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かきもの

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2018年10月の記事一覧

【短編】憧れのひとって、貴女のことだよ。

いつも貴女に会えるのを楽しみにしている。
初めてあった時から、私の憧れだった。
生粋のお嬢様。深窓の令嬢。
田舎娘の私には、とても輝いて見えた。
「そろそろお茶にしようか」
「そうだね」
ランチを食べ、買い物を楽しんだ後、最寄りのカフェに寄る。
彼女と会うと、「お茶を飲む時間」が必ずある。
彼女はかなり小食で、よほど歩き回らない限り、植物園や、遊園地とか、本屋さんでいろんな棚を次々見た後とかではな

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【短編】振られたようなものだ、

振られてるけど。
好きな人と電話がしたくて、メールしたら
「彼女とまったり過ごすから、だめ」
と返ってきて、
いや、私たちは友達だけど、友達なんだけど、
「そっか、楽しんでね♩」
の♩が虚しかった。
彼女公認のお邪魔虫とはいえ、お邪魔にはなりたくない。
でも今日は、彼と電話したかった。

好きになったことに後悔はしてないし、でも目の前で、私と電話しているあの人を見て、彼女さんは今まで何を思っている

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【短編】一目惚れは電気が走るものではない。春の風が吹き込んでくるのだ。

【短編】一目惚れは電気が走るものではない。春の風が吹き込んでくるのだ。

「長谷先生、私の後輩がアルバイト希望なんですけど、面接してあげてくれません?」
アルバイトの田中さおりがそう言ったのは、調度最終の授業が終わった頃だった。塾長の長谷誠は、老眼鏡をかけ直してさおりの方を向く。
「いいですよ、大学はどこですか、志望科目は」
「私と同じK大です。英語志望ですが、中学受験を経験しているので、小学生は社会以外なら教えられるって言ってました。」
「塾で教えた経験は?」
「集団

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【短編】怖い話は聞きたくないの。

久しぶりに、電話をかける。
「生きてる?」
「生きてる生きてる。」
「よかった」
「勝手に殺さないで」
「でも不安だったから。昨日、ブログ更新してなかったし」
「見てるのかよー」
「見てるよー、何なのあの食レポはー」
「意識するとかけなくなるから言うなよー」
「その割には読んでくださいって拡散してましたよね?」
「そこに君は入ってない」
「oh...」
「…傷ついてるね」
「結構傷ついたわ」
「す

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【短編】貴方と一生。

貴方はさ、どうして、どうして私の話に付き合ってくれるの。
これからも、貴方が死なずに、ずっと私のそばにいてくれたらいいのに。
私が貴方と同じ時代に生まれることができたなら、と思う。
でも、多分、貴方と彼女さんには、勝てないから、またそれで泣いてしまうのだろう。
私の貴方はさ、貴方とは違う。
私のことを一番に考えてる。
でも、私から離れられないから、私の心を揺さぶることはできない。
貴方は私には見向

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【短編】君になら、全てを話せる。

誰かかふと、鼻歌を始めた。キーボードのカタカタという音と、帰り支度を始める音がカサカサ聞こえる中、マドカはディスプレイとにらめっこしていた。
行くかどうか迷っていた英会話は確実に行けない。残念なような、ホッとしたような。
今日は、スタバの新作だけ飲んで帰ろうかな〜♩
でもそのために定期券外に行くのもな〜。とケチケチ考える。
違うの、ケチじゃないの、もっと使いたいことにお金を使うために、セーブしてい

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【短編】先輩と、プールサイド。

【短編】先輩と、プールサイド。

先輩、今どこにいますか?
何をしてますか?
生きてますか?

とりあえず、生きていることにしておきますね。
先輩が居なくなってからも、部活は相変わらずです。
サボりや留学、遠征で、不在がちだった先輩なので、部活のみんなも、全然気にしてません。
顧問と先輩の担任以外。
連絡が取れなくても、「病欠」とかいろいろ言い訳つけて、周りにバレないようにしてますよ。
他の先生も、何にも知らないみたいですね。

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