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グランゼル・ロートバイザー夢小説『ゼルに乗った僕』

僕はあいしう。
令和に生きるピーターパンみたいな男だ。

さて、皆さんは夢小説とは何かご存じかな。その文化に漬かって生きていないならそれは幸運なことだ。

ハッピーヒューマンだね!でもそれも今日で終わりだ。

ざっくり言えば自分がその作中のキャラである事を強引に投影してストーリーを描くヤツだ。
僕はヴァンガードをこれでもかと仲間内で遊んでいるのは皆知ってると思うんだけど、そこに登場するあるユニットにイラストだけで惹かれた事がある。

そう。タイトルにもなっているこいつ。


めっちゃかっこいいよね。
グランゼル・ロートバイザー。
これに文字通りライドしたら滅茶苦茶かっこいいと思うんだ。

というわけで、僕は居ても立っても居られずに…グランゼル・ロートバイザーに文字通りライドして戦う夢小説をしたためてしまった…というわけだ。

皆見たいって顔に書いてあるから、このピーターパンのあいしうは皆に見せてあげようって思って重い腰を上げたってぇワケだ。
皆の喜ぶ声が画面越しから伝わってくるよ!皆の笑顔が赤スパチャだ!引きつった笑みは青スパだ!

これは僕が新幹線の移動時間死ぬほど暇だったので書き留めた幻覚です。
これ見たことある僕の仲間は『ああ!あれかあ!』って顔をしてそっとしといてください。


☆ ☆ ☆


「メテオールビット(流星爆撃弾)リチャージ確認…
対近接用十徳ビームナイフ出力オールライト…よし!」
指差し呼称し「彼の体の中」の全点検を終わらせる。
ノヴァグラップルファイト集団「グランドスラム」のメカニックである俺っちの定期点検はグラップルファイトにとっては欠かせない業務の一つだ。

「終わったよ、ゼル」

グランゼルの身体のハッチを開けて、ぴょんと飛び降りる。
彼の戦い方が余りにも豪快さを求めるがために体にガタが来ている事以外は全て良好だ。

「フハハ、どうだこの吾輩の身体は!まだまだ全然やれるだろう!?」
「ああそうだな、手前の弾幕さえやめりゃあな!」
「それは戦うなと言っているようなものだぞ!?」
「必殺技『ミリアルデ・メテオール』はお前の身体の負荷もでけえんだって前に言わなかったか!?何度も何度もバカスカ打ちやがって!!」
「だがヌシもついさっき身体の中でオールライトって」
「お前が全く使わねえ武装だけだ旧世代AI野郎が!」
「それはヌシがアップデートせんからだろうが!」
「アプデ費用が手前の修理費で飛んでんだよポンコツ!!」

口喧嘩が始まった。

「やれやれ、まーた喧嘩かい?」
「コンパの姐さん!」

ヴァッサの身体から飛び降りたワーカロイドの女、コンパッショネート・メカニックが姿を見せる。
グランドスラムにとってこれは日常風景なのだ。
他のところは黙々とやってるところがあるだがメカニックとグラップラーの対話こそAIの活性化と唱えているグランドスラムの方針に従っているが故にこんな事が起きていたりするわけだ。

「高性能なAIにアップデートする金がありゃあなあ…コイツの戦い方が良くねえって何度も言ってるんだけど」
「これだからヒューマンは分かっていない!ギャラリーはアツく湧き上がるファイトを見に来ているのだぞ!?派手派手に魅せなくてどうする!」
「物には限度があるって話だ!」
「コンパの姐さんなら分かってくれるよな!?」

ゼルがコンパの姐さんに同意を求める。

「そうさなぁ…しうの字は、戦い方が良くないと言う。ゼルは派手にやって観客を沸かせるためにもバンバン武装を使うべきだという。
アタイとしては節約して勝ってファイトマニーをがっぽりもらってきてくれた方が嬉しいよ?でも、観客も盛り上げないと次に繋がらない…どっちを取るか難しいところだね」
「難しいのだからヒューマンのシウはAI搭載の吾輩に全て任せれば良いのだ」
「アプデ止まりの癖に…!」

