季刊DVDレビュー ドクターフー
これを観なくてどうする?
ヴィンテージ The 海外ドラマ
「ドクター・フー DVD-BOX」
子供から大人まで楽しめるカルトSFドラマの決定版!
イギリスのポップカルチャーを語る上で欠かせないもの、のひとつに「ドクター・フー」 がある。 なにしろイギリスでは1963年から26シリーズ 700話以上のエピソードがある
長寿ドラマなのだ。 特にSFファンにとっては「スター・トレック」と並ぶ人気作品である。 日本で言えば 「ウルトラマン」か 「仮面ライダー に近いだろうか? そもそもこのドラマは子供向けのSFドラマであった。 ドクターと名乗る主人公は宇宙からやってきたタイムロードといわれる種族で、 ターディスという一種のタイムマシンに乗って時空を超えて旅をしている。 彼は肉体が破損すると外見が変わるので、演じる俳優は歴代何人かいるが、 中身は同じという設定だ。 今回リリースされるのは9代目ドクターが登場する2005年製作のもの。
7代目ドクターのシリーズは1989年に終了。 その後1996年に8代目ドクターをポール・マグガンが演じたがこれはパイロットエピソードのみで中断。 今回はシリーズものとしては実に16年ぶりということになる。 ドクターを演じるのは 「日陰のふたり」 「心理探偵フィッツ」 などの個性派クリストファー・エクルストン。 彼自身子供の頃からのファンで、自らこの役を希望したという。
第1話で現代のロンドンにやってきたドクターはエイリアンの侵略から地球を救う中で、 19歳の少女ローズ (ビリー・パイパー)と出会う。 彼女は皮肉屋で北の訛りを持つドクターに惹かれ、 一緒にターディスに乗り込み時空を超えた旅に出るのだ。 「なんで宇宙人なのに北の訛があるのよ?」と問うローズに、 「宇宙にも北はあるだろ」 と返すドクターとの漫才のような掛け合いが可笑しい。 黒皮のジャケットを着た短髪の40歳の中年男性に見えるドクターだが、 本当の年齢は900歳! 宿敵ダーレクによって彼の種族は既に滅亡していて、不老不死だが天涯孤独のドクターには、地球の女の子ローズだけが友人だ。
TVドラマなので映画並みの派手な特撮はないが、それを補っているのがひねりの効いた脚本。 荒唐無稽ではあるが、意外とシリアスでリアル。 子供向けと思って侮ってはいけない。
第8話 「父の思い出」でローズは、 子供の頃死んだ父親に会いたいと過去にタイムトリップ。 目の前で父親が交通事故死する瞬間、 ローズはドクターに堅く禁じられていたのにも関わらず父を助けてしまう。 死ぬべき人間が存在することで生じた時空の乱れによって、 世界は滅びるしかない。 なすすべのないドクターを前にして、 ローズの父はある決断をする・・・。
第9話 「空っぽの少年」は第二次世界大戦下のロンドンが舞台。 町には空襲で孤児になった子供達があふれ、 死にきれない少年はゾンビになって不気味な “疫病” を撒き散らす。 どれも心に残る痛みのあるエピソードだ。 シリーズ終盤では、ローズが思いがけなく地球の未来を担う、 重要な存在だったことが明らかになる。
さてエクルストン演じる9代目ドクターは、今回リリースされる 『Series!」 で終了。 10代目は「ハリー・ポッターと「炎のゴブレット」のデイヴィッド・テナントで現在も放映中、DVDもリリース予定だ。 個人的には、エキセントリックなエクルストンが好みだが、 若返って生き生きとしたテナント版ドクターも魅力的。 第9話に登場したタイムトラベラーでバイセクシュアルの詐欺師キャプテン・ジャック (ジョン・バロウマン)は9代目ドクターとともに一旦姿を消す。 イギリスではこのジャックを主役にした 「Torchwood」 が放映され人気だ。 このスピンオフは大人向けのなかなか過激な内容なのでぜひ日本でも放映して欲しい。旧シリーズやスピンオフは微妙に交錯し同じキャラも登場する。 「ドクター・フー」の中でもしばしば謎の存在として登場するトーチウッド。 旧作含めた全シリーズを見届ければ、 その謎はやがて解かれるに違いない。 気の遠くなるような長い作品だが見れば見るほど嵌る。 「スター・トレック」同様、 世界中にマニアが存在するのも納得だ。
季刊DVDレビュー より転載
DVDBOXSET 発売:バップ
追記
この文章を書いたのち、シリーズは更新され現在も続行中。かくいう私はなかなか新作まで追いつけない。
現在はHulu、U-nextなど配信にて視聴可能。せめてマット・スミス版までは見届けたい。うーむ。先は長い!
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