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「懐かしさ」の正体と活かし方

久しぶりにnoteを書きます。
急に書きたい内容が出てきたというより、今自分が気になっているある言葉について整理することが目的です。

その言葉というのが「懐かしさ」という言葉です。
きっかけは今働いているAsobicaという会社で同年代での集まりが多いなと感じ始めたところがきっかけでした。

Asobicaは北海道から沖縄まで全国津々浦々にメンバーが在籍しているため、なかなか顔を合わせにくい組織ではある一方、ネットワークという複数の線で繋がりを生み出し、1人から他者への太い線が多分にあるなと感じています。

そのネットワークにおいて極めて結びつきが強いなと感じるものが、この「懐かしさ」というものでした。いわゆる同年代で生まれるエモさです。

最近休みの日に子供と玩具屋に足を運ぶことがすこぶる増えました。
子供が遊ぶものだけど、マーケティング対象は30代、40代だなと思うものが本当に多いなと感じます。
最近よく見るものだとベイブレードやミニ四駆の箱でしっかり作り込まれたトミカ(マグナムセイバーとか)。

ついつい買ってしまったりもしますよね。
極め付けだったのが、先日コンビニでこんなものを見かけました。

駄菓子屋に売ってたソフトグライダー

放課後毎日のように行っていた駄菓子屋で、その場で作って遊んでた記憶が、脳裏を駆け巡りました。(なんとかその時は買わずに済みましたが)

「懐かしさ」の正体やそこから得られるものやヒトにもたらす影響因子を調べてたくなってきた、という話です。


「懐かしさ」とは??

辞書で調べてみました。
※30年以上生きてて初めて調べたかもしれないです。

なつかし・い 【懐かしい】
1. 心がひかれて離れがたい
2. かつて慣れ親しんだ人や事物を思い出して、昔にもどったようで楽しい。
3. 引き寄せたいほどかわいい。いとおしい。
4. 衣服などがなじんで着ごこちがよい。

デジタル大辞線より

調べてみると勉強になりますね。「懐く」の形容詞化されたもので、はじめは慣れ親しみたいという意味合いが強かったところから、後世に進む中で言葉の意味や使い方が変化して、懐旧の意味を用いるようになったそうです。

現在の一般で使われる意味だと2が強いんですかね。
Z世代では「エモい」などが近しいワードなのではないでしょうか。

そしてこの「懐かしさ」を生み出す影響因子となっているようです。

  1. 対象となるモノやコトと現在の時間の乖離幅

  2. 印象深いエピソードがそこにあるか否か(人間の脳に備わる記憶のエピソード記憶にあたる)

  3. ネガティヴな状態である時に触れた瞬間

  4. 過去の繰り返しの経験(反復接触)

人が懐かしいと感じる理由はまだ解き明かされていないそうですが、どうやら、懐かしいと思い出す感情や過去を思い出すといったことは人間特有の能力のようです。

色々調べていくと勉強不足で私も知らなかったのですが、1.2年前から「ノスタルジアマーケティング」と言われるまさにこの「懐かしさ」という感情に焦点を当てたマーケティングがあるということで、更に調べてみました。

ノスタルジアマーケティングとは

「ノスタルジア」とは「懐かしさ」の英語意になります。よく「ノスタルジー(nostalgie)」と聞くものはフランス語らしいです。

この言葉を聞いた時にすぐに頭に浮かんだものが「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」でした。

あらすじはさておきですが、作中では昭和の時代に帰れるというテーマパークに大人がお金を使い、当時の玩具やサービスに触れていき、実際の街から大人が消えてしまうというストーリー。

あのテーマパークこそ、ノスタルジアマーケティングの最たる例だなと思いましたし、私はこの映画を観に行ったのが小学生で、今でも覚えていて、その日に車で映画館に連れて行ってもらった際、母親が駐車場で衝突事故を起こし、1人で観た記憶がこの映画を観るたびに思い出されます。(ここでも懐かしさを感じさせられました。先ほどの2に書いてあった強烈なエピソードがある故ですね。)

すでに20年以上経つ映画ですが、当時から本当に昭和を過ごした人は平成の時代で懐かしくなるのかなと考えてましたが、いざ令和になると平成をやたら懐かしくなるあたり、自分で再現性を感じられました。

と余談が過ぎましたが、ノスタルジアマーケティングには生活者の深層心理が深く影響しているそうです。

「involvement」という人は自らと関係が深いものなどに好意を抱きやすいという心理学でよく使われる考え方。この考えをうまく活用しているのが、ノスタルジアマーケティングでした。

また外的な要因も関与しており、商品やサービスが世の中に溢れかえっている中で、消費サイクルはおそらく短く、すぐに新しいものが生まれ、クイックに流行り廃りが移りゆく世界になってきています。
その中で「involvement」を感じる商品は、初めましての商品よりも既にタッチポイントが形成されていることや思い入れが強く作用し、購買に至りやすい。

