見出し画像

まちがいさがし

小学校2年生の時のぼく。

その日は、日曜日。

前日の土曜日、
学校の行事で、
親子で近くの、
大きな公園で、
遊んだ。

ぼくは、
かあちゃんが、
来る訳でもなく、
お昼持ち込みだったので、
自分で握った、
具なしのにぎりめしを、
こそこそと急いで食べて、
一人で遠くポツリと座ってた。

遠目で、
家族同士で和気あいあいと、
楽しくお昼を楽しんでる、
集団をただ眺めて、

深くため息をついた。

そこに異様なひと組の、
家族集団が存在していた。

そこには、
学校でも仲が良い二家族と、
学校でもいつも、
一人でいるトモヤの家族が、
一緒にご飯を食べていた。

その様子をぼーと観察した。

すると明日、
子供達だけでこの公園に、
遊びに来ようと言う話を親達で、
進めてそうしようと決まっていた。

ん?
友達二人は仲良しだが、
トモヤとは、全然仲が良くない。

三人で遊びに行くのか?

へーこれで、
トモヤもいつも一人だったけど、
仲良くなればいいな…。

と遠目で見ながら思っていた…。

そんな昨日の出来事を、
ふと思い出し、
アイツら遊びに行ってるのか?

その公園に行ってみよう。

そこには、
ブランコに乗って、
泣いている、トモヤがいた。

仲良し二人はどこいった?

と話しかけた。
すると、

約束の時間、
わからなかったから、
この公園に来て待ってたんだ…。

とブランコを揺らしながら、
ボソっと言うトモヤ。

なんだよ、アイツらまだ来ないのか?

そう聞くと、トモヤは、
ブランコを止めて、

ううん…来たんだ…。
だけど…
二人ともぼくを見て、
無視してあっちに行ったよ…。

はぁ?なんだそれ?
昨日約束してたじゃん。
オレ聞いてたんだ、
お前たちが今日遊ぶ約束してるの。

そう聞くと、
トモヤは泣いて落ち込んで言った。

うん。
約束した…はずなんだけどな…
なんか…ぼくは…
その約束に入ってなかったのかも…。
だってあの二人は仲良いけど、
ぼくとは、仲良くないし… 

でもさ…朝早くから、
お母さんがすごく嬉しそうに、
ぼくを見送ってくれて…。

そう思ったら…帰れなくて…
ブランコでヒマつぶしてたんだ…。

トモヤは強くブランコをこいで、

バカだよね…勘違いしてさ…
ぼくなんか…仲間じゃないのに…
舞い上がって…こんな所にいてさ…。

ぼくはムカついた。

もちろんあの二人にだ。

トモヤ、お前は間違ってない!
オレは見てたからわかる。

トモヤも仲間になってた。

三人でこの公園に遊ぶって、
そう約束してたのちゃんと見てた!

おかしいのは、
あの二人だよ!

トモヤ、今から二人の所に行こう!
ちゃんと言おう!

トモヤはブランコから降りた。

すると、トモヤは怒って、
いいんだ!ほっといてくれ!
ただ勘違いしただけなんだ!
おかしいってわかってたのに…
こんな所にまで来てさ…。
ぼくが悪いんだ!

とつっぱねた。

ぼくは、ない頭で考え悩んだ…。
でもこれは、間違ってる。
あってはならない事だ。

トモヤが、
こんな仕打ちされて、
黙ってなんていられなかった。

ぼくはトモヤに、
わかった、お前ヒマなんだろ?
オレもヒマなんだ、一緒に遊ぼうぜ。

なーこの公園にいたって、
面白くないだろ?

お前の家に遊びに行ってもいい?

トモヤは、
しばらく、うつむいて、

うん…
ぼくの家でよかったら…遊ぼう。

さっそく、
トモヤの家に行った。

トモヤのお母さんに、

こんにちは、はじめまして、
どうしてもトモヤ君と遊びたくて、
他の友達とわかれて、遊びに来ました。

トモヤのお母さんは、
すごく驚いていた。

あら、ホントなの?
トモヤがお友達を連れてくるなんて、
初めてだから、びっくりしちゃった。
どうぞ、あがってちょうだい。

ぼくは、
ありがとうございます。
いつもトモヤ君は、
ひとりぼっちの、
ぼくと遊んでくれ、
ぼく…すごく嬉しかったんです。
おじゃまします!

と、トモヤの家に入る。
トモヤは一人部屋で、部屋には、
たくさんのオモチャや本があった。

トモヤ、すげーな!
なぁこれどうやって遊ぶの?

