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イラスト集「りぼんのある風景」解説

こんにちは、川田はらいそです。
だいぶ時間経っちゃいましたがコミティア145、お疲れ様でした!

サークル参加もイラスト本制作も初めてでドキドキでしたが、たくさんの人に本を手に取ってもらえました。
本当に嬉しかったです。
ありがとうございました!

実は本の巻末にイラストの説明を入れたかったのですが、入稿〆切やページ数の問題があってダメでした。

だから今回はnoteでイラスト解説しようと思います。
解説というより、今後の作品制作のために今考えていることをちゃんとまとめておこうという感じです。自分のためでもある。

大した文章じゃないので気楽に読んでもらえたらと思います。


「こわい木~~」

「かわいくしちゃお~~☆」

まずは表紙に使った絵から。

キャラクターは『「枯れ木をかわいくデコレーションしちゃう妖精ダヨ~☆」という設定の下、夜な夜な木にリボンを巻き付けている人』です。
妖精はあくまで設定であり、実態は普通の人。

ファッションのポイントはバネ付ブーツ。
これでジャンプして木の高いところにも飾り付けができます。
星付きのかぶり物もワンピースもかわいい。
妖精さんでありたいために頑張っている……

背景の木のモデルはこれ。

山梨県某所の木

これはとってもお気に入りの木。幹がやたらウネウネボコボコしていて不気味です。
根元から2つに割れて、片方は地面を這うように伸びている。

確か「スモモの木」と聞いた気がするけど定かではない。忘れちゃった。

この写真では見えないけど、枝に古びたトラロープが絡まっているのもお気に入りポイント。イラストにも描き込んであります。

ついでに、江戸時代初期の障壁画・襖も参考にしました。デッカい樹木が描いてあるやつ。
参考というか、少しでもエッセンスを取り入れたいというか……

狩野山雪筆 老梅図襖
(画像引用:https://www.metmuseum.org/art/collection/search/44858)

今回は一例として山雪の老梅図襖を上げます。
激しい屈曲を繰り返しながら巨大な画面を埋める梅の老木。
たった1本の木で画面を完成させちゃうって最高にCOOLだよね……泣

こういった作品を知ってから、そこら辺に生えてる木のことも熱心に観察するようになりました。
木ってかっこいい。もっと上手く描けるようになりたいです。


「ひとやすみ〜」

高所でポヤポヤすると危ない。

ずっとずっと昔からある近所のボロボロの小屋です。住宅地の中に建っています。

幼い頃から毎日のように見ているので、地元の風景といえば最初に思い出すのはこの小屋と周辺の小さい畑、脇に生えている梅の木です。

デカめの台風が来たらいつでも崩れそうな様相。
崩れる前に描いておこうと思いました。


「おそうじサービスちゃん」

「お引き取りねがいます!」


「鉄線の内側は私のテリトリーだから入ってこないでね!!」の絵です。

このキャラは「お掃除屋さん」なので、侵入者は徹底的に排除します。
ホウキの柄でボコボコの滅多打ちです。

鉄線は有刺鉄線にしようと思ったけど描いている時間が無かった。

昔から「外からの干渉を一切受けない空間」が欲しいと思ってます。

人と関わる中で辛いことや悲しいことがあったらそこに避難して、心が落ち着くまで過ごしてからまた外に出ていきたい。

草原・砂漠・湖

これらは画像生成AIで出力した絵を見ながら「自力で描いた」絵です。

一時期画像生成AI(お絵描きばりぐっどくん)に超ハマって毎日大量に出力させてました。

本制作当初はお気に入りのAI絵をそのまま本に載せようと思っていたのですが、
「自分の手が一切加わっていないものをイラスト本に載せるのはちょっと違うんだよな……」という気持ちがありました。

ということで今回は、AI画像の複数枚から私がお気に入りの要素を抜き出して、新たに1枚のイラストを描きあげるという手段を取りました。

以下図解です。

こんな感じ。
(これは本の裏表紙に使いました)