冒頭に書いた4つの因子やドライバーにもあるように、ノスタルジアマーケティングの課題の一つは時間軸ではあるなと感じます。

その人にとって商品とのファーストタッチが遠ければ遠いほど、懐かしさ指数が高まるはずですし、購買に至りやすい。また万人受けが狙えるものには限りがあるのと、おそらくノスタルジアマーケティングではあまり狙えないのでは?とも感じました。

「懐かしさ」はポジティブを生む

ここでは3つ目4つ目に書いた点について書きたいと思います。

「懐かしさ」を感じるトリガーは「長い空白期間」と「反復接触」であると京都大学の研究機関の調査結果として出ているそうです。

「長い空白期間」というのは対象物と触れない期間がどれくらい長くなるのか。「反復接触」というのは、過去の繰り返しの経験(小学校の頃の通学路など)。これらを感じる瞬間に「懐かしい」が生まれやすくなります。

「懐かしさ」を感じる体験を通すことで生まれる感情は愛情や慕情のような好ましくも切ないもの。内側から広がる温かさやリラックス感覚を人に与えることが出来ます。

現代は忙しなく、情報過多な日常の中で生きる人が多い中、「懐かしさ」は、感情を安定させる効果を持っていると言えます。

また、「懐かしさ」をドライバーとし、人と共感し合うことやその商品に出会った瞬間に生まれる内側の感情から、幸福感や満足感のようなポジティブな感情を引き起こします。

ビジネスに「懐かしさ」を活かす

最後にこの感情をビジネスにどう活かせそうなのかの考察をしてみようと思います。

1. 未来に向かうためのジャンプ台

「懐かしむ」という一見過去を振り返る、思い出すような行為はネガティヴに受け取られることも少なくないだろう。過去に縋るとも受け取られます。

しかし、近年の研究では、「懐かしい」感覚は未来をプランニングしたりする行為と同じような脳の働きをしているということがわかってきているようです。
故に未来に向かう際に過去を振り返ったり、「懐かしい」と感じることでクリエイティビティを発火させる意味でも重要な行為であると言えます。

2. 心の休息力を与えるキッカケ

先ほども述べたように「懐かしさ」を感じる体験は身体の内側から温かさやリラックス効果を与えてくれます。

日々の忙しさやスピード感ある日常からの解放のキッカケになることは間違い無いですし、ただストレスを解消するだけでなく、心に余白を生み出す力もあるのではと思っています。

「懐かしい」と感じるものは、その当時に夢中になったものであることが多く、大人になったときに再度夢中になるケースは珍しくないです。
きっとそのとき日々の忙しさを忘れ、童心に帰し、幸福度を向上させるはすです。


3. 自分を奮い立たせる糧に

私もよく使っている手法の話ですが、仕事でハードシングスを経験している方の多くは、仕事で苦しい時期や機会があっても、乗り越えていくことが多分にあります。

それはもちろん経験値を含むケイパビリティによるものが一般的でありますが、現状の外側に挑む際、未知のことを行う際には、どうしても疑心暗鬼になりやすいです。
そんなときに、自分の過去にアクセスして、「あのときこんなしんどかったんだよなぁ」と懐かしんだりすることは、2で書いた心に余裕を生み出すことにも繋がるし、「あのしんどかった出来事に比べたら〜」と奮い立たせることも出来ます。

ネガティヴな状況の時に人は過去を懐かしむ癖があるが故、その論理を利用することで、自らをポジティブに変換して、前に進んでいくことができるのではと思っています。

この考えは組織にも同様のことが当てはまると思っています。所謂組織効力感を高めるための一手になりうるドメインでもあるなと感じました。


ここまで自分自身の日常の疑問「懐かしさ」をキーに色々書いてきたが、書いてみて感じる最終考察としては以下のようにまとめてみました。

  • 「懐かしさ」は前に進むためのアセットとなり得る。

  • 今しんどいと思うことは、人生という視点に立つと大したことではない。多くは笑い話に出来る。

  • 心に余白を生み出す力を有している。

  • 一つ一つの体験にストーリーがある中、より未来に懐かしいと感じられるかはその一つ一つを思い切れるか。つまり、今を本気で生きることこそ重要。

最後に

たまたまこの内容をまとめていた翌日に「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」を読んだときに、「心の余裕」という話がありました。ウェルビーイングという言葉が拡まるくらいに、人と仕事の距離感や関係性は、尽きないテーマでもあります。

「懐かしさ」一つで解決の糸口があるとまでは捉えていないですし、調べてみて万能さは有していないと思っていますが、ここまで書いてきたように、「懐かしい」から生まれるエネルギーの存在やそもそもが人にもたらす影響は、人に活力を与えるものであると考察いたしました。

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