見出し画像

マルチストリートのエクスプロイトについて考えてみた(AKQゲームの2ストリート版での分析)

問題意識

エクスプロイトを考える時は、通常ソルバーのnodelockを使いますが、この機能はlockしたストリート以降は最適に行動するという特徴があります。(その後のストリートも落ちるカードごとに設定していけば、複数ストリートのnodelockはできますが、なかなか手間がかかります。)

これだと、フロップで間違えるけどターンやリバーは間違えない相手への戦略は分かるのですが、逆にターンやリバーで間違える相手の場合のフロップ戦略は分からない訳です。
そして実際には、リバーのベット/レイズはバリューに寄っている、またはそういう相手をエクスプロイトするためにリバーはエクスプロイトフォールドする、というような後ろのストリートでGTOから外れるような人もたくさんいるように感じるのです。

こういうソルバーで計算させるのが難しい時(マルチウェイとか)や仮説も明確でない時は一番単純なAKQで考えてみるのが有効です。

設定

設定は以前書いたターンとリバーの2ストリートのAKQモデルです。ベットサイズはターンリバーともにポットベットです。

簡単に結論をおさらいしておきます。
AQ側:バリュー:ブラフ比がターンは2:2.5,リバーは2:1です。
  (ストリートが増えるとブラフが増やせるというのがミソでしたね)
K側:ターンもリバーも50%コール
  (AQ側はストリートが増えるとブラフ比率増えますが、ディフェンス側はストリートが何個あろうがMDF通りの頻度でコールするだけです。)

この先の議論で使うのでもう少し補足すると、AQ側のQはターン時点でもリバー時点でもEV0です。(ターンもリバーもチェックとベットの混合になる。)
リバーに到達した時に、(相手がフォールド過多でなければ)QのEVが0というのが大事なポイントです。

エクスプロイトの目線として、今回はAQ側目線でGTOからはずれたKをエクスプロイトする事を考えます。
ここで考えるエクスプロイトのパターンとしては、ターンのコール頻度が適正/フォールド過多/コール過多の3パターンとリバーのコール頻度が適正/フォールド過多/コール過多の3パターンで3*3-1の8通りです。
(ターンとリバーが両方適正ならGTO通りなので1引いています)

分析と考察

以下AQ側の戦略の分析を進めて行きますが、相手の戦略によらずAは100%ベットするため、Qのベット頻度(ブラフ頻度)だけが論点です。

1.ターンのコール頻度が適正の場合
1.1.ターン適正→リバーフォールド過多
この場合はリバーでオーバーフォールドしてくれる事を見込んでターンもリバーも100%Qはベットします。

ターンでKが降りてくれた場合はEV+、ターンで降りてくれない場合もリバーでオーバーフォールドしてくれてEV+なので、ターン時点のEVが+です。

このパターンにおけるKはターンはGTO通りなのに、リバーがGTOから外れている事によってターンのQの戦略に影響を及ぼしています。
直観的にも、後ろのストリートでオーバーフォールド取れるなら、ブラフを打ち切りまくる、というのはそんなに違和感ないかなと思います。

1.2.ターン適正→リバーコール過多
Qはターン時点でブラフもチェックどちらでもよいです。(どちらもEV=0)。リバーはコール過多なのでブラフしない。

リバーでコール過多だとリバーではブラフしないべきですが、その場合もQのEVが0であるという事はGTOの時と同じです。ターンでの意思決定を考えると、50%で降ろせて50%でEV0になるので、この場合はベット時のEVは0になります。

リバーでフォールド過多の時はリバーで得できるという事実がターンの戦略に影響してましたが、リバーで相手がコール過多になってもブラフしなくなるだけでEVが変わるわけではないので、チェックとベットのEVが同じという結論な訳ですね。

リバーがズレてればターンにも影響するだろうと安易に考えてましたが、そんな事もなさそうです。

2.ターンのがフォールド過多(コール頻度少ない)の場合
2.1.ターンフォールド過多→リバー適正
ターンはQを100%ベット、リバーはチェックとベットどちらでもよい。(どちらもEV=0)
(リバーだけのゲームのGTOとしてはQはAの半分のベットですが、今回はエクスプロイト観点なので、)

ターンはオーバーフォールド取れるからブラフして、リバーは適正にコールしてくれるのでチェックとベットがEV同じというのは自然かと思います。

2.2.ターンフォールド過多→リバーフォールド過多
ターンもリバーも100%ベット。

これも割と自明かなと思います。

2.3.ターンフォールド過多→リバーコール過多
ターンはQを100%ベット、リバーはベットしない。

リバーでコール過多になろうが、EVが減る訳ではないのでターンの戦略には影響しないというのは1.2.と同じですね。

3.ターンがコール過多の場合
3.1.ターンコール過多→リバー適正
ターンはQをベットしない。リバーはチェックとベットどちらでもよい。(どちらもEV=0)
リバーは適正で特にターンに影響しないので、ターンがコール過多なら素直にブラフしない、という事です。

