見出し画像

【リバース1999】第5章:洞窟の囚人&特別編:星のストーリー解説&考察

リバース1999の根幹のストーリーが明かされた激動の第5章を考察を加えて解説していきます。


その前に、今回の重点となる『ピタゴラス主義』や『流出説(Emanationism)』について解説をしていきます。
今回ベルティ達は『万物は数である』という『ピタゴラス主義』の思想を受け継いだ『アペイロン教団』という宗教団体と邂逅しました。
『ピタゴラス教団』とは錬金術などの知識を探求した『ヘルメス思想』や、輪廻転生の思想に重きを置いた『オルフェウス教』などの影響を強く受けた哲学者のピタゴラスによって設立された宗教組織です。

ピタゴラスは数学を用いて地動説のプロトタイプと言えるモデルを提唱しただけではなく、数字によって宇宙の本質を解けると信じていました。
しかし紀元前400年頃に暴徒に襲われ団体ごと消滅してしまいます。
その後、西暦3年頃にプロティノスが『プラトン主義』をベースにピタゴラス教団の思想を取り入れ、神秘主義に傾向した『新プラトン主義』を創ります。
そして創設者のプロティノス(≠プラトン)は、今回のストーリーと大きく関わってくる『流出説(Emanationism)』を提唱します。

『流出説(Emanationism)』はプラトンが提唱した”我々が感覚する世界は虚像である”というイデア論を元に発展していった理論の事を言います。

プロティノス曰く、ザ・ワンという超越的な存在から流出した『ヌース』から万物が成ったという仮説で、我々の物質世界は一番低次元の位置しているとされます。
そしてこの世界が生成される過程を『エマネーション』と言います。

新プラトン主義者達は精神を純粋なものに戻すため節制な生活を心がけ、神との同一化を目的としました。

劇中では37が『ストーム』の事を『エマネーション』と言っていましたが、おそらくは”物質的な猥雑な要素(肉体や俗世的なもの)を洗い流す現象”というニュアンスで使われているのだと考えました。

【第5章:洞窟の囚人】

では一通り要点は解説したので、ここからはストーリーの重要な要素を掻い摘んで解説していきます。

1913年12月25日頃(正史時間2007年)、ヴェルティ達は4年前にヴェンデッタ達が拠点にしていた場所へ調査に向かい、そこに『VERTIN』と刻まれた箱を見つけます。

中にはミス・ラジオが入っており彼女からエーゲ海に関連したラジオ放送が流れていました。
まるで”誰か”がここにヴェルティが来る事を把握しており、彼女をエーゲ海へと導いているように思えます。

ヴェルティは不信感を持ちつつも、レグルス達を連れてエーゲ海へと出発しました。
しかしながらゴルゴン海域で化け物に襲われ、彼女たちはエーゲ海のどこかの島に漂着します。
そこは財団と同じくストームの影響を受けない土地で、1999年から8年経った2007年の世界でした。

そこで出会ったのは『アペイロン教団』という『ピタゴラス教団』の思想を引き継いだ神秘思想団体でした。
彼らは人や物質を数字として”見える”という数字に魅入られた者たちでしたが、彼らの思想はプラトンが提唱した『イデア論』が元になっているようです。

プラトン曰く、魂の目で洞察すれば”物事の真の形(イデア)”は”幾何学的な図形”に見えると言うのですが、彼らは実際にイデアを”見る”ことが出来るようです。

ヴェルティは『ストーム』の情報を引き換えに島への着陸を認められます。
6と話し合いをするためにヴェルティとソネットは伝道会という集会に参加します。

そこではストームもとい『エマネーション』に関する研究報告がされており、210が「自分たちは真理を知る者で選ばれた存在だから、生の輪廻から脱却して上位の世界へといける」と言っておりましたが、ストームは彼らが言う現象界の歴史的事象に因果関係がある事から、誤っているというのがわかります。

その後、37の発表は簡素に終わりますが、その時アルカナの姿を見たソネットが咄嗟に詠唱をし、禁忌を破ってしまいました。

ソネットは自ら弁論しようと裁判に出向きますが、そこで行われたのは古代ギリシアの井戸端会議のような屁理屈の応酬でした。

彼らが裁判で話していた内容は、”すべての部品を取り替えた船は前の船と同じか”というテセウスの船の問題や、”アキレスと、少し前にいる亀がカケッコをした場合、アキレスは一生亀に追いつけない”という『アキレスと亀のパラドックス』のような不条理に思える問題定義をしあっていただけです。

