時計やアクセサリーで痒くなる方に知っていて欲しいこと

ネックレスで首が赤くなった。
時計をはめている手首が痒くなった。

金属アレルギーでしょうか？
もうネックレスや時計は着けられないのでしょうか？

結論を言うと、
アクセサリーで痒み＝金属アレルギー確定　
ではありません。

ピアス、ネックレス、時計。
私たちの日常には多くの金属のアクセサリー・装飾品があり、多くの人が楽しんでいます。

皮膚トラブルが起きた時のアクセサリーとの付き合い方は人それぞれです。

昔痒くなって以来アクセサリーを着けません。
という慎重な方もいます。
（個人的には少しもったいない気がします）

逆に、皮膚が荒れていても気にせずアクセサリーを着ける方もいて、大丈夫かな？と思う事もあります。
皮膚トラブルを放置したままアクセサリーをつけていると、後々アレルギーを発症しやすくなるからです。


金属アレルギーは珍しいアレルギーではありません。

しかし「私は金属アレルギーだ」と思っている人の中には、アクセサリーで痒くなった経験だけを基にそう思っている人もいるのではないでしょうか。

また金属アレルギーが実際にある人でも、自分がどの金属にアレルギーがあるのかをきちんと把握している人は少ないと思います。

アクセサリーで皮膚トラブルが起きた時、どう考えれば良いのか。

金属アレルギーとは実際どういう事なのでしょう。

金属アレルギーがある人だけでなく、アクセサリーを身につける全ての人に知っておいて欲しいことです。

金属で皮膚が荒れる理由

金属アクセサリーで皮膚が荒れる理由は、大きく2つに分かれます。
（ピアスでは傷からの細菌感染もありますが「荒れ」とは別問題とします）


金属アクセサリーで荒れる理由。

一つは金属アレルギー、もう一つは刺激です。

刺激と聞いて、多くの人はピンとこないと思います。
これらについてできるだけ簡潔に説明してみたいと思います。

アレルギーとは

ある金属に対してアレルギーがあるというのは、
ある金属の成分に対して身体の免疫を担当する細胞が『敵だ！有害だ！』と認識して攻撃する事を決めてしまった状態です。

免疫細胞はとてもしつこく、一度攻撃すると決めたら忘れません。
ずっとその金属の事は敵だと思っています。

例えば、金(gold)に対するアレルギーを発症してしまうと、その後ずっと金のアクセサリーをつけるたびに免疫細胞は攻撃体勢に入り、皮膚に炎症が起きます。

「刺激」とは

夏場など汗をかく状況で、長時間ネックレスや時計をつけていた時に皮膚が痒くなった事がある人は多いと思います。

同じアクセサリーをつけてもなんともない事もあるのに状況によって痒くなる。
これはおそらく「刺激」です。

汗など水分の多い状況下で、金属と皮膚が長時間接し、イオン化した金属の濃度がその局所で濃い状態になり皮膚に炎症を起こす。
これが「刺激」です。

刺激では、アレルギーで関与していた免疫細胞はあまり関係ありません。
状況によって誰にでも起きる可能性がありますが、一度起きたからといって次も起きるとは限りません。


アレルギーと刺激。
聞き慣れない概念かもしれません。

しかし化粧品や金属などによる接触アレルギー（食べたり吸い込んだりではなく肌に触れて発症）では重要な考え方です。

ではアクセサリーとの付き合い方がどう違うのでしょう。


その前にアレルギーの基本知識を少しだけ。
混同している方も多いかもしれません。
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《アレルギーには2種類ある》

『アレルギー』と聞いて多くの人がイメージする、花粉症・喘息・食物アレルギーなどは即時型アレルギーです。

金属アレルギーは遅延型アレルギーです。

即時型と遅延型、この２つのアレルギーは全く別モノと考えてください。

それぞれを詳しく説明することはとても難しくなるので割愛します。

『アレルギー』という同じ用語でも、
関連する免疫細胞も、症状も、検査も、すべて違う。全くの別モノです。

アレルギーの検査というと、血液検査を思い浮かべる方が多いと思います。
ダニや花粉症などの即時型アレルギーでは血液で調べます。

遅延型アレルギーである金属アレルギーでは、血液で調べる事はできません。
パッチテスト（後述します）という検査で調べます。

アクセサリーとの付き合い方

金属アクセサリーによるアレルギーと刺激。
どちらも皮膚に炎症を起こすのは同じですが、今後アクセサリーとどう付き合うべきかは多少変わります。

・金属アレルギーの場合
そのアクセサリーに含まれる金属の成分に対して、免疫細胞が攻撃の対象としているので、そのアクセサリーをつける度に皮膚に炎症が起きます。
※実際には一瞬触っただけでは反応は起きないので、密着度や時間によって症状に差があります。

アレルギーの場合は繰り返すたびに症状がひどくなる事も多く、
そのアクセサリーはもう着けない方がいいでしょう。

同じ金属が含まれる他のアクセサリーでも同様の症状が起きる可能性があります。
さらに、アイメイクに使うビューラーやポケットに入れっぱなしのキーホルダーなど、実は身の回りの多くのものに金属は含まれています。
これら思ってもみないものに含まれる金属に対しても皮膚が反応することもあるので、広い範囲で注意が必要になります。

