スペック

あなたは自分自身と会話をしていますか?

この出だしではどこかの怪しい宗教団体の勧誘と勘違いされてしまう。そうじゃない。

私は物事を考える時に頭の中が会話形式になる事がよくある。

頭の中の疑問ちゃんが私に疑問を投げかけてくるのでそれに答えている。

イメージがしづらい人はLINEのトーク画面を想像してもらいたい、あのまんまでございます。

頭の中でやりとりが完結してくれればいいのだが、口に出てしまうので厄介だ。

 スーパーでインスタントの味噌汁が並んでいるコーナーへ行き、目の前に展開されている商品を見つめながら頭の中で私に疑問ちゃんが投げかけてくる。

「どれにする?」

「安くていっぱい入っているにしようか」

「味噌は?」

「まろやかな白かな」

「具材はどれにするの?」

「あさり・しじみ以外なら何でもいい」

私の疑問ちゃんへの返答は全て口に出ている。

いつも解決までいってから気づく。

よかった、今日は周りに誰もいない、聞かれる事はなかっただろう。

なぜいつも解決までいってから気づくのだろうか。

それはきっと、何かに集中する時、頭の回転以外は何ひとつ意識する事が出来なくなってしまうからだろう。

 私の身体は燃費が悪く、ひとつの事に集中している間は周りがあまり見えていない。

友人と話をしながら歩いていると、よく服の袖を引っ張られ、人や物との衝突を避けさせてくれる。何度助けられたか、命の恩人だ。

 このようなスペックで物を考えると、考えている間は自分がどうなっているのか分からないし、制御も効かない。

だから、知らない間に口からお漏らししてしまう。

たまに駅や人がごった返しているところに、独り言を言いながら歩いている人を見るが、傍から見たら私もそう見えているはずだ。

健全な人ならそんな人には近づかないだろう。

いつも考え事が終わると周りに誰もいないのはそういう事なのだろうか。

今、想像したら悲しくなってきた。

 頭の中の疑問ちゃんは、人から何かに説明を受けている時、疑問ちゃんから説明くんに変わる。

説明くんが説明してくれた内容に納得がいったら次の説明が送られてくるのだが、納得がいかなかった時、会話がそこで止まってしまう。

納得がいかないところは置いといて、次の説明にいければ効率がいいのだが、それができない。

説明くんが私の理解をよそにバンバン次から次へと説明してくれる時もあるのだが、前で詰まっている為、トーク画面が説明にそって下へスクロールせず、説明くんでいっぱいになりフリーズする。

こうなったらおしまいだ。

アプリを落とし、再起動をかけ、トークを開き直す。

画面いっぱいの説明くんは消えてスッキリしている。と同時に、私の頭もスッキリとし何も入っていない状態に戻っている。

まぁ、当然、説明くんにもう一度尋ねに行くのだが、説明くんはさっきよりも少しキレ気味だ。

申し訳ない事をしてしまった自覚はあるのだが、私のスペックは変わっていないので、ゆっくり説明してもらえるようお願いする。

私の頭を、早くガラケーからスマホに乗り換えたいものです。



#創作大賞2022

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?