ステキな作品が描けましたね。

AI作品の扱いって正直悩むし、使うことに後ろめたい気持ちも少しあります。
(出力時にサインらしき文字や、有料写真にかけてある透かしのようなものが現れてギョッとしたことがある。確実に誰かの作品を取り込んでいるじゃないか……泣)

でもアイデア出しにめっちゃ良いのも事実。
AI絵はシュールレアリスムの方面に強い。

今後も上手に付き合っていきたいです。


「廃果樹園」

「桃だよん」

イオンモール甲府昭和周辺の、とある場所を描きました。

元の写真はこれ

曇り空、遠くにぼんやり見える青い山、金属のポール、伐採された木々……良い風景ですね。
これらの好きな要素だけ抜粋、再構成して出来上がったイラストです。

きっと元は小規模な果樹園だったんだと思います。
採算が取れなくなったのか、後継者が見つからなかったのか。なんらかの理由で廃業したために木を切ってしまったのでしょう。
悲しいけどなんとも山梨県らしい風景と思います。


「私だけが知っている」

この絵の背景も廃果樹園の近くです。

物置き場。

工事現場で使うアイテムなどが雑多に置いてあります。

ブルーシートや砂利、雑草が描きたくて取り組んだけどめっちゃ大変だった。
構図が決まらなかったし、描き込み多いし、キャラのポーズもギリギリまで決まらず……いきなりすべてがバチっと決まって完成したときはとても嬉しかったです。

「誰も立ち寄らない場所にいたい」という気持ちで描きました。

ワンピースの赤色はカラーコーンの赤色です。
警告の色。


「お世話しなくちゃ」

「大変大変!!」

山梨県中央市のショッピングセンター、「オギノ リバーシティ店」にあったゲームコーナーの馬の遊具です。
一昨年に一時閉店したのち、規模を半分以上縮小して開店。
その過程でゲームコーナーは無くなりました。

さようなら

馴染みの場所は無くなっていく一方なので、絵や写真でできるだけ残しておきたいです。

キャラクターは牧場モチーフ。オーバーオールってかわいい。
餌はボールプールのボールです。


「お買い物」

「買い出しです!」

買い出しに行ってきたメイドの絵です。
買い出しメイドは以前にも描いたことがあるモチーフ。


3年くらい前の絵。
後ろの木の塀と看板群は絵を描いた後に
取り壊された。

生活感のあるメイドが好きです。

木は川沿いに生えていたものです。
背が高くて立派。
夏でも葉っぱが付いていなかった。
立ち枯れてるのかな?


「夏に着ぐるみはやめたほうがいい」

「暑い……」

本を作ると決めた前に描いた絵だからちょっと雰囲気が違う。

荒川の河川敷です。
犬の看板がかわいい。

このキャラは元は無表情でしたが、「夏場に着ぐるみを着て涼しい顔でいられる訳がない!」と思い、アチアチの顔にしました。
へばっててかわいい。

風景は写真に忠実に模写&トレース、遠景は写真合成で描きましたが……写真そっくりにすればいいって訳じゃないとわかりました。
良い気づきだったと思います。


「りぼんのある風景」

最後に載せた絵です。
これは入稿ギリギリまで悩んで、「疲れた!なんにもわからん!!」の状態になりました。大変だった。
本当はキャラクターも描いてたし、背景ももっと色々描いてマシマシだったんですけど、結局削りに削ってシンプルになりました。

この世のものではない風景を描きたかったです。

長谷川等伯筆 松林図屛風
(画像引用:https://www.tnm.jp/modules/r_collection/index.php?controller=dtl_img&size=L&colid=A10471&t=)

等伯のこの作品をイメージしながら書いてたんですけど、今見たら全然違いました。


全体について

絵を1枚ずつ解説しましたが、最後に全体を通して考えてたことを書きます。
もう文章を書くスタミナが無いので、大体で書きます。すみません……

【地元のこと_1】
この本のイラストは地元、山梨県甲府市の風景を元に描いた。
(と言いつつ甲府市以外の絵も半分くらいある。甲斐市とか中央市とか)

