ワイヤー・イン・ザ・ブラッドWire In The Blood
心理分析官対猟奇殺人犯の対決
スコットランド出身のミステリ作家、ヴァル・マクダーミドによる女性警部補「キャロル・ジョーダン・シリーズ」のドラマ化。
第1話となった "THE MERMAIDS SINGING"(邦題は「ワイヤー・イン・ザ・ブラッド」)は、英国推理作家協会最優秀長編賞、受賞作品である同名小説
「殺しの儀式」が原作となっている。シリーズタイトル "THE WIRE IN THE
BLOOD" は、 小説 「殺しの四重奏」から。しかし、「四重奏」の中身そのものは、第2話"Shadows Rising" (邦題「キリング・シャドー」)として製作・放映されている。
TVシリーズのほうはキャロル・ジョーダンよりむしろ、心理学者トニー・ヒ
ルの方が印象は強い。演じるのはロブソン・グリーン。『捜査官クリーガン』では、プロファイラーとしての能力は優れてはいるが、銃撃を受けたショックからなかなか立ち直れない捜査官を演じていた。
製作者サンドラ・ジョブリンが彼にマクダーミドの小説を読むように薦め、気に入ったロブソンは自分のコースタル・プロダクションズで製作することにしたのだ。猟奇殺人をプロファイリングで解決するという内容から 『羊たちの沈黙』を連想させるせいか、日本ではテレビ放映よりもまず先にDVDリリースが決定し、レンタル店での回転も頗る良かったようで、現在第4シリーズまで発売中。テレビはミステリチャンネルにて放映中である。
DVDのジャケットはホラー映画を思わせるかなりおどろおどろしいものだが、実際の描写もグロいシーンが多い。特に第1話「ワイヤー・イン・ブラッド」は、被害者は男性のみ、全員拷問され、殺されていて、最後に犯人の罠にかかるのはトニー・ヒル自身でなんと全裸で吊るされて拷問を受ける。彼のプロファイリングのやり方は、自分自身を犯人の心理に重ね、その心情をなぞるというもので、知らず知らずのうちに犯人に接近してしまい、
危険を冒すことになるのだ。
英国では現在第6シーズンが放映中。キャロル・ジョーダンを演じたハーマイオニー・ノリスは、残念ながら第3シーズンで降板。第4シーズンからはシモーヌ・ラビブ演じるアレックス・フィールディング警部補が登場、新たにトニーとコンビを組むことになる。
マクダーミドによる原作は現在4作まで邦訳出版されていて、第4作「殺しの仮面」(原題: THE TORMENT OF OTHERS) は第4シリーズの第2話 「ボ
イス」の原作となり、第3作 「殺しの迷路」(原題:THE LAST TEMPTATION)
は第6シリーズ第2話「Falls The Shadow」 としてドラマ化されているとい
う。原作は集英社文庫にて出版されている。
マクダーミドは特典映像のインタビューを見ると一瞬男性かと思うが、実は女性でレズビアンであることをカミングアウトしている。そのせいか、事件にはセクシュアリティが絡むものも多い。彼女はロブソン・グリーンこそトニー・ヒルだと明言しているので、今後も彼を想定してこのシリーズは執筆されるだろう。
TVシリーズは世界30ヶ国で放映され、アメリカでも人気は高く、シリーズ5と6の間に特別篇 「Prayer of the Bone」 が製作されている。ここではトニー・ヒルが招かれてアメリカに行くというストーリーで、撮影はアメリカ、 出演俳優もアメリカ人俳優で占められているそうだ。
そういえば「刑事コロンボ」 でもコロンボがロンドンに行く特別篇があったが、日本でも人気のあるこのシリーズ、いつかトニー・ヒルが日本に来るエピソードも見てみたいものだ。
「ワイヤー・イン・ザ・ブラッド Wire In The Blood」
英国放映 2002年11月14日~ITV
日本放映 ミステリチャンネル
英国テレビの大逆襲
洋泉社 MOOK
別冊映画秘宝 海外TVドラマ・マニアックス Vol3
岸川靖・編
2009年1月発行
発行:洋泉社
追記:2008年第6シーズンにて終了。トニーがテキサスに出向く特別編は「アナザークリムゾンの祈り」という邦題でDVD発売。
シーズン6は日本未発売。DVD化されたものはTUTAYA DISCASなどでレンタル可能。
2024年4月現在配信はされていない。
DVD化されたのは良いのだが、ジャケットがグロすぎて手にするのに勇気がいります。猟奇殺人を多く扱ってはいるがここまでグロくしなくても。
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