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【リバース1999】はじまりの円について徹底考察&解説【第7章:孤独の歌】


今回は怒涛の激アツ展開だった第7章:孤独の歌を考察を交えて解説をしていきます。


まずは物語の重点となるアルカナが使っていたストーム免疫付与の呪文【はじまりの円】について解説をしていきます。

物語はマーカスがイゾルデの記憶から、ストーム免疫付与のスペルを引き出したところからはじまります。

その神秘術のスペルには人工言語であるエスペラント語が使われており『La unua cirklo』という発音で、『はじまりの円』という意味でした。
エニグマはエスペラント語を知らなかった、というよりかはこの世界では存在しなかったから理解できなかったようですが、財団の秘密組織である『鳩小屋』が解読に成功しました。

しかしながらこのスペルは口にすると肉体が崩壊するデメリットがあり、このスペルの解明が今回の章の焦点となりました。



ここから段階を踏んで解説するため、まずは復習としてアペイロン教団が考えていたエマネーション仮説について説明していきます。

アペイロン教団では『ストーム現象』を『エマネーション』と読んでいました。
『エマネーション』とは新プラトン主義のプロティノスによって提唱された仮説で、万物の根源(アルケー)である『一者』と呼ばれる神から“流出”した霊的なエネルギーが、物質世界や人を作っていると云う理論です。
哲学者達は、人は神から漏れ出した要素で創られているのであれば“人と神は同一”であると考え、真理の探求や魔術を用いることで“神に回帰できる”と信じておりました。

アペイロン教団ではアナクシマンドロスが提唱したアペイロンを信仰の対象にしておりましたが、アペイロンは新プラトン主義で信仰されていた一者と同じ『万物の根源』である『アルケー』なので役割的には同じになります。
教団のエマネーション仮説は新プラトン主義のエマネーションをベースにアナクシマンドロスの宇宙論を足した考えになっております。

とは言え結局のところ教団が想定していたエマネーション仮説は誤りで、ストームは無秩序的な現象(紊乱)であったというのが本質でした。

では何故、教団はストームを『エマネーション』であると考えたかというと、ストームがプネウマという全ての存在に宿る“霊的なエネルギー”が溢れ出る現象だったからストームは『エマネーション』であると考えたようです。

つまるところストームはエマネーションではなかったが、『プネウマの奔流』という点だけは正解だったという事です。

誤 教団の考え:ストーム=プネウマの奔流=エマネーション
正 アドラーの答え:ストーム=プネウマの奔流≠エマネーション


次に重要になるのがストームに含まれていた『非対称型ヌクレインR』という物質についてです。

『ヌクレイン』というのは『核酸 (nucleic acid)』の初期の名称で、“微生物を含む全ての生物に存在するDNAを形成する生体高分子”のことです。

この生体高分子は元々ストームの雨に含まれている物質とは知られており、ヴェルティが持ち帰ったヴェンデッタのマスクにも含まれていたことが5章の最初の時点で発覚しておりました。

5章の時点でヌクレインRについて把握していた情報は――
・ストームの雨に含まれている生体高分子(細菌?)
・ストーム症状の免疫効果を持っている可能性
・直ぐに霧散する不安定な物質
・教団の島の洞窟に在った聖遺物らしき物から発生していた

この情報を元にメディスンポケットは実地観測を行い、ストームが発生する24時間前からヌクレインRが大気中に存在している事を発見します。
アドラーはメディスンポケットと教団の情報を合わせ、ストームには原初神秘術を使うのに必要な膨大なエネルギー(プネウマ)と、耐性付与のための儀式触媒になる『ヌクレインR』がストーム内に全て揃っていることに気づきます。
そして残すはスペル(はじまりの円)の解明だけとなりました。