傍からすれば屁理屈の応酬ですが、しかし如何なる疑問にも答えることが出来なければそれは”真理”とは言えません。

ヴェルティは瞬時にこれらのテクニックを理解し「ソネットはそもそも数字を持たないものであり”殿堂に存在していない”」と反論しますが、討論者に「ヴェルティも数字を持っていないのだから”殿堂に存在していない”。ならば殿堂での発言は全て無効」とカウンターを喰らいます。
しかしながら37が口を出し、ヴェルティの数字は『0』であると言いました。

『0』という数字は数秘術では本来人に当てはめることが出来ない数字であり、新プラトン主義やグノーシス主義に於いてはザ・ワン、つまり万物の根源を表す数字。
即ち彼らが信仰する『無限定者(アペイロン)』と等しい存在だということです。
(ちなみにアペイロンはキリスト教ではイエスと言われている)


唐突な発言で裁判は終わり、ヴェルティの言い分は37によって証明され減刑ですみました。

ヴェルティとアルカナは6に呼び出されて、プラトンの『洞窟の囚人の寓意』を聞かされます。
洞窟の中で鎖に縛られた者たちは火によって映し出された影を実物だと思い込むという話で、6は外の人間は洞窟の中の囚人と同じだと言いのけます。
しかし皮肉にも、外界を知らない彼がこの話を持ち出すのは今一説得力にかけます。

6は話を終えるとアルカナとヴェルティに余計な面倒を起こすなと言って、攻撃をすると代償を負う腕輪を双方につけるように言います。

ヴェルティとアルカナは暫しの間言葉をかわしますが、この時ヴェルティはアルカナに、ミス・ラジオが入った箱の事を尋ねますがアルカナは『知らない』ではなく『自分ではない』と回答しました。
裏を返せば箱の存在については知っているようにも思われます。

ひとまず問題が収めたヴェルティは、37の研究室へと向かいました。
そこで37の母親が作ったストームの計算モデルを目にします。
その計算モデルはかなり精度の高いものでしたが、ヴェルティは不備があると指摘します。
おそらく37もその母親である77も現象界を取るに足らないものだと切り捨てていた事で、計算モデルは完璧ではあらず、その結果77はストームに飲み込まれたのだと考えられます。
結局のところ、真理を探求する者が絶対で神聖な存在だと思っていた彼女たちこそが『洞窟の囚人』であったというわけです。

神聖なエマネーションが低次元の現象界での事象変動の影響を受けるはずがないと疑う37は、ヴェルティとレグルス達を連れて『無限定者(アペイロン)』の元へ連れていきます。

聖域に入ったレグルス達でしたが、彼女はそこで賢者の石に関連する聖書や記述を手にします。
しかしながらロマン主義者であるレグルスは簡単に”真理”を得ることを嫌い、出口へと引き返していきました。

この洞窟の正体については後ほど考察していきたいと思います。

レグルスと別れたヴェルティ達は『アペイロン(無限定者)』の元へ向かいます。

この領域は『新プラトン主義』に基づいて考えるのなら、全ての叡智が集まる天国を超えた場所と言われる『ハイパーウラニオンorプラトン領域』に当て嵌まるでしょう。

『ハイパーウラニオン』ではこの世の存在がありのままの姿、つまり『イデア』として見えるようで、この洞窟ではプラトンの言う通り『イデア』が幾何学的な図形として見えておりました。

ヴェルティは瞑想してエクスタシー(神との接触)に成功し、ザ・ワンへの回帰を遂げます(へノーシス)。

しかしながら腕輪の痛みを感じ瞑想は途切れてしまいました。

目を覚ますと、ヴェルティの眼の前には不可思議なオブジェクトがありました。

ヴェルティはこの石を『糸車』に似ていると言いましたが、スーツケースのものはギリシア神話に出てくる糸車で糸を紡ぐ『運命の三姉妹(モイラ)』が関係していると思われます。

