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京都府2019年登録販売者過去問解説問71~80

問71 脳や神経系に関する記述の正誤について、正しい組み合わせはどれか。 

a 小児では、成人と比較して血液脳関門が発達しているため、循環血液中に移行した医薬品の成分が脳の組織に到達しにくい。

 b 脳の血管は末梢に比べて物質の透過に関する選択性が高く、タンパク質やイオン化した物質は血液中から脳の組織へ移行しにくい。

c 副交感神経の節後線維の末端から放出される主な神経伝達物質はアセチルコリンである。

d 交感神経系の活動が活発になると心拍数は増加に転じる。 

  a b c d 

1 正 誤 正 誤 

2 正 誤 誤 正 

3 誤 正 正 正

4 誤 正 誤 正 

5 誤 誤 正 正

正解:3   

a誤り

小児は、血液脳関門が未発達であるため、循環血液中に移行した医薬品の成分が成人と比較して脳の組織に達しやすいため誤り。

b正しい

脳の毛細血管が中枢神経の間質液環境を血液内の組成変動から保護するように働く機能を血液脳関門という(血液脳関門は医薬品の成分が脳に達しにくくしてくれる働きがある)

cとdの解説の前に交感神経と副交感神経について解説する。

呼吸や血液の循環等のように生命や身体機能の維持のため無意識に働いてる神経は自律神経系と呼ばれる。

自律神経系は、交感神経系と副交感神経系からなる

交感神経系と副交感神経系は、互いに拮きっ抗して働き、一方が活発になっているときには他方は活動を抑制して、効果器を制御している。

交感神経系は体が闘争や恐怖等の緊張状態に対応した態勢をとるように働く

副交感神経系は体が食事や休憩等の安息状態となるように働く。

交感神経系の末端から放出される神経伝達物質はノルアドレナリンと呼ばれる

アドレナリンがいっぱい放出され交感神経系の働きが強くなると効果器は下記のように作動する

効果器       交感神経系

 目         瞳孔散大

唾液腺    少量の粘性の高い唾液を分泌

心臓         心拍数増加

末梢血管     血管収縮すると血圧上昇

気管、気管支     拡張する

胃          血管が収縮する

腸           運動低下

肝臓        グリコーゲンの分解 

          (ブドウ糖の放出)

皮膚          立毛筋収縮 

 汗腺           発汗亢進 

膀胱       排尿筋の弛し緩(→排尿抑制)

次に副交感神経がの働きが活発になると下記のとおりになる

副交感神経の節後線維の末端から放出される神経伝達物質はアセチルコリン である。例外的に汗腺を支配する交感神経線維の末端では、アセチルコリンが伝達物質として放出される

効果器          交感神経系

目            瞳孔収縮

唾液腺         唾液分泌亢進

心臓          心拍数減少

抹消血管     血管拡張し血圧降下

気管、気管支        収縮

胃           胃液分泌亢進

腸             運動亢進

肝臓         グリコーゲンの合成

 膀胱       排尿筋の収縮(→排尿促進)

c正しい

そのとおりの記述。逆に交感神経系の末端から放出される神経伝達物質はノルアドレナリンと呼ばれる

d正しい

逆に副交感神経系の活動が活発になると心拍数は減少に転じる。 

問72 医薬品の吸収、分布、代謝、排泄せつに関する記述について、正しいものの組み合わせはどれか。

 a 一般的に、経口投与後に全身循環に移行する有効成分量は、消化管で吸収された量よりも、肝初回通過効果を受けた分だけ少なくなる。

 b 血漿タンパク質と結合して複合体を形成している有効成分は、薬物代謝酵素による代謝を受けやすい。 

c 肝機能が低下した人では医薬品を代謝する能力が低いため、正常な人に比べて効き目が過剰に現れたり、副作用を生じやすくなったりする。

 d 腎機能が低下した人では、正常の人よりも有効成分の尿中への排泄せつが遅れ、血中濃度が下がりにくい。

 a b c d 

1 誤 正 正 誤 

2 正 誤 正 正 

3 正 正 正 正 

4 正 誤 正 誤 

5 誤 正 誤 正

正解:2

a正しい

b誤り

bの選択肢は循環血液中に移行した有効成分の代謝と排泄の問題である

薬物代謝酵素による代謝はされないため誤り。


c正しい

d正しい

問73 全身的に現れる医薬品の副作用に関する記述について、正しいものの組み合わせはどれか。

aアナフィラキシーは、生体の異物に対する遅延型アレルギー反応の一種で、発症した後の進行は遅い

b偽アルドステロン症は、低カリウム血症を伴う高血圧症を示し、四肢の脱力や頭重感などが主な症状となる。

c医薬品の副作用として現れる皮膚粘膜眼症候群は、発症機序が判明しており、発症の予測が可能である

dステロイド性抗炎症薬により、細菌やウイルスの感染に対する抵抗力が弱くなり、易感染性をもたらすことがある。

1(a、b)2(a、c)3(b、d )

