私を構成するソニックユース9枚。
ソニックユースはカッコいい
※今から話すことは個人の感想です。
ソニックユースはカッコいい。なにもかもカッコいい。カッコいいところを列挙してみようか。
まず名前。「ソニック」も「ユース」もかっこいいのにそれを合わせてしまった。カツカレーみたいなことだ。しかもその相乗効果たるや、もはやカツカレーを超えている。「音速の青春」ってカッコいい。
バンド名だけではなく、もはや人名もカッコいい。「サーストン・ムーア」とかめっちゃ口に出したい響きだ。「Thuston Moore」という字面も最高だ(ただの海外コンプレックスか?)。
「キム・ゴードン」も良い。紅一点なのに、ゴードンなんて超強そうだ。ライトマシンガンみたいだ。なんかの技名に採用されても良さそう。
「リー・ラナルド」も…これはそうでもないかも…
「スティーヴ・シェリー」もいい。シェリーってあの女性タレントじゃないの?って思う。っていうかシェリーはファミリーネームの方なのか!と改めて驚き。
ヴィジュアルも良い。絵になる。
…絵になるんだけど、なんかこれはホラー感がある。何でだろう。みのミュージックで出てきたソニックユースの写真がこれだったのでなんか違和感を覚えた。
もう一つ。
こういうショットが好き。アメリカン!って感じが好き。
あと、サーストンムーアの背の高さがカッコいい。背の高さって正義だもんね。彼は198cmあるらしい。日本人でそんな人いたら浮きまくると思う。さすがアメリカンだなあと思っていたが、どうやら彼自身も子供の時からデカすぎる自分を心配していたらしい。
アメリカの家もサーストンには小さかった。
(本当に余談だけど、僕も日本らしさというか庶民らしさ全開の木造建築に住んでいて、頻繁に鴨居に頭をぶつけてしまっていた。家では基本的に猫背で下を向いて歩けば解決だ。サーストンの気持ち分かるよ!)
彼の身長について調べていたら、とんでもなくニッチな内容の動画をYouTubeで発見した。「サーストンムーアはどれくらい背が高い?」ということらしい。比較対象のせいでサーストンの身長の凄さを霞ませている。
私を構成する9枚ってやってみたかったんすよ。
なんか一昔前にみんな「私を構成する9枚」ってハッシュタグをつけて、おしゃれにアルバムジャケットを画像編集で並べて晒してたじゃないですか?
あれいいなあって。音楽好きのコミュニティがあるって羨ましいなあって思ってたんですけど、その願望に近いものを今回やってみようと思います。
ソニックユース縛りで。
せっかくなので、好きな順にランキング形式で並べてみよう。
1.Daydream Nation(1988)
1988年。インディー期最後のアルバム。ローリングストーン誌、ビルボード誌、イギリスのQ誌、NME誌などで熱烈なレビューを獲得し、評価を確立したらしい。
カッコいい。ついて出る言葉は放たれて意味へ急ぐ。どれもこれもソニックユースがカッコいいということしか意味を成さないのだ(ほんとにどういう意味だ?)。
これはジャケットがカッコいい。これ絵画らしいっすよ。ぼくずっとただの蝋燭の接写だと思ってた。
ゆらゆらキラめくイントロで始まる、生命力みなぎる「Teen Age Riot」と、ジャケットの仄暗く灯る蝋燭とのイメージが抜群に合っていて素晴らしい。
そしてこのアルバムの曲は全部カッコいい。と思えるようになるのには多少時間がかかったけど。ちなみに一番最後にハマったのは「Rain King」だ。ハマってから聴き直すと、「こんな凶暴なサウンド好きにならないわけない」みたいに思いながら感心しているのだから、手のひら返しは人間の習性なのだと思う。
70分程度あるけど、身震いするほどカッコいいから問題なし!
