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塗り薬歴、教えてください

市販の薬で治らない…皮膚科に行こう。
近くの皮膚科で出してもらった薬塗ってみたけど治らない…別の皮膚科に行こう。

ぜひそうしましょう。
市販の薬はあくまで短期間塗ってみるためのもの。
治らないなら、早く皮膚科を受診すべきです。

皮膚科でもらった薬で治らないという場合に、他の先生の意見を聞いてみることも重要です。
(同じ先生に再び相談できたらよいですが、人間同士なので相性もあります…)

そして一つの皮膚疾患においても、その病態は時間とともに変化します。
状態が望む方向に進んでいないなら、相談し直す必要があります。

そんな時に覚えておいてほしいこと。
今まで塗っていた塗り薬について教えてください、ということです。

病院では既往歴・薬歴、皮膚科では【塗り薬歴】

病院では一般的に、既往歴(今まで経験した病気など)と薬歴(飲んでいるお薬や過去に問題があったお薬など)のことを聞かれます。

でも皮膚科、特に重病の少ないクリニックでの皮膚科診療においては、飲み薬の薬歴よりも【塗り薬歴】が重要なことがあります。
※もちろん飲み薬の薬歴も重要ですが、皮膚トラブルで受診する多くの若い人には内科などの薬を何も飲んでいない人も多いので、今回は皮膚科特有の【塗り薬歴】についてのお話です。

「今の皮膚の状態を見て、先生が合っていると思う薬を出してください!」と言ってくださることも多いのですが、
『その今の皮膚の状態は、何の薬を塗っていた上での状態なのか』を、
皮膚科医はすごく知りたい!!!

塗り薬歴.001

どうして【塗り薬歴】が必要か

塗り薬というのは処方薬だけではありません。
ドラッグストアや通販で買った市販薬でも、今の皮膚の状態を理解するための重要な情報です。

実はここに来る前に市販の薬を塗ってしまって…すみません。と申し訳なさそうに言ってくださる人もいます。
全く悪くないんです。ただ、その薬は何だったかわかったら助かります。

どうして塗り薬の情報が必要なのか。
逆に、塗り薬がわからないとどう困るのでしょう。

その理由をもう少し詳しくお伝えします。
①同じ薬を出してしまうかもしれない
②その薬で効かなかったということは…が結構重要
③副作用の可能性

①同じ薬を出してしまうかもしれない(残念…)

保険診療において、医療機関オリジナルの薬はほぼありません。
混合しているとオリジナルっぽく見えますが、実際は存在する処方薬を混ぜていることがほとんどです。
たくさんある処方薬の中から、症状や部位などにより選んで処方しています。
患者さんから「この前もらった薬が効かなかった」と聞いても、その薬を確認できなければ、まさにその効かなかった薬を処方してしまうかもしれません

②その薬で効かなかったと言う事は…の情報は重要

この情報は結構重要です!
薬には『作用』があります。
どんな作用が働いた上で今の皮膚状態なのか、ということから推測して病態を把握するのも皮膚科医の仕事の一つです。

例えば、
A.この状態に効果があるはずの薬を塗っていた→『それなのに』良くなっていない
B.この状態に対しての効果は低い薬を塗っていた→『だから』良くなっていない
この2つは大きく違います。

③薬である以上、副作用の可能性は必ずある

必要以上に恐れる必要はありませんが、薬には当然”望まない作用・反応”が起きるリスクもあります。
塗っていた薬がわかると、薬の影響の可能性も含めて病態を判断できます。
望まない作用・反応というのは、市販薬でも同様です。
非ステロイドと謳う”安心な響きの”塗り薬の成分にも、症状が悪化するリスクはあります。

お薬あてクイズの始まり

皆さん、薬のことを伝えようとして色々とヒントをくださります。

患者さんからのヒントで多いのがコレ。
【チューブに入った薬】
【プラスチックの容器の薬】
 ↓
ごめんなさい!絶対に分かりません!😢
なぜかというと…
チューブ → 軟膏/クリームは基本チューブ入りです。
プラ容器 → 薬局で薬を詰めてくれる容器です。

☆例外として、正解に辿り着く可能性の高いヒントも☆
【紫のフタのチューブ】
【青い色の塗り薬】
皮膚科医としては「アレだな…」とニヤリとします。
だけど「白いチューブで線が緑、あれ?フタが緑だったかな…」とかになってくると…
ごめんなさい!やっぱり分かりません!😭

塗り薬を当てるクイズはなかなか難しく、やはりお薬の情報を前もって準備していただけるのが一番です。

薬の名前なんて覚えなくてよい

お薬の名前はカタカナの羅列。
意味のある名前ではないですし、スッと頭に入らなくて当然です。
頑張って名前を覚える必要はありません。

病院に行く時はお薬手帳を持参しましょう!
と言っても、病院に行く機会が少ない人はお薬手帳を持ち歩きません。
皮膚科の患者さんは、内科的な基礎疾患がない人も多く、お薬手帳なんて作ったことがない人も多いです。

でも、お薬の情報を伝える方法は、お薬手帳ではなく何でも良いのです。
スマホに薬の名前をメモする、薬をスマホでパシャ!(←オススメ!)、通販で買った薬なら購入記録から、など。
若い人に馴染みのある方法で、使っていた薬を教えてもらえると助かります。

市販薬には聞いたこともないものもいっぱいありますが、名前さえ分かれば診察中でもネットですぐに成分が調べられます。

もちろん状態によっては、塗り薬歴がそう重要でないこともあります。
しかし薬の情報が必要か不要か、患者さんが前もって判断する事は難しいです。
明日病院へ行くから保険証とお薬手帳を準備しよう、と同じです。
明日皮膚科へ行くから塗り薬をパシャ!としておこう、だと助かります。

使っていたお薬の情報は、患者さんご自身しか分かりません。
より良い診療のために、ぜひお薬の情報共有にご協力お願いします!

最後まで読んで頂きありがとうございました(^○^) 仕事の励みや参考になりますので、良かったら「スキ♡」をお願いします♪