4(c、d)

正解:3

a誤り

生体異物に対する即時型のアレルギー反応の一種で

発症後の進行が非常に速やかであるため誤り。通常、2時間以内に急変することが特徴であり、直ちに救急救命処置が可能な医療機関を受診する必要がある

b正しい

正しい記述である。体内に塩分(ナトリウム)と水が貯留し、体からカリウムが失われることにより生じる病態である。副腎皮質からのアルドステロン分泌が増加していないにもかかわらずこのような状態となることから、偽アルドステロン症と呼ばれている。

c誤り

皮膚粘膜眼症候群(スティーブンス・ジョンソン症候群) は発症機序の詳細は不明であり、また、発症の可能性がある医薬品の種類も多いため、発症の予測は極めて困難であるため誤り。

皮膚粘膜眼症候群(スティーブンス・ジョンソン症候群)の知識

   皮膚粘膜眼症候群は、38℃以上の高熱を伴って、発疹しん・発赤、火傷様の水疱ほう等の激しい症状が比較的短時間のうちに全身の皮膚、口、眼等の粘膜に現れる病態で、最初に報告をした二人の医師の名前にちなんでスティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)とも呼ばれる。 発生頻度は、人口100万人当たり年間1~6人と報告されている。

d正しい

ステロイド性抗炎症薬や抗癌薬などは
医薬品の使用が原因で血液中の白血球(好中球)が減少し、細菌やウイルスの感染に対する抵抗力が弱くなって、突然の高熱、悪寒、喉の痛み、口内炎、倦けん怠感等の症状を呈することがある。

進行すると重症の細菌感染を繰り返し、致命的となることもある。

問74 一般用医薬品の副作用に関する記述の正誤について、正しい組み合わせはどれか。 

a 副作用は、医薬品服用時のアルコールの飲用が原因で起きる場合がある。

 b 医薬品は、十分注意して適正に使用された場合でも副作用を生じることがある。 

c 中毒性表皮壊死融解症は非常に発生頻度が高く、重篤な疾患であるため注意が必要である。 

d 厚生労働省が公表している「重篤副作用疾患別対応マニュアル」には、一般用医薬品によって発生する副作用については記載されていない。 

 a b c d 

1 正 正 正 誤 

2 正 正 誤 正 

3 正 正 誤 誤

4 誤 誤 正 誤 

5 誤 正 誤 正

正解:3

a正しい

b正しい

c誤り

中毒性表皮壊死融解症(TEN)は発生頻度は非常にまれのため誤り。

中毒性表皮壊死融解症は、38℃以上の高熱を伴って広範囲の皮膚に発赤が生じ、全身の10%以上に火傷様の水疱、皮膚の剥離、びらん等が認められ、かつ、口唇の発赤・びらん、眼の充血等の症状がでる病体である

最初に報告をした医師の名前にちなんでライエル症候群とも呼ばれる。

d誤り

重篤副作用疾患別対応マニュアルは一般用医薬品によって発生する副作用も含まれているため誤り。

問75 医薬品による肝機能障害に関する記述の正誤について、正しい組み合わせはどれか。 

a 医薬品の有効成分又はその代謝物による直接的肝毒性が原因の一つである。

 b 医薬品の有効成分に対する抗原抗体反応が原因の一つである。

 c 主な症状には、全身の倦けん怠感、黄疸だん等がある。

 d 軽度の場合、自覚症状がなく、健康診断等の血液検査(肝機能検査値の悪化)で初めて判明することが多い。

  a b c d

1 正 正 正 誤 

2 正 正 誤 正 

3 正 誤 正 正 

4 誤 正 正 正 

5 正 正 正 正

正解:5

すべて正しい

問76 外皮系に関する記述について、( )の中に入れるべき字句の正しい組み合わせはどれか。なお、2箇所の( a )内は、いずれも同じ字句が入る。  

( a )は、線維性のタンパク質である( b )でできた板状の細胞と、リン脂質の一種である( c )を主成分とする細胞間脂質で構成されており、皮膚のバリア機能を担っている。皮膚に物理的な刺激が繰り返されると( a )が肥厚して、たこやうおのめができる。