3.2.ターンコール過多→リバーコール過多
ターンもリバーもQはブラフしない。
コール過多ならブラフをしないという単純な結論です。

3.3.ターンコール過多→リバーフォールド過多
このパターンが一番難しいので最後に持ってきました。

これまでのパターンって特に難しい計算なく求められた訳ですが、このパターンはターンで損をしてもリバーで取り返す事ができるので、単純なロジックでアクションを決められないです。もっと言うと、リバーで取り返せるのかどうかは、ターンとリバーのコール頻度次第なわけです。
そこでターンのコール頻度をp、リバーのコール頻度をqとして、損益分析点を求める必要が出てきます。

色々計算すると、ターン時点でのQの損益分岐点は以下のようになります。
p+2q-6pq=0
左辺>0だとベット、左辺<0だとチェックです。

※計算する上ではターンEV>0になる条件でなく、ターンEV>チェックEV(>0)を求めないといけません。リバーがオーバーフォールドするので、ターンチェックしてリバーでベットするとEVがプラスになります。なので、ターンでベットする事が得になるにはそれよりも高いEVにならないといけません。

※多分合ってそうですが、もし間違いあれば一報ください。

この式見ても良く分からんと思うので、ベットすべき条件をグラフの概形を書いてみました。(色がついているところがターンでベットすべきところ)
元の前提がターンコール過多→リバーフォールド過多なので、見るべきは右下(p>0.5,q<0.5)だけです。
右に行くほどターンでコールする、下に行くほどリバーでフォールドする、という意味です。

キャプチャ7

これを見るとまずは、ターンでコール過多だとしてもリバーを見越してターンでベットする範囲が存在する事が分かります。(極端な条件として、ターンは絶対コール、リバーは絶対フォールドするケースを考えると、ターンでポットを膨らませてから降ろした方がよいので存在する事は自明ではあります。)

あと見て面白いのはリバーで3/4以上降りるのであればターンのコール頻度に寄らずブラフをターンとリバー打ち切れる、というところですかね。リバーでめちゃくちゃ降りるなら当然ターンでポット膨らませた方がいいので、そういった何らかの閾値があっても違和感はないかなと思います。

実戦的にはリバーでオーバーフォールド取れる事が見込めるなら多少ターンがコール過多でもブラフ打ち切れると言えるかもしれません。
(実際にはオーバーベット打つようなポラーvsコンデンスのような時でないなら微妙ですし、リバーのカードでEQが大きく変わるような時も話が変わってくるので、安易に実戦もそうとは言い切れないのは注意です。)

ただ使うにしても、こういった状況になるような相手やボードがそんなにあるかなーという気はします。リバーでダブルポットやトリプルポットのAIに対して降りすぎる人や、リバーがバリュー過多なフィールドでエクスプロイトフォールドする人に対しては多少ターンがコール過多だったしても打ち切れるという事は言えるかもしれません。ちゃんと大量のプレイヤーのボード種類別のデータを集めれば実際には結構見つかるとは思いますがなかなかデータを得るのが難しいところです。(スターズにて他人のハンド購入するのは違反)

最後にこの数字を覚えてもしょうがないですが、一応pとqの関係の数値も載せておきます。

画像2

まとめ

パターンが多いので表でまとめます。以下はQの戦略です。

キャプチャ8

かなり長く分析しましたが、前のストリートの戦略にどう影響を及ぼすかという論点については、右上の2つのセルがリバーの戦略によってターンの戦略が変わっているところです。(右上のケースはターンとリバーのコール頻度次第ではある)

リバーでフォールド過多である事はターンに影響するがリバーがコール過多である事はターンに影響しないという事は、考えると当たり前のようですが、この非対称性って今まであまり意識してなかったなと思います。ターンに影響しないというは当然AKQであるという前提が効いてますが、実戦としてもリバーでベットとチェックが混合になっている(ベットEV=チェックEV)のであれば、リバーでコール過多だとしてもブラフができない事でEVが変わる訳ではないので全然現実的でない分析でもないかなと思います。

そして、結構面倒な計算しないといけないかと思いきや、それは8パターンのうちの一つしかなかったというのもちょっと意外でした。(面倒すぎるので助かりました。)

この手の分析は意外とありそうでないと思ってやりましたがいかがでしたでしょうか。

気になる人は、ディフェンス目線の分析もやってみてると面白いかなと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?