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いつもとんでもない歌が鳴り響く予感がした

久しぶりの投稿が今年最初の投稿。

というのも昨年の春先から夏前ぐらいにかけて何となく没頭していたnoteへの投稿は、過去類を見ないくらいの暑さでアイスクリームみたいにその情熱が溶けていった。その間も身の上話など諸々言いたいこと書きたいこともあったのだが、実際それほどそれに割く時間もなかった。つい先日産まれたと思っていた倅も気付くと既に家の中を走り回っていて、時の流れる速度が早すぎて焦ることが最近増えた。特に洗面所や浴室で自分の顔を鏡で見た時などは、かつての自分とは違う自分が写っていて、何となく気落ちする。しなしながら自分と瓜二つのような顔の倅と風呂に入っていると、何となく生きていることが嬉しくて仕方ないと思ったりもするようになった。

自分が歳を重ねるスピードと同じように時が流れて、昔からあたりまえにあったものが失われていく感覚を35過ぎた辺りから感じるようになったのだが、2023年は顕著だった。身の回りでは以前も書いたように祖母が亡くなったのだが、その祖母の葬儀の最中にハイスタの恒岡章が亡くなったという知らせを受けた。それがちょうど去年の2月の話だった。その1ヶ月前には高橋幸宏鮎川誠が亡くなり、3月以降には坂本龍一、夏頃にはPANTAギズムの横山サケビLaputaのaki、秋にBUCK-TICK櫻井敦司X JAPANのHEATH、、、と自分が10代の頃から今に至るまで影響を受けたアーティスト達が次々この世を去る異様な年だった。特に、、、といった話もあまりしたくないのたが、毎年今の時期のような冬の季節はなんとなくチバユウスケの歌が聴きたくなる。そんなチバユウスケも昨年の暮れに亡くなった。

我々の世代、つまり2024年現在でアラフォーという表現に相当する世代で特に楽器を弾いていた奴らは必ずTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTの楽曲に触れたことがあるに違いない。私は当時中学一年だったのだが、名曲「バードメン」との出会いに遡る。学校の昼メシ中の放送で流れていて、最初は同時期に流行っていたイエモンの新譜だと勘違いしていたのだが、そのうちNHKのポップジャムかなんかのTV番組でスーツ姿でムスッとした顔で淡々と激しい曲を演奏する4人の姿を観て、とにかく言葉にならない衝撃を受けた記憶がある。それまでの私のロックバンドの認識は所謂ヴィジュアル系で、当時はGLAYL'Arc〜en〜CielLUNA SEA黒夢、その年の年末に解散したX JAPANなどがその先頭に居て、化粧必須でギターソロはメロディアスで速弾きというのがロックだと思っていた。また、後にとんでもなくロックだと知るミスチルやスピッツなどはJポップだと解釈していた。その影響から最初はGLAYのTAKUROとLUNA SEAのSUGIZOに憧れてギターを始めたのだが、周りもそんな奴らばかりだった。

ちなみに上級生の怖い先輩達は定番のBLANKEY JET CITYを好んでいて、みんな名曲「SKUNK」「赤いタンバリン」を練習していた。田舎だったので当時実は地下でバズっていたヒップホップ文化との接触は皆無で、皆ロックを聴くやつが一番イケてると思っていたに違いなく、少なくとも私はその中で生息していた。当時のミッシェルはキャリアから行けば初期〜中期ぐらいで、基盤であるパブロックやガレージみたいなノリはそのままだが、中期以降の不良っぽさよりは若干初期パンクの流れも汲んでいて少しキャッチーな印象があった。逆に言えばブランキーよりは手に取りやすいというか、不良じゃなくても聴きやすい感じがした。

当然ながらその勢いでアルバム「チキン・ゾンビーズ」を買い、その次の年の「ギヤ・ブルーズ」、初期の作品をまとめたベスト「RUMBLE」までは購入した記憶がある。それ以外の作品は友人から借りるなどしていたが、とにかくこの3部作は聴いた。特に先述の「バードメン」なんかはなんとなくコードをかき鳴らせばそれっぽくなる感じがして、誰かの家に集まってはみんな大して上手くもない癖にやたらと醸したような雰囲気で弾いていた。個人的には「ゲット・アップ・ルーシー」がその3作品の中では好きなのだが、かなり練習した記憶がある。まあちっとも上達しなかったが、弾いていて楽しいにつきるのがミッシェルの楽曲のいいところだったのかもしれない。

ミッシェルに限った話ではなく、ROSSOThe Birthdayの曲も名曲揃いである。思えばいつの時代もチバユウスケの歌が日常生活に居て、曲を聴くと当時の出来事や背景が自分の人生の小節ごとに思い出される。ROSSOはちょうど私が高校3年の頃に結成され最初の作品がリリースされたのだが、アルバムのリード曲である「シャロン」、終盤の「星のメロディー」はちょうど大学受験の沼に深く潜っていた頃を思い出してしまう。ROSSOは初期のチバとBJC照井ASSFORTマサト3人編成がたまらなく渋くてアツい。「シャロン」の冒頭である「サンタクロースが死んだ朝に ダダリオ・カマロがくれた」という歌い出しは叙情的で、まあまあ意味不明ではあるが一度聴くとなかなか忘れられないパンチラインである。チバの歌詞の世界観はミッシェル後期以降情緒的というか、やたらとロマンチックさを感じる。「星のメロディー」はそのいい例である。

