高杉真宙さんとロミオ。
「勝ちたくなってきたんです」
という言葉を聞いた時、
「好きだなぁ…」と思いました。
舞台「ロミオとジュリエット」の大千穐楽前日に
仙台で行われたアフタートークでの
高杉真宙さんの言葉です。
結末が変わらないことはわかっていても、
どうにかして生き残れないのかと思いながら、
演じていると話していた高杉さん。
"本当にロミオとして生きているのだなぁ"
と思ったと同時に、
"生きたい"という答えに辿り着いているからこそ、こんなに鑑賞後に胸が苦しくなるのだなぁと、
答え合わせをしたような気持ちでした。
高杉真宙さんの舞台を観るのは、今回が初めて。
元々は「わたしのお嫁くん」で観たお芝居が好きで
気になったからでした。
でも、「ロミオとジュリエット」を初めた観た時、
空想上の人物であるはずの"ロミオ"が本当にそこにいた。
わかっていたことですが、
1ミリも"山本くん"でもなく、もちろん"高杉さん"
でもありませんでした。
一幕では恋に盲目でヤンチャで愛すべき少年、
でも、二幕では悲しみの運命を背負い、目に光が無くなった青年。
この作品を観るにあたって、朝日カルチャーセンターで行われた講義にも幸運にも現地で参加していたので、"ロミオの成長"に注目しよう!と心に決めていたのに。
そんなの注目なんかしなくても、全然別人だった。
"ロミオ"は確実に成長して、本当に早足で人生を上り切ってしまったんだなぁ…って納得したのです。
その機微をもっと観たくて、そして何より、
このカンパニーが作る「ロミオとジュリエット」という作品が好きで、何度も何度も劇場に足を運びました。
同じ舞台を何度も観るのは初めての経験です。
だからこそ、本当に舞台はナマモノなのだと分かりました。
お客さんの笑い声が大きい時は、いつもより少し
手振りや表情がお調子者になるロミオやベンヴォーリオ。
公演数を経るごとに、お互いに目で愛おしさを表現するようになったロミオとジュリエット。
そして何より、どんどんギャグのセンスが加速する乳母!!!笑
公演が終わっておよそ1週間。
"ロミオ"を演じ…いや、生きていた高杉さんと、同じ時間軸で一緒に生きられてよかったなぁと改めて感じています。
そして、"ロミオ"だけでなく、それぞれの地方公演のアフタートークで、真面目で、優しくて、ちょっとダサくて、寂しがり屋な高杉さんの姿を見られて、本当に幸せな2か月でした。
誕生日のキャストにおめでとうを言い過ぎてしまったり、アクロバットを求められてでんぐり返しをしたり、座長なのに後輩のキャストに首根っこを掴まれて舞台に上げられたり。
こういう高杉さんがもっている"愛らしさ"が、ロミオに生写しのように反映されていたからこそ、
あんな魅力的で"愛すべきアホな子"(高杉さん本人談)になったのだと思います。
舞台稽古中に行われたインタビューで、
「ロミオとジュリエットは一緒に死ねているから、
ある意味ではハッピーエンドだと思う」と話していた高杉さん。
だけど途中で、「やっぱり生きたい」と思い始めたからこそ、"高杉さんだけのロミオ"は生まれたのではないかなと思います。
本気で愛して、本気で生きたいと願って、だからこそ本気で死んで行く。
その熱量は「どうせ…」と物語の結末に甘んじて演じていたら、きっと出せない。
ものすごいものを見させてもらったなぁと思います。
今、高杉さんの過去の作品をたくさん観ていますが、その全てが別人です。
きっとこの"ロミオ"と同じように、いろんな役を"生きながら"、そして時々"高杉さんの一部"も一緒に生きているのだと思います。
あまりの勢いで観ているせいで、
もう今観られる作品は観終わってしまいそうで…。
だから最近は、いつまでもゆっくり食べる
お気に入りのお菓子みたいに、少しずつ観ることにしています。
高杉さんの新しい作品を観られる日が
早く来ますように。
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