見出し画像

LLL

(2022.02.06)

ふとしたときに、千切れるような悲しみが
わたしの心臓にぎゅっと集まって
思い出すのは、知らない町の、3日だけ住んだ町のトンネル。

悪いことは言わないから、あなたはここには馴染めないから、もう、諦めてください。
時は止まらず、繰り返す。
なんどもなんども、トンネルを入っては出て、入っては出てを繰り返す。
まるで悪い夢で、曇りの昼下がりのどんよりとしたような白に、ナトリウムランプが空空しく響いていた。
あなたがまだ夢から覚めていないことは、誰でもわかってしまいます。

やっと、月が昇ってきました。
遅い東に、誰も迎えに来ず、ただ昇りたてだということだけが、焼きたてのパンケーキのような色で、わたしは、わかったのですが、
隣のあなたに指をさして教えても、あなたはちっとも月が見えず、よく目を凝らしてみてよって、そういって、夜になりました。

夜は海と、灯台と、波止場と共にやってきます。潮の香りが、月の風の香りだと、この時知りました。
夜と、朝と夜が、それから、交互に来て、わたしたち、花を作るように、とても甘美な時を過ごして、これが幸せなんだと、カーテンの隙間風があなたの前髪を揺らした時、ふと思いました。そう、これはラブレターなので、すべてが都合の良いようにと願われて、願い、叶いますようにと所謂祈りで、朝が来るたび、祈るように思っていたのです。

春は、夏は、秋は、やってきました。
あなたと共に季節を出迎える。
そうして気づけば4年が経って、わたしの血はあなたの香りが染み付いて、全く同じ涙を流すようになって、まるでお互いの四肢みたいに、わたしはあなたに、あなたはわたしに浸透していきます。でもそれは、お互いとお互いには、なれなかったので、何度、あなたと昇る太陽を迎えたか、今はもう、それだけ、それだけを考えられるだけで、わたしは十分なのです。

スローモーションで、何人ものわたしが銃に打たれて倒れていくのを小屋の陰からみていたわたしは、このあと、どう動けばいいのか、死体の上には、静かに、ただ雪が積もっていきます。切れた肉の上に血が滲み、雪が混じり、冷え冷えと、いつまでも鮮やかな傷口を、ずっと見つめていたら、それが普通になっていくのを感じました。あなたが好きだったんだとあなたに会う度思います。
あなたに会わない間は、ずっと傷口を見ていたから。

あなたが、少しずつ、変わっていくのは、今となれば、決まっていたことで、それは、惑星の軌道のように、決まりきっていたことで、だからわたしは、誰も憎めず、純粋な悲しみを今も大事に抱きしめています。
あなたの切ってくれた林檎を、ふたりで食べたことを思い出して、1番のかがやきがそこにあったのを、今、わかったのです。
そしてそれは、1番の罪なのですけど、それは至極、甘く、甘かったのです。


この世界には、あなたと歩いた道が多すぎる。どこにもあなたの残像がわたしの2歩手前を歩いています。わたしは、いつまでわたしたちを追いかけるのか、目を瞑れば、目を瞑ってもいいでしょうか、あなたとね、生きるためにわたしはいささか強くなりすぎましたが、そうです、ね、強くならなくては、あなたと生きていけないと思っていて、わたし、頑張ったんです、傷口を見つめ続けて、荒野に生きる決意を何度も繰り返していたのです、誰にも気づかれないところで、あなたの砂漠に少しある草木はね、わたしの涙から生まれたのかも。
少しずつ泣いて、歩いた時の涙ですから、どうか大切にしてくださいね。
朝日がわたしを照らします。バスの車窓、大通りを流れる車、青い窓にもたれかかって、また少しだけ泣いているけど、そのあと、無に還るように眠りたい。
あなたと指の長さが違うから、次は双子か何かに生まれ変わるんじゃないのかなって思ってますけど、でもやっぱり、恋愛はここにあったんだなぁ、わたしにとって、これは友愛じゃないのは、確かなのを、正気な頃にも思うから。もう眠りたいです。
ほんとうは、誰にも愛されていなかったんだと、少しだけ絶望しています。
なので、自信がないけど、次は誰かに起こしてもらいたい、寝ます、もう、わからないので、眠ります、芝生と夕焼けと白いすべり台の夢をみながら待ってます。さようなら。さようなら。さようなら。さようなら。さようなら。林檎をしゃくと、齧ります。甘い夢をできるだけみます。

Last Love Letter

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?