二人はここで 宇宙船を見てた
夜が太陽を飲みこんでもまだ
月が鳥を眠りつかせても
二人は逃げるつもりはなかった

聞こえるだろう 星のメロディー
落ちてくる 星のメロディー
身体ごと 受けとめて
落ちてくる 星のメロディー

ROSSO「星のメロディー」

ここでいう「ロマンチック」とは決して男女の情事的な部分を指すのではなく、太宰治のロマンチック感に近く、文学的という意味である。日本コロムビアに在籍していた頃までの作品は荒々しくロックンロールを地でいくような作品が多かったが、レコード会社移籍後に出したアルバムぐらいからやたらとロマンチックな感じというか、深みが出たような気がした。当時ミッシェルの解散理由に「音楽性の違い」というのが一番に挙げられていたが、強ち間違いではないのかもしれない。よくバンドの解散理由としてこの「音楽性の違い」というワードが挙がることがあるが、大半は金で揉めたか人間関係がこじれたかの二択だと勝手に考える。しかしリアルタイムで聴いていた世代としては微妙なミッシェルの変化に気づかないわけがなかった。それは私だけではなく、おそらくリスナーの殆どが感じていたことだろう。

チバの変化は如実だった。ミッシェル後期にはジャズに没頭していたという話を当時誰かからか聞いた記憶があるが、元々育ちが良くクラシックなども嗜んでいたらしいのでその音楽性は我々が想像する以上に広いものだったのだろう。なお、ROSSOの後に始めたThe Birthdayに関してもバンド名からまあまあ深い。定かではないがBjorkが在籍していたThe Sugarcubesの名曲「Birthday」から引用したと当時何かの雑誌のインタビューで答えていたのだが、ROSSOの曲で「ビョークはきっとビョーキだわってくだらない駄洒落をいって大あくびをしている」とか歌詞にしてた辺りチバはビョークも好きだったんだろう。

The Birthdayは個人的に「涙がこぼれそう」「なぜか今日は」「さよなら最終兵器」「くそったれの世界」の4選。中でも「さよなら最終兵器」はメロディ、歌詞共にThe Birthdayの最高傑作だと思う。この「最終兵器」というのが核兵器のことを指すのか定かではないのだが、リリース時の2012年の時代背景などを考えるとそう考えても不自然ではなかった。私が好きな漫画の中に「最終兵器彼女」という作品がある。実写映画化もされた本作は、タイトルの通りまさかの自分の彼女が戦争で敵と戦う最終兵器だったという話なのだが、不思議とこの曲の歌詞がその漫画の情景とマッチする。

お前に会えて良かったよ 心底
訳聞かれても 答えらんないけど

いつかきっとわかるんだろうね
愛ってやつは自分勝手で どうしようもない俺達だって

ヴィーナス タンゴ ステップをやみくもに踏み出せ
ぼんやりだけど未来が見えた気がするんだ

さよなら 最終兵器
さよなら 最終兵器
さよなら さよなら 最終兵器

The Birthday「さよなら最終兵器」

「最終兵器彼女」に関しては高校生の話なので歌詞のような雰囲気ではないが、結局地球が滅び、最終形態の宇宙船になった彼女・ちせの中で主人公のシュウジが寄り添うという描写で作品は終わってしまう。これに対する解釈は人によってはハッピーエンドと取り、バッドエンドと取る。旧劇エヴァみたいに当時いろんな推測をしたものだったが、読み手の想像力によって解釈が変わるようなストーリーは歌詞を読んでるような錯覚となる。それは映画や小説などにも同じようなことが言える。それがROSSO以降のチバユウスケの作品にも通ずる部分があるのではないかと思う。

とにかくチバユウスケという日本を代表するロックスターがこの世を去ってしまったことは非常に哀しい。いろいろと好きな曲を自分の当時の背景と並べて長文で綴ったわけだが、一番チバの作品で好きな曲は、と尋ねられれば迷わずミッシェルの「GIRLFRIEND」だろう。一番チバっぽくないけどある意味チバっぽいというか、ラブソングみたいだけどそうでもない、レクイエムのような雰囲気だけどやっぱりロックンロール的な感じ。

世界はくだらないから
ぶっとんでいたいのさ
世界はくだらないから
ぶっとんでいたいのさ
天国はくだらないから
ぶっとんでいたいのさ
天国はくだらないから
ぶっとんでいたいのさ
希望は嘘だらけで
ぶっとんでいたいのさ
だから僕はあの娘と
ぶっとんでいたいのさ
I LOVE YOU

THEE MICHELLE GUN ELEPHANT「GIRLFRIEND」

くだらない天国でぶっ飛んでいることを本当に願いたい。アベフトシも居るだろうし少し前に逝った鮎川誠も居る。まさに「とんでもない音が鳴り響く予感がする」ってのはそのことなんだろう。

そして今までありがとう、などと今更ながら言いたい。

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