であればこの石もギリシア神話関連のものかもしれません。

そもそもエーゲ海はギリシア神話とかなり強い関連性があり、例えばエーゲ海にはアポロンやアルテミスが誕生した島や、ゼウスが誕生した洞窟が存在します。
そしてエーゲ海には『オラクル』という神託を受けることが出来るという場所が幾つか存在しているとされます。
『オラクル』では洞察力を高めたり、未来予知を行えると言われております。

そしてヴェルティが目にしたオブジェクトは『オンパロス』と言う聖遺物だと思われます。
『オンパロス』はゼウスが世界の中心に置いた『世界のへそ』と言われているもので、『オラクル』に置かれた『オンパロス』を通じて人は神と交信できると言われております。
『オンパロス』は『オラクル』の毒の蒸気を通すため中が空洞になっており、網目模様が施されていると言われているのですが、これらの特徴はこの石と当て嵌まります。

つまりこの洞窟は神々から信託を受ける『オラクル』で、37達は『オラクル』経由で『プラトン領域』に入ったのだと思われます。
そしてこの土地がストームの影響を受けなかったのは神聖が高い『オラクル』と聖遺物の『オンパロス』の存在があったからだと思われます。


ヴェルティは霧の成分を採取し、この霧がストームの耐性を持っているに気付きますが、近くにいたヴェンデッタの教徒達に襲われます。

『平和の誓い』を立てていたの何故ベンデッタが一方的に攻撃できたのかを考えると、『アキレスと亀』のような不条理な屁理屈のテクニックを用いたと考えられます。

例えばアルカナの術にかかったヴェルティが攻撃の意志がないのにも関わらずシュナイダーを襲った時のように、教徒達もアルカナによって幻覚を見せられていたなら、『心神喪失状態』で攻撃の意志がない事が証明されると考えられます。

次の疑問としてマヌス・ヴェンデッタの『本質』と呼ばれ怪物が出てきましたが、プラトン主義に基づいて考えるなら、種子は『デュナミス(可能体)』花は『エンテレケイア(完成体)』を彷彿させますが、しかしそこからヴェンデッタの『歪んだ本質』を暴ける考察は出来ませんでした。

地上に戻ったヴェルティ達はリーリャ達と再開しますが、混乱はさらなる悪化を遂げていきます。
空からは戦闘機、海からは軍艦の襲来にあい、物語は幕を閉めます。

今後の展開を考えるに、1914/6/28に起こったサラエボ事件が関係してくるでしょ。
この事件はエーゲ海のバルカン半島で起こったハンガリー帝国の大公夫妻が暗殺された事件で、これがWW1の起因と成ったと言われております。

おそらくはヴェンデッタがストームを早めるために、人間の軍隊を使いWW1を早めようとしているのではないかと考えられます。

重要な点をまとめると――

・ストームは1999年から2007年の間に7回発生していた。
・37の母(77)が作ったストーム計算モデルに誤りがあったのは、現象界の事象を考慮していなかったため。
・アペイロン教団がストームを『エマネーション』と定義していたが、ストームは現象界の事象と連動しているため、ストームは彼らが考えのような神聖な現象ではないかもしれない。
・ストームの影響を受けない土地は、神話絡みの領域や聖遺物が関係している。
・第6章は1914年に起こったWW1が関係してくる?




【特別編:星】

最後に特別編の内容を簡略的に説明していきます。

特別編の内容をまとめると4回目のストーム以外、全てうまく当て嵌まります。
この調査内容は【グレコ・ホフマン】という女性によって綴られたもので、彼女の弟の【エニグマ】が報告書の半分を持っておりました。
ここで誰もが気になったと思いますが【グレコ】はシュナイダーの名字でもあります。
ホフマン達が1999年のストームを経験していると考えると、1929年にいたグレコ家の12姉妹、そのうちの誰かの孫かもしれません。
もしかするとヴェルティ達と出会わなかった正史世界のシュナイダーの話が聞けるかもしれません。

【特別編】の重要な点をまとめると――
・ストームで逆行した世界では過去の自分と出会わない。
┗親殺しのパラドックスのようなタイムスリップに於ける矛盾が発生しないように仕組まれている。

・正史世界では衰退していたはずの神話生物などが、逆行した世界では増えており正史時間と逆向時間では同じ年代であってもズレが生じている。

・グレコ家の子孫である【エニグマ】と【グレコ・ホフマン】がストーリーに大きく関わってくる。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?