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和紙×漆のコラボレーション新しい伝統技術の形-開発秘話-

山梨県の和紙メーカー大直の一瀬です。私は毎日使える和紙ブランド「SIWA | 紙和」を運営しています。 今回は漆を使ったシリーズの開発秘話についてお話いたします。

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2015年に開発したSIWA×URUSHIのシリーズをようやくSIWAオンラインショップで販売することになりましたので、開発秘話を改めて書くことにしました。開発に至った経緯や実際の開発中の話などをまとめました。

1:URUSHIを開発した理由
2:漆加工を開発するにあたっての苦難
3:コラボレーションデザイナーとの出会い

1:URUSHIを開発した理由
2008年からブランド開始をしたSIWAは、深澤直人さんをデザイナーに迎えシンプルでミニマムなデザインの商品を提案してきました。

販売を続けていくとお客様から柄ものの商品は出さないの?というお声が多くなってきました。その声をきっかけに柄のある商品を開発することになりました。
柄ものということは何かしらの技法を使って製品に柄をつけるのですが、素材であるナオロンは紙なので紙に印刷は当たり前の技法であるため、せっかく柄物を発表するならば最初は特別な印刷方法で製品を発表したいと思い、浮かんできたのが「漆」を使った柄付けでした。

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我々の会社のある山梨県には伝統工芸品として「印伝」という鹿皮に漆で柄をつける技法があります。その技術を使い、 SIWAならではの表現が出来ないか?と考えました。
伝統的な和紙を現代の形に変えているSIWA、「漆」も和紙同様伝統工芸的なイメージがあり、日常生活になかなか落とし込むのは、敷居が高いイメージがあります。
そんな和紙(SIWA)と漆(URUSHI)を掛け合わせることで、日常使える製品に出来たらという思いで開発を進めました。

2:漆加工を開発するにあたっての苦難
地元山梨には印伝のメーカーさんがいくつかあったので、当たり前のようにコラボレーションできるかと思い開発のお願いにいきました。
しかしながら、予想以上に難しい課題となりました。

本来、印伝の加工は素材にキョンという鹿の革を使い、漆をほどこしていく加工技術です。
通常の素材ではない、ナオロンという紙に漆をほどこす。という加工自体が全く新しい加工であったために、そのままのやり方では加工ができないということがわかりました。キョンの革の表面が持つざらざらとした突起があるからこそ、漆をキャッチして綺麗な柄を保つことはできるのだそうです。
山梨の印伝のメーカーさんにはこの理由で加工を断れてしまい途方にくれていたところ、奈良県に開発に協力してくれそうな加工メーカーさんがいるということで、望みを託しました。

その後、数ヶ月トライアンドエラーを繰り返し、驚異的な技法が生まれました。それは、ナオロンをキョンの表面のようにスクラッチして毛羽立たせることで漆を乗せる技法です。
信じられないことに柄の部分だけをスクラッチしてその箇所だけに漆を乗せるという解決法でした。
非常に手間のかかる工程でしたが、奈良の職人さんはその加工を引き受けてくれました。こうして加工ができるようになり次はデザインを決める工程に入ります。

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(⬆︎漆を剥がしてみるとその線の部分が白く削られているのが見てとれる。全体を漆を塗ることは出来るが、このような細かい柄をナオロンに乗せるのは、スクラッチしないとすぐに剥がれてしまう。)

3:コラボレーションデザイナーとの出会い
漆の新しい形を提案するためにどんな柄が良いのか?迷った結果、現代の生活品をデザインしている国内外のデザイナー3名にお願いすることにしました。

テキスタイルデザイナーの皆川明さんが作るブランドminä perhonenと、北欧フィンランドを代表するプロダクトデザイナー、ハッリ・コスキネン、同じくフィンランド出身でロンドンに拠点を置くデザイナー、クラウス・ハーパニエミ。この豪華な3名とのコラボレーションをすることになった。
皆川さんはSIWAのデザイナーの深澤直人さんからのご紹介でお会いすることが出来、フィンランドのハッリとクラウスは前からSIWAの素材、製品に興味を持っていただいていたので、何度かお会いする機会があった。

それぞれにコンセプトと、説明をしつつ
ハッリとクラウスには直接会うためにフィンランドとロンドンまで足を運んだ。

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(⬆︎2015年クラウスのロンドンにあるショップを訪ねた際)

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(⬆︎2018年その後ハッリが店舗に遊びにきてくれた際にサインをもらっているところ。)

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(⬆︎商品の前でも記念撮影)

海外デザイナーの2人は特に漆と和紙という素材に対してすごく興味を持っていて今までほとんど触れることのない素材に対してのデザインの出し方が非常に興味深かったです。それぞれの、柄の解説はまた別の記事でご説明しますのでお楽しみに^ - ^

ナオロンという特殊な和紙と奈良県の職人さんが丹精こめて仕上げた漆の加工。
日常使える製品に落とし込むことで、その素材の素晴らしさを身近に感じていただけたら嬉しいです。

今回のご紹介したコラボ企画の製品紹介はこちらです。



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