また口喧嘩が始まる前にコンパの姐さんが名案を閃いたような顔をして二人に言う。

「それなら、アタイ思いついたよ!
しうの字!アンタ、ゼルにスカイライド(飛行搭乗)しなよ!」
「は!?スカイライド(飛行搭乗)!?」

スカイライド。
グラップラーに乗り込んで空中で戦うファイトスタイルだ。
しかしそれは空中墜落も同時に受ける事になり、命を落とす事に繋がる為酔狂なグラップラーでもなかなかそこまではやれない。
だが、スカイライドを極めれば本来の120%以上の性能を引き出す事も出来る、と一説では言われている。
しかし命を懸けてでも120%以上の性能を出したいか、と言われると…尻込みするものだ。

「アタイも法改定前(女性メカニック保護法)までは実はスカイライドでヤッてたんだ。アタイが直々に叩き込んでるしうの字なら出来るはずだよ」
「無理無理無理無理!」

カラスギペッパーの種をうっかり生で食べて三日三晩汗が止まらなかった時のような首の振り方をする。

「無理なもんかい!それにアンタ、散々ゼルには危険な目に合わせておいてメカニックだからって引っ込みっぱなしで許されるとでも思ってんのかい!?」
「いやだってゼルっすよ!?ヴァッサやエルデアなら兎も角、ゼルとだなんて!」

スカイライドとはグラップラーと一体化して戦う事なのだが、ゼルは何処までも派手さを求めるがためにフィールドギリギリの大気圏寸前まで、『わざと』飛び上がり、流星の如く派手に自分の身体を痛め付けてでも発射する。
こんなのに乗ってみろ、ファイトが終わる頃には俺っちはコンバインラッシャーに耕される為の肥料に変えられてしまう。

「やだやだやだやだ!」

だだをこねる俺っちを無理矢理捕まえるゼルとコンパの姐さん。
後ろを向けばコックピットのハッチが開いている。俺っちこんなの知らない。つけたこともない。コンパの姐さんがこっそりやったんだろう。

フッカフカのコックピットに乗せられ無理矢理ハッチを閉じられる。

その刹那、ゼルの顔の映像が俺っちの眼前に現れる。

「シウ!定期点検後すぐにチームマッスルプレイヤーとのマッチングがあるのを覚えているな!」
「お前まさか」
「そうだとも!吾輩とヌシの二人で戦うのだ!」
「テストフライ(試運転)無しでだと!?正気か!?」
「正気も正気だ!吾輩の高性能AIによると六割で勝てるとの事だ!」
「お前のAIでそれならダメじゃねえか!やだやだ!俺っち降りる!」
「まあまあそう言わずにレバーを握ってみるのだ」
「やだーーーーー!!」

だだをこねていたらば突如アナウンスが鳴り響く。
グラップルファイト開始のアナウンスだ。

『グラップルファイトが今宵も始まったァ!狂乱の戦いに魅入られたグール共、覚悟はいいか!?どちらが生きるかくたばるか!』

このアナウンサーは今日も今日とて観客を沸かせる。ここまで来てやっぱやめた、なんて言えるヤツが何処にいるというのだ。
ゼルもその一人だ。

「行くぞシウ!グラップルファイトー!」
「あーーーもう!!わかったよ!!」

こうも無理無理押し込まれてしまった以上、拒否権なんてない。緊急ハッチ開封ボタンと緊急脱出ボタンは何故かかけた事ないレベルのプロテクトがかけられており押しても何の反応もしない。
ゼルこの野郎!

自分の運命を呪って、グラップルファイト開始の狼煙をあげる。

「レディーーーー!ゴーーーー!!!!」

ゴーを待たずに急発射するゼル。顔がぐにゃる程のGが俺っちを襲う。

「コラァゼルてめえこの野郎!!中に俺がいるのを忘れてんじゃねえぞ!」
「フハハ!これで臆してはスカイライドなぞ出来んぞ!」
「だったらせめてG抑止ヘルメットは何処だよ!!!」
「邪魔だから売ったぞ」
「ゼルてめえこの野郎!!!!!!!」