金属の製品をなんでも避けて生活するのは大変です。
上手に避けるためにも、自分がどの金属に対してアレルギーなのかを知る必要があります。

・刺激の場合
その時の状況によって皮膚の炎症が起きただけなので、
汗をかいていない時や短時間つける分には問題ないかもしれません。
つまり使用状況を工夫すればそのアクセサリーを着ける事ができると言えます。

金属アレルギーの検査

アレルギーと刺激。
この2つを区別したり、金属アレルギー（どの金属に対するアレルギーがあるのかについても）を調べる検査が、パッチテストです。

パッチテストとは
何種類かのアレルゲン（アレルギーの原因となる物質）を、背中などの皮膚に2日間貼りっぱなしにして、剥がした後に起こってくる皮膚の反応を見てアレルギーを判定する検査です。
検査期間が1週間ほど必要で、3ー4回の通院が必要です。
（アレルギーや皮膚症状の原因を必ず見つけられるとは限りません）

パッチテストで調べる他のアレルギーとして、わかりやすいものでは化粧品のアレルギーなどがあります。

これらのアレルギーは、急激な症状ではなく、命や全身症状に直結する事もほぼありません。

そのため医療機関においても、喘息や食物アレルギーなどのアレルギー疾患に比べて注目度は低めで、パッチテストも認知度が低い検査です。

さらにパッチテストは通院回数が多く、患者さんにとって面倒な検査です。

通院のスケジュールを組む必要があり、採血のようにその日にパッと行うことができません。
そのため皮膚科でも盛んに行われているとは言えないのが実情です。

医師からも患者さんからも注目度低めの地味な検査、パッチテスト。

しかし、金属アレルギーではパッチテストが唯一の検査です。

金属アレルギーがあるかどうか、またどの金属にアレルギーがあるのか、知るためにはパッチテストを受けるしかありません。

アレルギーのある人は、自分が何に対するアレルギーをもっているのかを知らないと何をどう避けるべきかがわかりません。
アクセサリー以外にも身の回りの様々な製品に金属は含まれています。
アレルギーがある事も知らないまま触れたり身につけたりすることで、皮膚トラブルを繰り返してしまっている可能性もあるのです。

金属アレルギーについて相談したい場合には、パッチテストを積極的に行っている皮膚科専門医を探しましょう。
クリニックのHPでどのような手順や日程で行われているか前もって確認して受診するとスムーズです。

　
《なんとなく調べてみたい！は意味がない》

アレルギー全般に言える事ですが、
何も症状も起きたことがないのに、
「アレルギーがあるかどうか調べてみたい！」と検査を受けるのは、受診にかかる手間やお金がもったいないのでお勧めしません。

「アレルギーを発症しやすい体質」には遺伝的な要素があります。
しかしアレルギー体質と特定の物質へのアレルギーの有無は別の話です。

特定の物質に対するアレルギーは、生まれた時に「持ってる」ものではなく、人生のどこかの時点で発症するものです。

何も起きた事がない段階で前もって検査を受けても、将来アレルギーを発症するかの予測はできず、医学的な意義は低いと言えます。

アレルギー検査の目的は、’’現在起きている症状がアレルギーに関連しているのかどうかを調べる事’’と考えてください。

金属アクセサリーで皮膚が荒れたら

ではアクセサリーで皮膚が荒れた時にはどうするべきでしょうか。

皮膚が少し痒くなったからといってすぐに皮膚科を受診できるとは限りません。

金属アレルギーは通常、命に関わるような緊急性の高いものではありません。
受診まで少し様子をみることは可能です。

《皮膚トラブルが起きたら》

治るまでその部位にアクセサリーは着けない

長引くなら皮膚科で治療を受ける

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汗をかかない状況で短時間だけ装着
皮膚に異常が起きないか確認　

時間が経ってからでも症状が出るので、数日は様子を見る

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何も症状が起きなければ、
着ける時間を長くして通常の使用に戻していく

アクセサリーをつけるたびに荒れるなら、アレルギーの可能性もあります。

金属アレルギーを疑う場合は、皮膚科専門医に相談しましょう。


皮膚トラブルがある時にはアクセサリーをお休みする事をお勧めします。

特にピアス。

炎症があるのにピアスをつけ続けると、
将来的に金属アレルギーを発症するリスクを高めます。

あえて怖い表現をすると、
人生でアクセサリーを楽しめる時間を自ら縮める危険があります。
この話についてはまた別に書きたいと思います。

最後に。

アクセサリーは私たちの生活を彩ってくれる大切な存在です。

トラブルがある時は適切に避けるべきですが、
本当はつけたいのに過剰に恐れてNoアクセサリーの生活は寂しい気もします。

正しい知識をもち、アクセサリーと良いお付き合いをしてもらえたら幸いです(^^)