この段階でアドラーは発電機を例に神秘学家が原初神秘術を使える仮説を立てましたが、彼の発言をよりわかりやすくするためRPGで例えて解説していきます。

まず神秘学家をRPGのキャラだとして、神秘学家が持つ『グノーシス』という魔術回路を『キャラの最大MP値(マジックポイント)』とします。
そして『はじまりの円』という原初神秘術を呪文スキルだとすると、勿論スキルを使うのにMPが必要となります。

普通の神秘学家の最大MP値を50だと仮定して、原初神秘術の使用MP値が100だと考えると勿論スペルは発動できません。
それどころかMPが足りず詠唱した場合、肉体の破壊というデバフが付きます。

例外としてベルティとアルカナだけがデメリットなしで呪文を唱えることが出来ますが、二人共イレギュラー過ぎて参考にはなりません。


アドラーはこの解決策として、ストームの利用を提案します。
ストームは言ってしまえば世界規模の神秘術であるわけですから、術を実行するための膨大なMPを持っていると考えられます。
この膨大なMPがプネウマであり、アドラーはストームからプネウマを盗むことを提案しました。

そしてストームのプネウマを使って神秘学家の最大MP値を増大させることができれば、原初神秘術のMPコストを賄えると考えました。
ルーシーはXが作っていたヘルメットを用いて、ストームのプネウマを神秘学家のMPに変換する事が出来るのではないかと助言しました。
 
しかしながらこの案では人間は救えないという問題点が残ったままでした。

財団の方では進展が止まりますが、37がストームから免れる方法をアペイロンから教えてもらったことで自体は終息へ向かいます。

37は原初神秘術が『円』を象徴にしているというヒントから、アペイロンから聴いた音階をジョーンズ多項式に当て嵌めて解読します。

此処で用いられたジョーンズ多項式とは結び目理論の一つです。
化学の分野では“原素は円環構造になっており、幾つかの結び目がある”と仮定し、原素の可視化にこの理論が使われておりました。


そして重要な情報として結び目理論はDNAの研究にも用いられているということです。

ここで点と点が繋がります。

『非対称型ヌクレインR』がDNAであり、結び目理論はDNA研究で使われているわけなので、つまり37が導き出した円は『非対称型ヌクレインR』を可視化した物であると言えます。

この考察に関してはテキストでも言及していることから信憑性は極めて高いでしょう。

要約すると37が導き出した円は、原初神秘術であり、非対称型ヌクレインRを可視化したものでもあったわけです。

また重要な点として、結び目理論は並行世界説や時間逆行に用いられる『超弦理論』にも応用できるのではないかと考えられているため、ヌクレインRは時間逆行の謎を解く鍵にもなるかもしれません。


話を戻しますがこの円だけでストームからプネウマを奪い(MP)更にはグノーシスを持たない人間でさえも使えるという、一石二鳥のアイテムとなりました。
ただ問題点としてこの円が使えるのは膨大なエネルギーを持つストームの発生源の下だけで、発生源から遠く離れた所では効果を発揮することは不可能でした。

しかしながら改良を加えられた『平衡傘』が開発されたことで、今後はストーム発生源の反対の地でもストームを凌げることになりました。

こうして人間と神秘学家は数学と哲学、神学や生物学に言語学など多様な学術を用いることで、ストームの恐怖に打ち勝つことが出来ました。

最後に余談ですが、今回では『プネウマ』という言葉が多く出てきました。
『プネウマ』とは主に哲学で使われる言葉で『大いなる者の息吹』や『存在の原理』などの意味があります。
ストア派に於いては世界や人間はこの霊的なエネルギーによって構成されていると考えられ、命を動かす『火』と形容されました。

ルーシーやアドラーは自分達のことを、ゼウスから『火』を盗み人間に知識を齎したプロメテウスに例えていましたが、『火』を意味する『プネウマ』をストームという超越存在から盗んだアドラー達は、正しくプロメテウスのような義賊であったと讃えられるでしょう。


今回の考察は長くなりましたので一旦終わりにして、7章の考察の続きはまた別記にて解説します。

ここまでご覧くださってありがとうございました。

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