今年読んだ好きな読み切り(ジャンプラは除く)

後から見返す用に、今年読んだ読切の中で特に好きなものをまとめてみました。
軽めの感想付き。
基本ジャンプばっか読んでるのでジャンプ系メインで他はTwitterで話題になっていたものが多いです。

ジャンプラは今年掲載した読み切りの数がイカレてるので別で書きます。

ネタバレの配慮とかは特にないです。


四季賞

『アポロ』シイザクヤ

初めて読んだときボロボロ泣いて、以降何度読んでもボロボロ泣ける大好きな漫画です。
女の子の焦燥感の見せ方、徐々に絆されていくリューク、そして完全にゾンビとなり悩みから解放された女の子との最後の会話……。
寂しくも暖かい、とても素敵な漫画でした。


『フィクション』スギムラ尚夜

サスペンスですね。
最初読んだときは時間軸の変わり方にちょっと混乱してましたが、ラストのどんでん返しが最高でした。
後半に向けての盛り上がり方が凄まじくそちらに目を奪われがちですが、改めて読み返すと「これはそういうことだったのか……!」な演出が多くて楽しい。


『奏盤廻し』春琉渡璃

題材とその見せ方、特に旋盤加工の「音」に注目し、一見地味な作業をドラマに絡めて魅力的に見せていて衝撃でした。
この作者さんにしか描けない漫画ですね。こういうの好きです。


『修羅と華』岩橋月巳

世界を読者に見せるために必要なのは画力なんだなあと改めて思わせられた作品でした。
奇想天外なのに不思議なリアリティがあり、読み進めるほど世界に引き込まれます。
読者のための設定説明みたいなパートがないのも好きですが、こういう見せ方は良し悪しなんでしょうね。



ちばてつや賞

『四季の王』及川滲

私にはひとつ好きなセリフがあるとその漫画のことを好きになってしまうきらいがあります。
『四季の王』においてのそれは「春とはさいわいなものであってほしいのだ」というセリフです。


『インスタントミュージック』伊藤拓登

途中の等身大な悩み方と最後にたどり着いた割り切り方が好みで、読んでて気持ちのいい漫画でした。
一曲マシン製じゃない曲を入れてみて反応を見る。
なんかちょうどいいですよね。


『余白の世界』山原中

自分にはこの相方がなんだかすごいヒーローのようなものに見えて、
世界が広がったシーンがとても好きでした。
夢に固執するな、じゃなくて夢への道はいろいろあるよ、なのも好きです。
そして気付くタイトルの良さ。


『サウナしか俺を救わん』電気街

会長が会話に入ってきてからの不穏のオンパレードが楽しいんですよね。
漫画に振り回される。



ヤンジャンネームオンリー漫画賞

『明日の君が好き』柚子丸ニコ/保谷伸

ラストが寂しくて大好きです。
お話自体も面白いのですが、最後の夢の中で夏凛ちゃんと出会って名前を聞いてぎゅーってしていた、髪が長いままのもう一人の夏帆の心中を思うともう……。



月マガコミック大賞

『ダット・ダット・マインストリート』水見悠助

「落書きだらけの町に、自身が触れた絵を実体化させる女の子が来た」
「主人公の優しい絵は街の住人には笑われるけど、女の子が触れると優しい心の絵になって実体化される」
この設定が大好きです。
お話も丁寧でいいですよね。



モーニング月例賞

『青い星』ラライヤ佐藤

「宇宙に手紙を届ける箱が学校に」というきらきらした設定なのに、
どいつもこいつもロクな使い方をしなかったり、そう思ってたら逆に超真面目な手紙を送る子が出てきたり。
各々が好き勝手に生活して日々が過ぎていく雰囲気が好きです。



手塚賞

『ROBOT RONDO』西村隆生

ジャンプGIGA 2021 SUMMER

機械の中に唯一の人間である主人公が紛れて暮らしていてバレたらアウト。
この導入から読者の予想を裏切り続ける展開が面白い。
常識の変わるシーンを台詞で表現せず、絵力で見せてくるのも読みやすくて見事。
最後まで読んでから読み返すと「腹減ったから身体の動きが悪くなってきた」とか主人公がロボットだと思わせる台詞も出てるんですよね。