   a      b         c

 1 角質層   セラミド       ケラチン

 2 角質層   メラニン      ケラチン 

3 角質層   ケラチン      セラミド 

4 皮下脂肪層  セラミド     ケラチン 

5 皮下脂肪層  ケラチン     セラミド

正解:3

問77 医薬品による消化器系に現れる副作用に関する記述について、誤っているものはどれか。

1消化性潰瘍は、胃や十二指腸の粘膜組織が傷害されて、その一部が粘膜筋板を超えて欠損する状態である。

2イレウス様症状が悪化すると、腸内細菌の異常増殖によって全身状態の衰弱が急激に進行する可能性がある。

3坐剤の使用によって現れる一過性の症状に、肛門部の熱感等の刺激や排便直後の立ちくらみなどがある。

4小児や高齢者のほか、普段から便秘傾向にある人は、イレウス様症状の発症リスクが低い。

正解:4

4誤り

イレウス様症状(腸閉塞様症状)は小児や高齢者のほか、普段から便秘傾向のある人は、発症のリスクが高いため誤り。

イレウス様症状(腸閉塞様症状) は腸内容物の通過が阻害された状態をいう。腸管自体は閉塞していなくても、医薬品の作用によって腸管運動が麻痺して腸内容物の通過が妨げられると、激しい腹痛やガス排出(おなら)の停止、嘔おう吐、腹部膨満感を伴う著しい便秘が現れる。腹痛などの症状のために水分や食物の摂取が抑制され、嘔吐がない場合でも脱水状態となることがある。悪化すると、腸内容物の逆流による嘔おう吐が原因で脱水症状を呈したり、腸内細菌の異常増殖によって全身状態の衰弱が急激に進行する場合がある症状である。

問78 医薬品による泌尿器系に現れる副作用に関する記述の正誤について、正しい組み合わせはどれか。

 a 医薬品による腎障害により、尿量の減少、浮腫、倦けん怠感、発疹、嘔吐、発熱、血尿等の症状が現れることがある。 

b 膀胱炎様症状(頻尿、排尿時の疼痛(とうつう)、残尿感等)が現れたときは、原因と考えられる医薬品の使用を中止し、症状によっては医師の診療を受けるなどの対応が必要である。

 c ベラドンナ総アルカロイドが配合された鼻炎用内服薬の使用により、膀胱ぼうこう排尿筋の収縮が促進され、尿が出やすい等の症状が現れることがある。

 d 医薬品による排尿困難や尿閉は、前立腺肥大の基礎疾患がある男性に限られて現れる。

  a b c d 

1 正 誤 正 正

2 正 正 正 誤 

3 正 正 誤 誤

4 誤 正 誤 正 

5 誤 誤 正 正

正解:3

a正しい

b正しい

c誤り

ベラドンナ総アルカノイドは抗コリン成分で副交感神経系の機能を抑制する作用がある。膀胱の排尿筋の収縮が抑制され、尿が出にくい、尿が少ししか出ない、残尿感がある等の症状を生じることがあるため誤り。

進行すると、尿意があるのに尿が全く出なくなったり(尿閉)、下腹部が膨満して激しい痛みを感じるようになる。これらの症状は前立腺肥大等の基礎疾患がない人でも現れることが知られる


d誤り

男性に限らず女性においても報告されているため誤り。

問79 医薬品による呼吸器系に現れる副作用としての間質性肺炎に関する記述の正誤について、正しい組み合わせはどれか。 

a 間質性肺炎を発症すると、体内は低酸素状態となり、息切れ・息苦しさ等の呼吸困難、空咳せき(痰たんの出ない咳せき)、発熱等の症状を呈する。 

b 間質性肺炎の症状は、自然と回復することはない。

 c 間質性肺炎による息切れは、病態が進行すると平地歩行や家事等の軽労作時にも意識されるようになる。

 d 間質性肺炎が悪化すると、肺線維症に移行することがある。 

  a b c d 

1 誤 正 正 誤 

2 正 誤 正 正 

3 正 正 正 正

4 正 誤 正 誤 

5 誤 正 誤 正

正解:2

a正しい

b誤り

症状が一過性に現れ、自然と回復することもあるため誤り。ただし悪化することもあり肺線維症(肺が線維化を起こして硬くなる状態)に移行することがある。

c正しい

d正しい

問80 胃に関する記述の正誤について、正しい組み合わせはどれか。 

a 胃粘液には、胃液による消化作用から胃自体を保護する作用がある。

 b 胃腺から分泌されるペプシノーゲンは、胃酸によってペプトンとなる。 

c 胃内への分泌液の成分は、小腸におけるビタミンB12の吸収にも重要な役割を果たす。 

d 胃内容物の滞留時間は、炭水化物主体の食品の場合には比較的短く、脂質分の多い食品の場合には比較的長い。

  a b c d

1 正 正 正 誤 

2 正 正 誤 正 

3 正 誤 正 正 

4 誤 正 正 正 

5 正 正 正 正

正解:3

a正しい

b誤り

胃腺から分泌されるペプシノーゲンは胃酸によって
タンパク質を消化する酵素であるペプシンとなるため誤り。

タンパク質がペプシンによって半消化された状態をペプトンという


c正しい

d正しい

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