2.Goo(1990)
1990年。メジャーでの初アルバム。
何回も言うことになるんだけど、ソニックユースのアルバムジャケットはカッコいい。絵になる。これはTシャツでも結構見る。
いわゆるオルタナ、グランジシーンとの関連性もあるので、洋ロック初心者に一番親近感が持てそうなのはこの辺だろう。ソースは僕。
この辺のノリが良い曲は結構みんな好きなんじゃないだろうか。「Kool Thing」とか特に。メジャー進出とだけ合って、いろんなフックがサービスされている気がする。とはいえ、変則チューニングでの独特なギターサウンド、音像の見えなくなりそうなノイズサウンドは健在。「Mildred Pierce」、「Scooter+Jinx」など、意味不明な曲もたくさんあって嬉しい。
一番好きなのはやっぱり冒頭の「Dirty Boots」だ。
3.Sister(1987)
1987年。『デイドリーム・ネイション』の前作にあたる。
それと比べると、比較的長くない曲が10曲入っている。コンパクトだけど音はやっぱり凶暴。
ソニックユースは大抵一曲目がベストトラックだ。「Schizophrenia」もその例に漏れない。ソニックユースの曲にしては珍しく、切ない情感がある。切なさマシマシサウンドだ。よく考えたら、ギターが全然歪んでない気がする。カラッと乾いている感じ。
その後の「Catholic Block」とそれ以降は、荒廃したサウンドスケープだ。
アルバム全体的に短くて締まってるので、『デイドリーム・ネイション』より聴きやすいと思われる。
このアルバムを聞いていて思うのは、ソニックユースはドラムだけめっちゃうまいなあってことだ。ギターとかは変則チューニングしてるのでそもそも上手い下手の価値判断の土俵から下りている感じもあるし、ベースも普通にテクらないんだけども、ドラムが安定していると、バンド全体がめっちゃ上手く聞こえる。このアルバムの「Stereo Sanctity」、「Pipeline/Kill Time」、「Tuff knarl」を聴いていてそう思った。
ちなみにボーナストラックの「Master-Dik」はソニックユース流ヒップホップ的なことらしく、このアルバムで一番奇妙だし、カオスだ。
4.Washing Machine(1995)
1995年。自身が先駆を成した感があると同時に、影響も受けたグランジシーンから明確に音楽性が乖離したのが聴き取れる。自殺してしまったカート・コバーンについて歌っていると思われる「Junkies Promise」は一番ロックらしさを感じるけど、それですら、性急な、急かすビートではなくなってきて、成熟期になってきた感じがする。
9分ある表題曲「Washing Machine」もなんだか分からない構成は独特すぎて好き。このアルバムのノイズは本当に洗濯機のグルグルみたい。
その後の「Unwind」も良い。こんな優しげなソニックユースなかなか無い。Tシャツ干したくなる。
ラストの「The Diamond Sea」は最高だ。19分あるんだけど、美しいよ!この曲だけでも聴いてほしい!
5.Dirty(1992)
1992年。グランジブームの真っただなか。ソニックユースもそこにリンクした。
一曲目の「100%」はソニックユースのその立ち位置を分かりやすく表明する簡潔な曲。
基本的には前アルバムの『Goo』と似ているが、こっちの方がパンク的、ハードコア的な性急さと分厚いギターべったりサウンドスケープがある気がする。
そんな中、「Sugar Kane」みたいなドラマチックな構成の曲もあって楽しい。
6.Experimental Jet Set, Trash and No Star(1994)
1994年。『Dirty』の次作になるが、この辺からグランジブームから距離を取るようになり(ちょうどカート・コバーンの死ともタイミングが同期している)、次作の『Washing Machine』に結実するわけだ。
とはいえこっちはまだまだロックの感触を残している曲が多い。だけど、かなり無骨になってきた。というか、より粗雑な感じ。普通にグランジを期待すると腰抜け感を食らってしまう。
「Starfield Road」は、やたらと冒頭のノイズが長いけど、ストレートなグランジかと思ったら、歌に入ってから特に盛り上がりもなく終わっちゃうし。
ギターのサウンドがかなり鈍い。前作は比較的鋭い音がする気がするのだけど、今作はその辺も意識して避けているのかもしれない。
周囲のムーヴメントから逃避しただけあって、パラエティは豊かになった。
一曲目の「Winner's Blues」はサーストンのアコースティックギターによる弾き語りだというのも、よく考えたら異質だ。
二曲目の「Bull In the Heather」は、ギターのブリッジの反対側を弾いた音や、ハーモニクス、ベースのスクラッチ音、マラカスを持ったドラムなど、奇怪なサウンドをうまく融合させた面白いシングル曲。シングルとして結構売れたらしい。
そういえば、Apple Musicではこの曲と「Tokyo Eye」って曲がツートップで人気らしいんだけど、これは罠だ。初見だと「はあ?意味わからん」ってなる用の曲なので。