モーニングツー掲載

これ以降は漫画賞系ではないので、完成度が更に上がる印象です。

『キバタンのキーちゃん』シマ・シンヤ

めちゃくちゃ泣いた読切ですね。
お祖父ちゃんの咳をキーちゃんが覚えてたり、そういう細かいところがとても好きでした。



週刊少年ジャンプ掲載

『大東京鬼嫁伝』仲間只一

週刊少年ジャンプ2021年23号

絵が上手いですよねぇ。
可愛いのは前提として、扉を日本刀でこじ開けたり魚に変えられた時点で意識は消失していますだったり泣いてる妖怪のケツを全力で蹴り飛ばしてたり、要所要所のギャグのノリが好み。
ボイコミも良かったですね。


『Bad Tripper』踊場ゆう

週刊少年ジャンプ2021年25号

台詞のセンスが大好きな読切でした。
主人公のキャラ造形も好きだし作品全体の雰囲気も大好き。
特に殺人鬼と相対してる時の主人公の語りとラストの嫌味。最高。
これのボイコミも好きです。
ここまで全員が全員解釈一致を超えてくるボイコミはなかなかありません。
主人公の独白は色っぽいしお姉さんは可愛い。


『フレンチ・オブ・ザ・デッド』乾修太朗

週刊少年ジャンプ2021年38号

超絶優等生読切な印象。
新しい組み合わせの漫画でありつつ、ストレスなく超読みやすい。
ゾンビたちが料理に殺到するシーンも気持ちが良いんですよね。


『地獄のカンダタ』吉田B6

週刊少年ジャンプ2022年2号

流石に見飽きた退魔モノ、その中でこの読切が際立つのはギャグセンスと「魔」への真摯さが好みだったからでしょうか。
最初はノリが軽すぎる気もしましたが「魔は罪悪感が強いほど強いものが憑き、主人公はめちゃくちゃ重い罪悪感を抱えているからクソ強いやつが憑いている」という設定が出てからは逆にバランス良く感じました。
主人公が召喚する時の詠唱に後悔と謝罪のルビが振られてるのが大好きな演出です。


『タタラシドー』馬上鷹将/末永裕樹

週刊少年ジャンプ2021年27号

コントパートの間が好きです。
あのタイミングであの台詞叫ばれたら笑っちゃう自信があります。
結果は2位だったけど、お笑いするのが楽しくて見返すとかどうでもよくなっちゃったってオチも好きです。
爽やかですよね。



ジャンプSQ RISE

『knock off』小町さんぺい

ジャンプSQ RISE 2021 WINTER

RISE掲載作はどれもこれも絵が上手い。
なかでも構図とキャラデザが好みだったのがこの読切。
それだけではなく設定も良かったです。
魔女の「みんなの願いを叶えたいという願い」が99個の魔導具となり、善人悪人全ての願いを叶えた結果世界大戦が起こったという設定。
そして主人公は魔女の「全ての魔導具を壊したい」という願いを叶えるために生まれた唯一の生きる魔導具。
激熱ですね。SQ系ってこういう設定多い気がしますね。


『ラストラスト』ラットマン

ジャンプSQ RISE 2021 SUMMER

台詞回しと演出が一番好きだったのはこの漫画。
最後の2人の会話が特に好き。
「誰か犠牲にしてまで生きる気ないよ」の台詞1つで、現実に抗ってきたメアリーがもう生きることを諦めてしまっている現状の説得力が跳ね上がっていて大好きです。
その後煙を眺めながら想い出を辿り、見開きに泣くシーンを持ってくるのもズルい。


『銀河征服系アイドル☆はるぴ』吹野栄

ジャンプSQ RISE 2021 SPRING

骨太ファンタジー系統が強いRISEの中でこれはギャグ枠。
ギャグ枠ながら読ませる漫画でした。
地球を征服しに来た宇宙人がピコン星人を名乗るアイドル、はるぴにハマってオタクになったものの、やがてはるぴの人気が衰えるとともにピコン星なんて実在しないことを知ってしまいーーー?というもの。
設定自体はあるあるな気はしますが「ピコン星はあります」「無いよ?」のやり取りがツボでめちゃくちゃ好きでした。


