大原香

妄想執筆家と人形職人のおはなし

【私達の日常2】

私には変わった知り合いがいる。
容姿端麗、肩にかかる黒髪に魅惑の泣き黒子。
仏頂面のその人は性別不明、年齢不詳。

「ねぇねぇ」
「なんだ」
「月夜里さんって男?それとも女?」

月夜里さんは人形の服の型紙を作成をわざわざ止めてこちらを見つめる。
型紙の衣装はフリースですか、それともジャージですか?
まあそれはおいといて…、先程から月夜里さんから投げつけられる心に突き刺さるようなこの視線はなんだろう。

「そ、そんな可哀相な目で私を見ないで!」

月夜里さんは重い溜息をつく。
なにこの精神的攻撃、結構効くぞ。

「呆れたな。君には洞察力というものがないのか?」
「洞察力ってそんな」
「名前のときもそうだ。私が言うまでずっと君の中では私は『ツキヨリ』という苗字だったらしいな。指摘した途端にあの間抜け顔だ。面白かったからいいがな」
「あれで『ヤマシタ』と読める人のが凄いから。てか最後のひどくない!?」

しれっとした顔のまま月夜里さんは答える。

「事実だからな、仕方ない」
「辛辣っ!」

結局、月夜里さんの性別の件は一蹴されたまま一日は流れていく。

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