最終曲「Sweet Shine」がこれまた、次作の布石のような仄暗く怪しい、優しい感じの曲なんだけど、この後の隠しトラックが一番面白い。
「イラッシャマセマンタンデスカ?イラッシャマセマンタンデスカ?」って日本語が聞こえて、日本人としてはファニーだ。
7.Evol(1986)
1986年。前作『Bad Moon Rising』でイギリスの方で少し注目され始め、今作からようやくドラマーがスティーヴ・シェリーになる。
とはいえまだまだインディー感満載。この次作になる『Sister』と比べると鋭いフックはない。けど土台がしっかりしてきたためか、聴きやすさはちゃんと出てきた。(前前作の『Confusion Is Next』とか冗談みたいに聴きにくいから…)
聴きにくくはないんどけど、冒頭の「Tom Violence」と「Shadow of a Doubt」とかなんとなくホラーチックだ。サウンドも歌詞もなんかなんか怖い。たぶん。
3曲目の「Star Power」はドラムも冴えてて普通に聴きやすいけど、ちゃっかり間奏がめちゃんこ長い。そういうとこも好き。
4曲目のリーの歌も、歌っていうか、早口の喋りと唐突な発狂みたいで怖い。やっぱホラー。この感じは、次作に収録されている「Pipeline/Kill Time」で綺麗に形になっている。
8.Murray Street(2002)
2002年。このアルバムはなんか独特な空気。全46分で7曲しか入ってないのも珍しい。
一曲目の「The Empty Page」がやたらと聞きやすい。珍しく歌メロが立っているし、曲展開も割と素直だし、ギターは普通に綺麗。
3曲目のリーの曲「Karen Revisited」は11分あって、前半3分以降はずっとノイズパート(といってもギターがそこまで歪んでるんけじゃない)。
やっぱり聞きやすくはなかった。
一番すげえのが4曲目の「Rain On Tin」だ。約8分のなか、歌は1分経たずに終わって後はずっとジャムってる。
なんかTelevisionの「Marquee Moon」みたいだと思った。もちろんソニックユースの方は技巧的なギターソロなんかやらないわけだけど、一体感といい演奏だけで盛り上がっていく感じといい、通じるものがある。意識高そうなあたりも。
最後は「Sympathy For the Strawberry」だ。ローリングストーンズの「悪魔を憐れむ歌」ならぬ、「イチゴを憐れむ歌」だ。かわいい。
9.Sonic Youth(1982)
ソニックユースのデビューアルバム(EP)。5曲だけ。再発以降はボーナストラックいっぱいついてるけど。
本当になんだこれ!?狂気全振りのトーキングヘッズみたいなことだろうか。
wikipediaとかによると、唯一スタンダードチューニングを使っているアルバムらしい。普通のチューニングをしてもソニックユースの手にかかれば意味不明な音になってしまう。
あと、チューニングの話よりもギターが全く歪まないことにびっくり。
「The Burning Spear」は初めて聴く時には相当ビビると思う。電気ノコギリだかなんだかの轟音が挿入されているだけなのだが、こんなに怖いと思わなかった。というかその発想がすごい。
「I Dreamed I Dream」も全体的にヒリヒリして冷たい空気だ。Slintの『Spiderland』みたい。
「She Is Not Alone」とかは民族音楽っぽい打楽器の音が入ってる。ギターの単音も神経質な感じがする。やっぱトーキングヘッズじゃね?『Fear of Music』とか『Remain In Light』じゃね?
最後の「The Good and the Bad」はこれからのソニックユースの長大なノイズパートの原型みたいだ。
当時はNo-waveという潮流があったらしい。パンクのブーム以降、どんどん新たな音を取り入れて華やかになっていったのがNew-waveと呼ばれていき、それに対抗してアンダーグラウンドで訳わからないことやってたのがノーウェイヴ側という認識だ。
ソニックユースもノーウェイヴ側らしい。よく分からんけど。意味わからんくてもご愛嬌、ということか。
個人的には結構珍奇なサウンドが聴きたい気分の時はこれを聴く。掴みどころがないのがいい。
終わり
だいぶ長かったけど一応終わった。ソニックユースの歴史って長いし、いい作品多いしすげえなあ。
9枚もまともなアルバム出してるアーティストって少ないので、候補が有ればまたやってやろうと思っている。洋楽ではもう候補が見当たらないけど、邦楽ならキリンジとかミスチルとかスピッツあたりなら余裕そうだ。
そのストックが尽きたらネタ切れということで、諦めて、「私を構成する9枚」って記事を普通に書いているかもしれない。その時は「コイツネタ切れだなっ!」ってことで哀れんで、あわよくばビール共通券でも恵んでほしい。
ネタ切れを起こしても構わないという勢いで僕は「音速の青春」を駆け抜けたいと思う。インターネッツの海原の上で。
なんかかっこいい感じにまとまったテイで終わりにしよう。アディオス!
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