『魔女と筺底の回収屋』春夏冬唯人

ジャンプSQ RISE 2021 AUTUMN

絵がうんまい。
魔女の作った玩具がそのあまりの威力に兵器扱いされている、までは割とよくある感じだと思うのですが、
この漫画で好きだったのは「玩具には正しい遊び方がある」という設定。
魔女は作った本人だから正しい遊び方がわかって、正しい遊び方をするとより強力な効果を発揮する。いいですね。


ジャンプGIGA

『グラビティ・フリー』石川理武

ジャンプGIGA 2021 SUMMER

主人公のアキラがめちゃくちゃ好きなんです。もう全セリフ格好いい。
無重力時の構図がどれもお洒落で、アキラとアシュリーの交流も好き。
窓が割れたシーンから一気に日常が壊れて切り替わるのもいいんですよね。
大好きな読切です。ボイコミも素敵。


『ルリドラゴン』眞藤雅興

ジャンプGIGA 2021 WINTER

久し振りに掲載されたと思ったら画風が180度変わっていたもののこれはこれでめちゃくちゃ好きだった読切です。
突然の不思議がゆるっと受け入れられていく空気感と、それはそれとして不思議なもんは不思議だよな温度感が好み。
お父さんとの会話とかいいですよね。
ルリドラゴンちゃんかわいい。


『スイァフリクサ』ぼく

ジャンプGIGA 2021 SUMMER

エバディセが懲罰牢に入り続けている理由と戦い方、神の造形のおぞましさがとても好みでした。
ホーが神に立ち向かう理由も、そこに至るまでの葛藤も素晴らしい。
そしてラストのバーで飲む二人。最高ですね。


『河童の幸乞い』DODOTAN

ジャンプGIGA 2021 SUMMER

ミノルにとって檻越しのコーラの行動はどうやっても「外に出たがる可哀想な河童」に見えてしまう。
コーラが人間のもとに帰ってくるという異常な行動により、檻越しではない同じ目線に立ったことでやっと伝わる。
誤魔化しのない心の繋ぎ方が大好きです。
そうは言っても、コーラとして檻の中にいるより一匹の河童として山の中にいる方が絵的にもやっぱり自然なんですよね。
それでもコーラにとって自然は暗くて寂しくて、檻の中に帰っていく。
自然であることが幸せであるとは限らない。大好きな漫画です。


『一矢報いて春から逃げる』泉博士

ジャンプGIGA 2021 SPRING

過去作から好きな泉博士先生の新作。
なんかわかんないけど刺さる漫画家さんってありますよね。
泉先生の漫画が好きなので全体的に好きですが、一矢報いてで特に好きなのは台詞回しでしょうか。
あとはキャラが生きてる感が好きです。いきいきとしてるというか。
感情がバグってるマリーさんとか好き。
ボイコミの声がぴったしでとても良いです。


『貴石』木本ミキ

ジャンプGIGA 2021 AUTUMN

自分の中の原石を大切にしたくなる気持ちにめちゃくちゃ共感してしまいました。
それだけではなく、主人公の心情の見せ方がとても好み。
「うらやましい」のコマの表情であったりラストに誰よりも前傾姿勢だったり。


『SAND STORM BOARDERS』乾修太朗

ジャンプGIGA 2021 WINTER

いきいきとしたキャラクター部門第一位。
敵も味方もどいつもこいつも愉快でいいんです。
特に好きなのは敵の船長。
「なんだよそれクソ面白ェじゃねェか」が大好き。
不敵な笑顔と相まって超ワクワクしてるのが伝わってきます。
見開きから視聴者に視点が移る演出もいいですよね。
これで盛り上がるなと言う方が酷です。


『金鍔夜行』覚丸源太

ジャンプGIGA 2021 AUTUMN

愛嬌ですね。
妖怪たちの愛嬌のあるキャラクター性が大好きです。
又又くん、優しい……。
可愛いだけじゃなく、悪い奴を地獄に落とすときはちゃんと怖いのも好きでした。


