見出し画像

新生「ドクター・フー」の生みの親 ラッセル・T・デイビーズ

英国ドラマの大逆襲
洋泉社


ラッセル・T・デイビーズは1963年、ウェールズ生まれ。オックスフォード大を卒業後、劇場に職を得るが、 TV界で働くという希望を捨てられずBBC監督コースを受ける。その後、BBCウェールズのグラフィック部門を経て、子供向け番組の製作に携わり、中でも『Dark Season』 (5) はケイト・ウィンスレットが出演し、高い評価を受けた。
グラナダTVに移ったデイビーズは、次第に大人向けドラマの脚本を書くようになり、『捜査官クリーガン』第3話「悪魔のウェブサイト」(97)の脚本を担当。自らレッド・プロダクションを立ち上げ、ゲイが主人公のドラマ『モダン・ラブ(原題:Queer as Folk)』 (99)を製作。このドラマはチャンネル4で放映され大反響を巻き起こして空前の大ヒットとなった。
世界各国のレズビアン&ゲイ映画祭で上映、 アメリカでも放映されたが、放映禁止用語や、セックスシーンがカットされるなど改変されてしまう。そこで、アメリカのペイテレビ局・ショウタイムがリメイク権を獲得。アメリカ版「Queer as Folk』 は、 第5シーズンまで続くヒットシリーズになった。
このドラマの成功で一躍時の人となったデイビーズは、次に製作したゲイ男性とストレートの女性の恋愛を描いたドラマ 『Bob and Rose』
(01)で再び物議を醸す。 その後クリストファー・エクルストン主演の 『The Second Coming』(03)、デヴィッド・テナント主演『Casanova』 (05) などで高い評価を得ると、売れっ子脚本家となったデイビーズは、 こどもの頃からファンであった『ドクター・フー』を復活させることに取りかかる。
ドクター・フーの小説 「Damaged Goods」を出版し好評を得ると、BBCに新ドクター・フーの企画を持ち込んだのだ。かくして彼の長年の夢「ドクター・フー』は見事、2005年に復活を遂げたのである。
そのスピンオフである 『秘密諜報部 トーチウッド』と、『The Sarah Jane Adventures』にも脚本、製作総指揮として関わり、「ドクター・フー』 ワールドのクリエイターとして君臨している。
デイビーズはゲイであることをカミングアウトしており、作品もセクシュアリティに関したものが多い。中でも出世作 『モダン・ラブ』はその最たるもので、その反響は英国の法律(同性愛の性交渉を法的に認める年齢)を変えさせたと言われるほどだ。登場する主人公のひとりであるヴィンスは、デイビーズ自身を投影させたキャラクター。ドラマのクライマックスは、ヴィンスが自分の恋人に、歴代のドクター・フーを演じた俳優の名前を列挙させる場面である。
自らのセクシュアリティ、そして、『ドクター・フー』のファンであることを存分に発揮し産み出されたのが、バイセクシャル(オムニ・セクシャルともいう)の主人公、 キャプテン・ジャック・ハークネスが活躍する「トーチウッド』なのだ。

洋泉社MOOK 別冊映画秘宝
海外TVドラマ・マニアックス 英国ドラマの大逆襲
2009年1月発行
発行:洋泉社

追記

ラッセル・T・デイビースは2023年からドクター・フーの製作にカムバックしたようです。
最近作としては「2034 今そこにある危機」(2019)
「IT’S A SIN 哀しみの天使たち 」(2021)どちらも面白かった。
(スターチャンネルEXにて配信中)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?