読書感想#45 【下村寅太郎】「科学史の哲学」
数学は、数による世界の構想です。これは世界を抽象することに他なりません。数学の精神は抽象の精神なのです。
しかし抽象とはいっても、それはただ抽象的であるというのではありません。抽象は抽象化の努力の結晶なのです。故に単なる抽象的なものでは意味をなしません。数学でいう抽象は、意味のある抽象、即ち結果として獲得されたる抽象なのです。あらかじめ抽象として存在する抽象ではなく、積極的に形成される抽象、これが数学の抽象なのです。
そして抽象があらかじめ抽象として存在しないように、抽象