コックピットを全力で蹴り付けるがびくともしない。コイツ俺っちを殺す気か。

ノヴァグラップルアリーナアーバンシティの舞台に降り立ち飛行モードで飛行している時、対戦相手から通信が入る。

「ギャハハ!!お前まさかスカイライドしてんのかよ!!!だっせえーーーー!!!!!!!」
「俺っちだってやりたくてやってるわけじゃねえよ!」
「コロコロコミックの読みすぎだろーー!!!お前ゼロ・テンドーを名乗れよ!!」
「俺っちはアインズバット・シウブレン!!アイ=シウだ!!漫画の主人公じゃねえ!」

早く終わらせるためにこのゴロツキみたいな煽り方をしてきたグラップラーを倒して、二度とグラップルファイト出来ない身体にしてやろうと思った。

「おいおい後ろがガラ空きだぜえ!?」

量産型アーミーペンギン『アミペーン』の口から凍てつく吐息が噴出する。
アミペンブリザードの急襲!俺っちとゼルの今の関係みたいに凍結しそうだ。
だがそれを食らってやるほどヒューマン好しじゃ、ない!

「舐めるな!メテオ・スラム・ブースト!ゴー!!」

メテオスラムブースト(他次元式噴出加速機)を発動させるべくレバーを引き、距離を引き離すとともに爆風でその吐息を溶かす!
メカニックを舐めるな、コックピット以外のゼルの身体を弄ったのは他でもない俺っちなのだから。 

「ゼル!十徳ビームナイフを出すぞ!」
「それ使い方分かんなかったぞ!?」
「お前それ俺っちが三番目にインストールしただろーが!」
「鬱陶しかったから消したが?」
「ゼルてめえこのクソポンコツ野郎!!!」

十徳ビームナイフをチャクラムのように振り回し、ビームのビットを飛ばす。まずはこれで距離を離す。

「なるほどそう使うのか!うむ!吾輩覚えたぞ!」

道理で実装してからずっと新品同様だったわけだ。
アーミーペンギンから距離を取り、穿つ長距離砲!

「メテオバスター!ゴー!」

横から見ればアイスキャンディーのようなビームがアミペーンを貫く!
…いや、貫いた、と思ったのだが。狙いが反れていたのだ。

それを理由づけるかのように、ゼルの腹部には斬撃跡がつけられていた。『斬られた』のだ。その斬撃の衝撃で狙いが外れたのだ。

「がはっ…」
それと同時に何故かこの俺っちにも痛みが迸る。

「大丈夫かシウ!?」
「何で俺っちにもダメージが」
腹を摩りながら状況を確認する。
痛覚共有システムがオンになっている。

やられた。バックドア(スカイライド察知式ウイルス)だ。

誰が仕込んだこんなの。定期点検で見つけられないレベルの小さなプログラムだ。本部で待機してるコンパの姐さんに通信を繋ぐ。

「姐さん!俺っちです!何故か痛覚共有システムがオンになってます!解除の為リモートアクションを!」
「…フフ、まだ気付かない?」

コンパの姐さんは不敵に笑う。いや違う…コンパの姐さんじゃ、ない!

ワーカロイド特有の顔を仮面を取り外すかのように姿を見せたのはワービーストの女。

「ミューナ!!!!!」
ブリッツ社の女狐が姿を見せた。
「グランドスラムはブリッツインダストリー社にとって天敵…なら、ここでメカニックが斃れるならグランドスラムも終わる…!」
「姐さんを何処にやった!!」
「コンパッショネートメカニック様はうちの会社に客人として招き入れて今優雅にお茶を飲んでもらってますの」
「姐さんを傷つけてみろ、グランドスラムが黙ってねえぞ」
「コンパッショネートメカニック様はうちに引き入れるつもりだから傷つけるような真似はしません。邪魔なのは貴方ですのよ、アインズバット・シウブレン。貴方さえいなくなれば」
「俺っちがなんだ!」
「語る事はありませんわ」

ばーい、と手を振って通信を切られる。
まずい。彼女の言う事が事実なら姐さんは今本部にいない、つまり増援のエルデアやヴァッサは期待出来ない。
思うに、これは伏兵が紛れている。一体で複数を相手にした上で勝って、コンパの姐さんを助けに行く。
そして痛覚共有の為無理をすれば自分の身も危険だ。共倒れになっては意味がない。
まずいまずいまずい。

