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ワタシの感覚を見つける、シェアする鑑賞ツアー|インクルーシブな心地よさ

六本木アートナイトの「ワタシの感覚を見つける、シェアする鑑賞ツアー」に参加しました。とっても素敵な体験だったので、気づきや考えたことをまとめます。

鑑賞ツアー「ワタシの感覚を見つける、シェアする鑑賞ツアー」

感覚特性のあるファシリテーターと一緒にアートを巡るミライのお祭りに出かけませんか?作品の空気感や匂い、音、光など一人ひとりの感じ方や気になるものをシェアしながら鑑賞を楽しみましょう。

日時:9月29日(日曜日) 16時〜18時
会場:六本木アートナイト2024会場
対象:鑑賞会に関心のあるすべての人、感覚特性がある人など(定員10名程度)
※手話通訳あり

六本木アートナイト開催中!


「感覚特性」って聞いたことありますか?

たとえば・・・

「大きい音が苦手」
「電気がまぶしすぎる」
「特定の味やにおいが区別できない」

など、刺激に対して過剰に反応する「感覚過敏」や、逆に反応がにぶい「感覚鈍麻」があります。

感覚特性とは、個人が外界からの情報をどのように感じ、処理するかという脳の特性のことです。
視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚、前庭感覚(体のバランスや動きを感じる感覚)、固有受容感覚(体の位置や運動を感じる感覚)など、多様な感覚に対する反応が含まれます。

https://copelplus.copel.co.jp/column/2403_21/

今回の企画は、「アート鑑賞をとおして、個人個人の感じ方をシェアする」というもの。ファシリテーターは感覚特性を持った方。普通とは異なる感覚を持つ人の視点が加わることで、“違い"が多層的になりそうです。

あなたがリラックスできる感覚は?

十数人の参加者のうち、過半数が感覚特性や何らかの障がいを持った人でした。耳が不自由な方もいるので手話通訳つき。

はじめに自己紹介として、「自分がリラックスできる感覚」を順番に話します。みなさんの回答は・・・

⚫︎楽器を弾く
⚫︎水にふれる
⚫︎ごろごろする
⚫︎移動する
⚫︎狭いところでひとりになる
⚫︎犬をだっこする
⚫︎せせらぎを聞く

など、「わかる〜」というものもあれば「へー!」と意外に思うものも。さっそく感覚の違いが表れていて、おもしろい質問でした。

ちなみにわたしは「飼っている猫にさわって、あったかさを感じるとき」です。あなたはどうですか?

よく見たつもりでも、ひとりじゃ気づけないことがある

2グループに分かれて2作品を鑑賞し、感じたことなどをシェアします。五感に加えて「気持ち(どういう気持ちになった?)」「思考(何を考えた?)」などにも着目して作品を観ました。

まずはこちらの作品。

平山亮・平山匠《平山プロダクション》

わたしは「おもちゃ箱みたいでワクワクするな」「デコボコしてて手づくり感がある」なんてことを考えていました。

他の方の感想を聞いていたら、裏や上のほうにも要素があるとのこと。気づかなかった……! 1か所をじっくり見ようとしすぎて、視野が狭くなっていたのかもしれません。

裏から見たところ

作家の平山亮さんと平山匠さんは兄弟で、兄で障がいを持つ亮さんの絵や設定をもとに、弟で健常者の匠さんが立体をつくっているとのこと。お兄さんのイマジネーションを弟さんが具現化しているという、おふたりの関係性もぐっときますね。

続いてこちら。

ツァイ&ヨシカワ《豊穣の宝石 ‒ Reflection》

六本木アートナイト自体のテーマが「都市とアートとミライのお祭り」ということもあり、華やかでダイナミックな作品です。

またしても他の方に言われるまで気づかなかったのですが、台座に作品が映って反転していました。黒い台座なので「のぞきこむと宇宙みたい」とのこと。

「感情を表現したみたい」「かき氷みたいで甘そう」なんて感想も。2階にのぼって上から眺めたら、また印象が変わりました。ひとりだったら、ぱっと見て「派手だな〜」くらいで終わっていたかもしれません。

2階から見下ろしたところ

歴史とか理論とか忘れて、自由にアートと向きあおうよ

みなさんの感じ方を聞いていて思ったのは、「わたしも、もっと自由にアートと向きあおう」ということ。

わたしは美術史や芸術理論を学んだせいもあり、どうしても理屈っぽい見方をしがちです。作品の細部を見るより先にキャプションを読んでしまう。

文脈や背景を知ること自体は悪いことではなくて、作品に深み・重みを感じられるというメリットもあります。でも、「作者は何を考えていたのか」とか「美術品としてどういう価値があるのか」とかに気を取られると、

「自分はこの作品をどう思う?」
「どんな気持ちになった?」
「好き?きらい?」

という素直な感想がスルーされてしまいます。

このツアーで出会った方たちは、自分が思ったことや感じたことに真っすぐでした。そして、それを自分の言葉でシェアしてくれたし、ほかの人の言葉もしっかり受けとめてくれました。

みんなちがって、みんないい。感じ方の違いを楽しむ

想像にすぎないので、安易かもしれないのですが・・・

感覚特性や障がいを持っている人たちは、「自分と他人はちがう」ということに気づき受け入れるのが、普通より早いのではないでしょうか。

他人の感じ方なんてどうやったって共有できないし、がんばったってできないこともある。他人のことだけでなく、自分のことも受け入れて生きていくこと。それぞれの違いを楽しむこと。小学校で学んだはずの「みんなちがって、みんないい。」を、改めて考えていきたいと思いました。

私が両手をひろげても、
お空はちっとも飛べないが
飛べる小鳥は私のように、
地面を速くは走れない。

私がからだをゆすっても、
きれいな音は出ないけど、
あの鳴る鈴は私のように
たくさんな唄は知らないよ。

鈴と、小鳥と、それから私、
みんなちがって、みんないい。

金子みすゞ「わたしと小鳥と鈴すずと」


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