『殺っちゃん』蟹北小袖/早川洋太郎/おむたついこと

ジャンプGIGA 2021 WINTER

絵がはちゃめちゃに上手い!殺っちゃんかわいい。
それだけではなく細かい会話とギャグのセンスが大好きでした。
トイレ天丼いいですよね。
会話で特に好きなのは先生が自白剤飲ませられてからのやり取り。
「仕事人間だし変態矯正教官です」「知りたくなかった」好き。


『ブザーをならせ!!』槻滋ヨウ

ジャンプGIGA 2021 WINTER

受賞作からファンな槻滋ヨウ先生の2作目。
愛嬌のある会話がとても好きなのですが、今作はキャッキャッしてた不良が突如日常を壊し始めるところからの話の動かし方が良かったです。
そんな悲しみをぶち壊しに来るミケの「ブザーが鳴ってる」のコマが最高。
「ろくでもなかったよ!!」のミケの絶妙な表情もいいんですよね。



ジャンプショートフロンティア

ショートフロンティアはジャンプに毎週掲載されている15Pの読切企画です。
15Pで読切をやらせるのは割と正気の沙汰ではないと思いつつ、きっちり見せてくる漫画家さんもいて楽しみな枠です。


『無智との遭遇』屋宜知宏

15Pってやっぱり難しいのかなぁと思っていた時に掲載されて衝撃を受けた読切。
「こちらが敵対的な言葉しか使わなかったから宇宙人の語彙も攻撃的になってしまっただけでずっと助けようとしていた」という話が大好きです。
読み返すのも面白かった。15Pでもやれるものなんですね。


『きょうせいキノコ』百田稜助

丁度よく後味が悪くて好きです。
人の生命力吸ってる時点でもう共存は無理だけれど、それでも共存しようとしてた人達も地盤問題には気付かず「これで上手くいってるんだからいいじゃん」ってだけで、そういう人たちは爆破後もキノコ爆破によって生まれた穴に依存していい感じに生きている。


『品出しのゆうれい』仲畑りんたろう

コンパクトにまとまった怖い話。
ラストの気味悪さが好みでした。
幽霊が腕だけなのが好きですね。
本体が見えない分、主人公と競争してるときはちょっと可愛く、豹変して以降は恐ろしく見えてくるのが想像力を搔き立てられて良かったです。


『マゲルちゃんのおつかい』臼井彰一

少ないページの中で、マゲルちゃんの考え方とマゲルちゃんがなにに影響を受けなにを考えてピーマンを食べるに至ったかを丁寧に描ききっていて驚きました。
マゲルちゃんの魔法的なものの説明がないのもいいですね、それは話の主題じゃないし。
あとモノローグのセリフのセンスが大好きです。


『竜と檻人』紅木春

最初に読んだとき、下働きの少年という情報といろいろ雑用させられてそうな雰囲気から主人公は奴隷的な扱いを受けているものだと思っていました。
なので終盤で驚きと感動がありましたが、改めて読み返すと普通に待遇いいんですよね。
それでも、自分の境遇ゆえに周囲に心を開かず勝手に檻に閉じこもっていたのは主人公だった、という話の作りの見事さに感動した読切でした。


『すたーと・おーばー』吉野マト

ゆるっとした心温まるちょっと不思議漫画が好きなんですね。
この読切はその中でも主人公の台詞回しが好きでした。
センスのある台詞と言うよりナチュラルな台詞。


まとめ

こんだけ書いたら最後になんか文章がないと収まり悪いな、と思って用意した枠ですが特別言うこともないんですよね。
改めて今年読んだ読切を見返すと偏りがすごいですね。完全に集英社と講談社の犬です。
来年は他社もいろいろ読めるといいですね。小学館系を読みたい気持ちがあります。
画報社系を読みたい気持ちもありましたが、電子版の発売日がちょっと遅いんですよね。
そんな感じでゆるっと漫画を楽しんでいきたいですね。

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