「落ち着くのだ、シウ」

ゼルから叱りの声が入る。

「ゼル…」
「これは矮小なヒューマンのAIでも分かる事だが、吾輩達がやる事はただ一つ。まずはこの戦いを終わらせる事だ。それに集中したほうがいい」
「でも増援もねえんだぞ」
「ヌシが作り上げた最強の吾輩がこんな有象無象のゴロツキロボに負けるとでも?」
「…そうだった」

最強の吾輩。
このゼルは俺っちが「自分の強さを象徴する最強の自分」をイメージして作り上げたグラップラーだった。

そんなヤツと当たり前のように喧嘩をして、当たり前のようにポンコツを披露するもんだから…それを忘れていた。

「そうだ、そうだったな。
お前は俺っちの…
「ヌシは吾輩の…

『先導者(ヴァンガード)だったな!!!』

ー放て思考回路。
ゼルと俺っちの魂がシンクロする。

ー宿命が、僕らを呼んでいる。
絶必勝利の四文字の宿命が。

ー誰にも奪えない。
俺っちと俺っちの仲間が作り上げたグランドスラムは。

ー魂を重ねてる。
俺っちとゼルが共に宇宙に向かって爆音と共に飛び上がる。

ー差し込む光に手を伸ばす。
アーバンシティの場外ギリギリまで飛び…

ー手はまだ、残してるから
小手先の手を黙らせる奥の手を使う。

ー貴方といる明日を見たい
「ゼル、あれを使うぞ」

ーこのままじゃ終われない
「ヌシなら、そういうと思っていた!」

ー今すぐ…
『全砲!フルパージ!!!』

ー放て、その思考回路!
考える事はただ一つ。
アーバンシティごと吹き飛ばして、斬られた斬撃の正体ごと、破壊する!

ー続きはまだ、語れないイメージの中
そのイメージを現実の物にする!!

「行くぞゼル!」
「おう!」
「宇宙を貫く流星となれ!」
『ミリアルデ・メテオール!!』

ー宿命(勝利)が、僕らを呼んでいる。


ミリアルデメテオールでアーバンシティごと吹き飛ばした俺っちとゼルがフィールドに戻るとグランドスラム勝利の文字が、フィールドに浮かび上がる。
フィールドの残骸を見て分かったのだが、どうやらアーバンシティと同じカモフラージュ武装をして、前もってブリッツインダストリー社のスパイのミューナが自動型兵器『アルスコナーヘルト』を送り込んでいたようだ。
まあ最も、ミリアルデ・メテオールの出力には耐えられなかったようだが。

「ミリアルデ・メテオールはいい物だろう?」
ゼルが得意げに俺っちに話す。
「当たり前だ、俺っちが作ったんだからな」
「流石、吾輩の先導者だ」
本部に帰投し、ファイトマネーを受け取る手続きをして、コンパの姐さんをブリッツ社に迎えに行く。

連絡してみたらば本当にコンパの姐さんはお茶を楽しんでいたようで、丁重に扱われていたとのことだ。
ミューナを問い詰めようとヘルムージに聞いたがミューナはここしばらくブリッツ社に顔を出していないしグランドスラムをどうこうする話もなかった。
つまりはミューナ一人の独断だったわけだ。
何故そうなったのかはわからないままなのがどうにももやもやする。

もやもやはすれど俺っちにはわかる事は一つある。
このゼルと一緒なら、例えどんな強敵が現れたとしても、負けることなど有り得ないという事だ。
深夜、ゼルの体の中を再メンテナンスをして痛覚共有システムを取り除く作業を延々としつつそんな事を思っていた。
でもそれはそれとしてスカイライドは余程の事が無ければもうやりたくないが。

☆ ☆ ☆

令和のピーターパンがお送りした夢小説はどうだったかな?
設定が公式となんか違うとか、しれっとお前いいとこのポジになるなだとか、そういう罵声が聞こえてくる気がけどきっと皆照れ屋さんなんだね。わかるよ。
でも人って時としてタガが外れて好き勝手に文章書いてる時がいっちゃん楽しいからな。
皆もタガを外していっぱい夢小説を書くんじゃぞ!

描くんじゃぞ!!


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