と、トモヤと楽しく遊んだ。

お昼ご飯もご馳走になった。

すると、
トモヤの家のチャイムが鳴った。

トモヤのお母さんが出ると、
あの二人とその親がやって来た。

トモヤと目で、
ヤバいなと合図し、聞き耳をたてた。

すると、
二人の親は、トモヤのお母さんに、
謝っていた。
二人の親は、
差し入れを持って、
あの公園に行ったのだそうだ。
そしたら、
トモヤがいない事に、
気付き問い詰めたら、
無視して、
二人で遊んでいたと、
聞いた。

それで、
二人を連れてトモヤの家に、
謝りに来たのだった。

トモヤのお母さんは、
状況が掴めないまま固まって、
トモヤを呼んだ。

トモヤはどうしよう…と
もじもじしていた。

どこが間違いで、
何が正解なのか。

まちがいさがしがはじまる。

ぼくは意を決して、
トモヤを置いて玄関に行く、

今度は二人とその親が、
状況が掴めない顔をしていた。

ぼくは、
頭を下げながら、

ごめんなさい!
ぼくが悪いんです!
実はトモヤくんは、
一人で公園にいたんです。
トモヤくんは、自分が間違ってた、
勘違いだったと自分を責めてました。
でも、ぼくはそれは違うと思いました。
二人の所に行ってもよかったかもですが、
ぼくが、無理矢理トモヤくんの家に、
行きたいって言ってここに来ました。
あの時、トモヤくんを二人の所に、
連れて行く事がどうしても、
間違いだって思ったんです。

だから…全部ぼくが悪いんです。

本当にすみませんでした!

とひたすら謝り倒した。

親達はお互いに目配せをし、

とりあえず…みんなで、
ごめんなさい、しましょう。

と言う事になり、
トモヤも出てきて、
みんなで、
ごめんなさい…
をして、その場は解散した。

私は家に帰って、

まちがいさがしを、
かあちゃんに相談した。

かあちゃんは、
うん、うん、と聞いてくれた。

かあちゃんは、まず…と前置きし、

その約束は親同士での約束だね?

当人同士での約束ではないんだね?

だから、仲良し二人は、
トモヤ君と約束したとは思ってないんだよ。

でも、もちろんトモヤ君は違ったよね?

時間もわからない中、公園に行ったのね。

あの二人は公園で、
無視をした訳ではなく、
ただ単純に二人で遊びに来てるつもり。

トモヤ君は、それを察して、
二人の所には行きたくないと思ったのかな?

んで、お前はトモヤ君が一人なのが、
かわいそうだと思ったんだろ?

だから、出来れば公園から、
トモヤ君を家に帰したかったんだろ?

トモヤ君のお母さんは、
三人の約束だと思って喜んでたんだね。

お前は、気を使い、
トモヤ君のお母さんに嘘を言ってしまった。

最後に公園に二人の親が来て、
トモヤ君の事を二人に聞いて、
事実を知ったんだね。

それで、申し訳ない気持ちで、
トモヤ君の家に謝りに来たんだ。

んで、お前がベラベラと、
訳のわからない事を話して、

まわりを混乱させちまった。

まぁ、最終的に、
みんなで謝っておしまいになったんだね。

一通り、こんな感じだろ?

お前は、
かあちゃんのこの話、
聞いててどう思った?

かあちゃんは、
答えを自分で考えろと言う。

うーんと、
まず…約束自体が親と子供で違ってた…。

そこから…まちがい!あった!

オイラが嘘を言ったせいで、
まわりに迷惑をかけてしまった…。

そこにも…まちがい…あった!

でも、結果、
そのまちがいさがしはしなかった…。

オイラ、間違った事しちゃってたかも…。

そう、かあちゃんに伝えた。

かあちゃんは、
うん。そうかもしれないね。

でも、嘘も方便って言葉があるんだよ。

お前の嘘は、
トモヤ君とトモヤ君のお母さんの為に、
ついた嘘だよね?

それは、優しさから出た嘘だろ?

かあちゃんだって、
お前が、仲間はずれになってたら、
悲しい。

けど、嘘をつかせてしまった事の、
方がもっと悲しいと思うよ。

トモヤ君は、お前がいてくれて、
嘘ついてくれて良かったんだ。

あの二人だって、親がきちんと、
叱ってくれたんだろ?

トモヤ君は…
お母さんや友達二人に、
約束の話をちゃんと聞かなかった事。

あの二人は…
トモヤ君の話も、
聞かずに勝手に二人で遊んでいた事。

お前は…
その中でどうにかしたくて、
嘘をついてしまった事。

みんな、それぞれ理由があって、
それで謝ったんだろ?

