アルバイトで庄司薫

僕は今日も今日とておどおどとバイトに向かうのだけれども、最近はバイト中に本を読むということにズッポリというわけなんだ。というのも、つまり僕はバイト中「どうせ何も考えず身を腐らせるぐらいなら本を読んだ方が有意義なのではないか」なんていっぱしな事を(もちろん、これがいっぱしなんかでないことなんて僕はわかってるんだ。)考えてるんだ。そうやって時間を潰しているのだけれども、僕みたいな弱虫(僕みたいなというと、僕と同じような相当にグッタリするような、ごますり弱虫がたくさんいると思ってるように聞こえるがそんなわけはないことはわかってるし、しかし僕みたいな人間はマイノリティなんかではなくたくさんいることもよくわかってる。)は、「バイト中に本を読む」なんてちょっとした、でもなんてことはないはずのタブーを犯していることに少し後ろめたくなっちゃっている。これは本当に、相当に厄介なことで、つまりそれはなんでかというと、本を読むなら読むほどの精神力を持ち合わせていなければ、それはただの、今時の言葉でいうイキりってやつなわけで、僕はそんな人を見下したりしちゃっているわけなんだから本末転倒というか、本当に厄介で面倒くさいことなんだ。しかも仕事をしない人と同じ時は後ろめたさなんて少ししか感じてないのに、きっちり仕事するおばさんと一緒だとその後ろめたさをものすごく感じちゃって、有意義な時間を過ごすなんて相当にご立派な当初の目的も忘れてずっとドギマギしてる。これは僕が嫌悪するような、本当に弱い人間、つまり弱いけれど弱い人の気持ちも理解できて寛容な、結果強い人とかそういうご立派で素晴らしいものではなくて、本当に弱くて、学校とか集団で活動する場でもその場の空気に合わせて人の気持ちも考えず、さっきもいったようにイキった発言なんかしたりして、でもその発言をすぐ後悔して、挙句「僕は後悔してるんだ!」みたいなどんな人間が見てもげんなりしちゃうような言い訳を物凄い早口で言っちゃうような、何者にもなれない、振り切れないただの半端者、でもその半端者にもカテゴライズされない半端者というわけで、つまり、僕は相当に弱い人間ってことを表している気がしてるんだ。(気がしてるなんて言い方したら保険をかけているように聞こえるかもしれないけれど、本当にこれは保険をかけてしまっているんだ。本当に僕はつまらない何にも突出することもできない人間なんだなぁ。なんて書きながらほんとは僕には何かあるんじゃないかなんて考えちゃってるんだからさっき言ったような半端者にもカテゴライズされない本当の半端者ってわけなんだ。)

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