他の都市を訪れるたびに、「マジでウチの地元って何も無いのな……」とヘナヘナ崩れ落ちる気分になる。特に甲府駅周辺。
なんというか、火力がない。終わりかけの焚き火を眺めているよう。

この数年で規模が縮小したり、無くなったりしたものをたくさん見た。
特に大きな出来事といえば、県内2つの百貨店のうち、1つは閉店、もう1つは大幅な規模縮小……
県内最大規模の本屋(ジュンク堂)が撤退したのも最悪だった。
(これを書いている間に、甲府駅ビルに本屋が復活したらしい。でもジュンク堂の半分くらいの敷地面積じゃないかな)

体感では、ものごとの生まれるペースより無くなるペースの方が早い。
どうなってるんだ助けてくれ……

ふと気になって県の人口を調べたら全国ランキング全国41位(約79万人)らしい。

41位!?下から数えてそんなに早い!?

お隣の長野県は人口約200万人。静岡県は約350万人。
そんな違うか~~マジか~~、友達だと思ってたのに……
マンパワーが無いから火力も無いんかな……

山梨県はたぶんこのまま人口が減っていくし、馴染みの場所も無くなるだろう。
やるせない……

弱っていく地元を眺めているのも悲しいので、なるべく地元の姿は残しておきたいと思います。絵でも写真でも文章でもいい。
別に地元を盛り上げる気は無いし、めちゃくちゃにこき下ろそうとも思わない。嫌いだったら県外出てるし……

とにかく私が見たこと・感じたことを作品に落とし込めたらいいな~と思います。


【地元のこと_2】
illな灰色の町・甲府に染まってしまったせいで都会的な物になかなか馴染めない。

表参道や代官山に行くと洗練された空間に耐えられず体がモゾモゾしてくる。
下北沢や高円寺はたまに行くと楽しいけど、自分の居場所ではない気がする。
どうしても根っこが田舎者なんだよな、……

なんというか、文化やカルチャーを置き去りにした、ダサくて、もさくて、田舎くさいことをやりたい……
これらを研ぎ澄ませばめちゃくちゃCOOLになると思うから……


【地元のこと_3】
ceroの名盤、「Poly Life Multi Soul」を聴いてから川が好きになった。
山より川の方が心の原風景って感じがする。
私の帰る場所は住宅地を流れる荒川だな~~


【絵のこと】
・黒ベタが効果的に使われている漫画を見ると思わず魅入ってしまう。
黒色をかっこよく使えるようになりたい。

・シュールレアリスムけっこう好き。
山梨県立美術館で米倉壽仁展を観てからシュールレアリスムをちょっと意識するようになった。
唐突なパッチワークとぬめっとした描写からなる気味悪さを私もやりた〜〜い。


おわり

疲れた!終わり終わり終わり!!!
長文書くの慣れてないから大変!!
でも書きたいことはだいたい書けたと思います。よかった。

次に出る2月のコミティア147に向けて、やりたいことたくさんあります!
次はもっとたくさんの人に本を買ってもらえたらいいな~
インプットと頭の中の整理をして、ボチボチがんばります。
読んでくれてありがとうございました~~




オマケ

あとがきのページに載せた絵。
betcover!! 「サンダーボルトチェーンソー」ジャケットのオマージュです。
私、この本描いてる間ずっとbetcover!!聴いていました。

柳瀬二郎(betcover!!)ってね、遠くで歌ってるんですよ。手が届かないところ。それが嬉しいんですね。

柳瀬は多摩川で、異国の砂漠で、誰も知らない小さな星で歌っていて、そこに私はいないんです。
なんと美しいことでしょうか……ありがとう。

私の骨は多摩川を望める木の下に埋めてください。
無理なら甲府市の下水に流してください。

???



……何か変なものを見ましたか?
私には見えませんでしたが……怖い……

みんなが私の絵を見た時、頭の中にbetcover!!の楽曲が再生されてほしいです。

音楽の仕事、やってみた〜い

(終わり)


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