間違いや勘違いはよくある事だよ。

あたいなんて、勝手な解釈で、
よくケンカばかりするよ。

まちがいさがしなんて、
しなくていいんだ。

それは、お前が考える事じゃない。

あの二人とトモヤ君が考える事なんだ。

いい勉強になったじゃかいか。

世の中なんて、
まちがいさがし、ばかりだよ。

揚げ足を取られるし、
あら探しばかりされる。

それをして何になるんだい?

そんな事より、
相手のいい部分を探しな!

どんな嫌なヤツでも、
一つはいい所があるはずだ!

まちがいさがし、
じゃなくて、

いい所さがし、

していくんだよ!
そしたら、きっとうまくいく!
うん!そうだ!うまくいく!

かあちゃんの言い方は、
どこが自分に言い聞かせている、
そんな感じがした…。

次の日の月曜日。

あの二人はトモヤに、
仲間はずれにしてごめん。
と謝っていた。

トモヤも、
二人にちゃんと言えなくてごめん。
と謝っていた。

かあちゃんの言う通りだ。
三人の問題でちゃんと解決してた…。

まちがいさがしなんて、
しなくてもよかったんだ。

トモヤがぼくを呼んだ。


昨日はありがとう。
お母さんには、
ちゃんと正直に話したんだ。
お母さんも謝ってくれた。

だから…
これかも、また遊んでくれる?


ぼくは嬉しくなり、

トモヤ、何言ってんだよ!
オレたちもう仲良い友達だろ?
また、遊ぶに決まってるだろ?

トモヤ、お前は優しいし、
素直ないいヤツだな。
しかも思ってたより強いな。

お前のそう言う所、すげーと思う。

トモヤは照れていた。

トモヤ、昨日、
オレに話してくれて、ありがとうな。
じゃぁ、今度の日曜日遊ぼうぜ。
時間は10時だ!オレたちの約束だ!

これは、
間違いじゃないし、
勘違いでもないぞ。

何かあったら、オレに話してくれよ。
オレもトモヤに相談するからさ。
トモヤとは仲良くしたいからよ。

あと、
トモヤのお母さんに、
ご飯美味しかったって伝えといて。

そう言うと、

さっきまでの、
もじもじした、
トモヤはいなくなり、

堂々と、
うん!わかったよ!
お母さんのご飯は美味んだ!
今度の日曜日、
お母さんに頼んでまた作ってもらうよ!

と眩しいほどの笑顔で笑っていた。

かあちゃんの言葉の意味が、
少しわかった様に思えた。

まちがいさがしなんて、
してもなんにもならない。
余計に人間関係がこじれる。

いい所さがし、した方が、
もっとお互いが楽しく、
いい事が待っている。

なるほど…。

かあちゃんは、
やっぱりすげーな。

こうなる事、わかってたのかな。

早く日曜日にならないかな…。

トモヤのお母さんに、
料理教えてもらおうかな…。

そしたら、
かあちゃんがもっと喜んでくれる。

かあちゃんの笑顔が早く見たいな…。

どんな道徳の教科書の内容より、
この経験はすごく、勉強になった。

すごく考えたし、相手の気持ちや、
行動や言葉の必要性が理解できた。

かあちゃんは道徳の先生だな。

うん。
やっぱり…かあちゃんは世界一だ。

そして、つぎの日曜日の10時に、
トモヤの家に遊びに行った。

トモヤのお母さんは、
オムライスを作ってくれた。

さっそく、作り方を教えてもらった。

食材がちょっと高いから、
中はただの具なしの、
薄味のケチャップライス。

卵も一つしか使えなくて、
ぐちゃぐちゃになってしまった。

それを、
かあちゃんに食べてもらった。

かあちゃんは、
これは…なんだい?
なんて料理なんだい?
と出来上がった、
オムライスもどきを、
まじまじと見て、食べてくれた。

すると、
かあちゃんは笑顔で、
美味しいね、
お前の作る料理は、
本当に優しい味がして、
すごく美味しい。
お前は、すごいね。
かあちゃんは幸せ者だよ。
ありがとう。
かあちゃん嬉しいよ。

そうだったんだ…。

かあちゃんは、
ぼくのいい所を、
いつも言葉にして言ってくれてた。

だから、
嬉しくてもっと頑張ろうって、
もっと、
かあちゃんを喜ばせたいって、
思えるんだ。

かあちゃんは、
いい所探しがうまいな…。

ぼくは…単純だな…。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?