見しようというプロセスで形が立ちあらわれるというインテグレートした形態ではなくて、求めているのは、わかりやすいアイコンをポンと出さなければならない時代になっています。でも、それは時代を超えて残るような本物ではないと思います。」(堀越英嗣)

「強いイメージがあっても、やればできる話とできない話がある。力づくでできる世界とできない世界がごっちゃになっているところが、いま一番危険だと思います。」(斎藤公男)

東京オリンピック 原子力発電所 地球温暖化対策 コロナ感染症対策 辺野古基地建設 リニアモーターカー関連の建設などなど

どの課題においても、解決方法を発見しようする適切なプロセスで形が立ちあらわれておらず、アイコンがポンと提示されていることからスタートしており、危険な状態なのでは? そう感じさせられました。

「構造的に考える」ことが重要なのだと思います。




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