医療崩壊とは身体感染による危機のことだけではありません

私は阪神淡路大震災後の神戸にて、ある被災地域で整体屋さんをやっておりました。

定期的に来ていただいていた患者さんに、震災時、被災地中心部にある大病院の婦長さんをされていた方がいらっしゃいました。

はじめはあまりしゃべらない方だったのですが、定期的に通っていただくようになり、整体終了してからの時間に、だんだんと話をするようになりました。

そこで震災直後の病院の様子、そして医師・看護師の疲弊していく状況を生々しく伝えていただいたこともあります。さながら野戦病院だったということ。

本人は震災直後の状況による疲弊から回復できず、ある程度病院が落ち着いた後に耐え切れず病院を辞めてしまったそうです。そして、神戸に住みながらも震災に出来るだけ触れない生活をするよう気をつけていたそうです。

その後、その方に対し定期整体を行い、だんだんと身体が緩んできたことで心も緩んできたようで、整体後吐き出すように震災時のお話をお伝えいただけるようになり、傾聴カウンセリングのようになっていきました。

そして慰霊祭が近づいてきた時期「震災の日に慰霊祭がありますのでよろしかったら来てくださいね」と言いましたら「私は震災に触れたくないので、一度もそのようなものには行ったことがない」と言われました。

そして、慰霊祭後の次の整体にて、その方より「慰霊祭行きました。行ってよかったです」と言われました。その年の慰霊祭は七回忌。震災から丸6年でした。その方にとりましては、震災と向き合わざるを得ない慰霊祭出席まで、人生の転換や辛苦を経て、それだけの年数が必要だったのです。

新型コロナウイルスに関連して、病院そして医療従事者は本当に大変な状況になっていると思います。それは身体感染リスクが高まっている可能性のある場に飛び込んでいることでの不安。また感染危険者だと思われ、所縁の方々からいわれのない差別を受けている方もいると聞きます。

現在、感染治療入院ベット数の問題や、医療従事者が直接身体感染することによって隔離や病院閉鎖が起こることによる医療崩壊の危機が叫ばれています。これは緊急性の高い一時的な崩壊の危機です。

しかし、医療従事者の心理的不安が解消されないままでは今回のウイルスが終息に向かったとしても、医療従事者の心理ダメージによって、今後の日本医療がゆっくりとそして深く崩壊に向かっていく危機もあると感じます。

世界中全ての方が身体・心理ダメージを受けざるを得ない昨今ではありますが、まずは医療従事者への尊重と尊厳、感謝の意を持ち差別なく接していくこと。そこは大切に考えたいところです。そしてできれば聖域的に守るべき存在ではないかと認識しています。

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