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黒蜥蜴と白い鳩

プリンセスプリンシパルというアニメを見ました。劇場版の第1章が公開中でそれに合わせてテレビ版が配信され始めたみたいなのですが、オンタイムでは全然知らなかったwてかタイトル的になんか美少女日常系か美少女ハーレム系だと思ってたのもあったり。

ちゃんと「イギリスを19世紀末のロンドンが王国と共和国に分断されたスチームパンクの世界観で美少女5人がスパイ活動をするちょっとハード目なストーリーで百合もあるよってか百合だよ」って説明してくんないと。そこはかとなく名作カウボーイビバップをも感じさせます。

■何よりオープニングが素晴らしい

このアニメのオープニング何回見ても飽きないです。すごく良くできてる。作中の音楽は梶浦由記さんがやってて当然のようにめちゃくちゃ素晴らしいんですがOPの曲はアニソンやゲーソンを多く手掛けてる高橋諒さんが作曲してて歌ってるのが日本版RENTのミュージカルでも歌ってる方だそうで、めちゃくちゃ渋くてハードで力強い。歌詞もストーリーに合わせて書かれた英語なんだけど和訳探したらめちゃくちゃ良かった…。

映像自体はプリンセスを助けにいく4人のイメージという感じなんですが、いきなり飛び出す車から疾走感が最後まで突き抜けてるんですが、車、タイトルのあとにスパイチーム白鳩のメンバーの紹介カットになってるんだけど、それぞれの表情がスパイとしての態度とか特性、あとキャラの性格をすげぇ表してるんすね。ドロシーは分かりやすいけど、ベアトの表情がめっちゃいいなと。でプリンセスもどっかに囚われてるのかなんなのかなんだけど、振り向いたときの表情も温和な性格をちゃんと表現してるという。
で、この世界には重力を操るケイバーライトという鉱石があって、それによって得た軍事力がロンドンの分断につながってるみたいなんですが、そのイメージとプリンセスの境遇が世界の逆転で描かれていて、プリンセスの危機に車で飛び込んでいく4人ってのが彼女たちの関係性を表してるし落っこちてく状況に対する表情がまたキャラを表してるという。個人的に車からぽーんととんでるちせの体勢がめっちゃツボ。
で落ちてるプリンセスは自分に向かって重力操作装置Cボールの力を使って飛んでくるアンジェを見てるんだけど、一瞬怪物みたいなものに変わるんですね。これが作中でたびたびアンジェが口にする「クロトカゲ星人」なんだけど、クロトカゲ星人の意味を知るとこのシーンがめちゃくちゃ熱いものだと分かります。
んでアンジェに無事助けられるザお姫様、はい尊い。
ここ数年で映像と音楽併せて最強クラスのオープニングだと思います。

■クロトカゲ星人とは

ちなみにこのアニメ、2017年にTOKYO MXとかで放送されてるんですが(だからあんまし知名度ないのかも)不思議な構成で各話のサブタイにcase○○って番号が振られてるんですがこのケースナンバーが時系列を表してて放送(配信の並びも)自体は時系列順ではないんです。全12話なのに第1話がcase13というw つまり12話だけど描かれてないエピソードが存在するんです。とはいえ第1話はそんな終盤でもなく、単純にメンバーが揃ってそれぞれの特性をスパイ活動に活かせるようになった頃の任務であり、かつ作品全体の内容をうまく表してるお話だから最初に持ってきたのかなと。まあこの作品、やろうと思えばそれこそカウボーイビバップみたいに核心に関わらないミッションならいくらでも描けそうなんですよね。

そして主人公であるアンジェがたびたび自分のことを「クロトカゲ星人」と言って相手との話を煙に巻いてるようなシーンがあるんです。これがOPにも出てくるわけですが。
でもちゃんと見ると分かるんだけど「クロトカゲ星人」を出してる場面は、スパイとして仮面を被って組織の命令に沿って行動しているアンジェの中にある個人としての素の感情や行動をしてる時なんですね。本当のことを嘘で包むという。

ちなみに5人がお茶会をしてる時など日向と影でも嘘や本当を表現してるみたいです。

で、クロトカゲってどこから来てるのか考察されてる人達がいて、おそらく江戸川乱歩の小説に出てくる女盗賊「黒蜥蜴」がモチーフなんだろうと。「美しいもの」を収集する美貌の盗賊で名探偵明智小五郎と対決するが二人の間には奇妙な絆が芽生えていたり。まあ俺、シャーロックホームズとかポワロさんコロンボさんは好きなんだけど日本の探偵小説ほぼ読んでないのであんまり知らないですwまあ、その黒蜥蜴をモチーフにしてるからアンジェの衣装も盗賊っぽいんだろうと。

まあその辺は別に知らなくてもいい情報なんだけど重要なのは「クロトカゲ星人」こそが他人に壁を作り「自分」を出さないアンジェの真の姿だということです。そしてOPの映像ではプリンセスの目には紛れもない「クロトカゲ星人」が「見えてる」ってことなのですよ。

ネタバレになってしまうのでこれ以降は未視聴の方は読まないで欲しい。

■虚実の中の嘘と本当

テレビ版で描かれるストーリーの本筋は5人がスパイチームとしてまとまるまでって感じでプリンセスとアンジェの目標とするものは一切達成されてないんですね。ラスボスであるノルマンディー公や壊すべきロンドンの壁はそのままですし。制作の段階で12話でそれを描くのは不可能だってことで、12話の最終目的地はアンジェが成長することで彼女とプリンセスが同じ目標に向かってようやく向き合うってとこなんでしょうね。だから完全に「俺たちの戦いはこれからだ」エンドですw

このアニメのややこしいとこはスパイものなのであっちこっちに嘘があるわけですが、まずアンジェとドロシーは共和国から王国の高校に女生徒に偽装して潜入するんだけど、そこで本来、その容姿が瓜二つであることを利用して入れ替わる対象だったプリンセスに「共和国にスパイとして協力するので自分が女王になるために協力して欲しい」と持ちかけられることに。共和国側はそれを受け入れ、プリンセスと侍女であるベアトリスもスパイに。そして日本の外交特使である堀河公の部下であるちせが成り行きから協力者として参加。

ところがチーム仲間であるドロシーとベアト、ちせに対してシャーロットとプリンセスだけの秘密があって、二人は幼少期に入れ替わっていて本当のプリンセスことシャーロットはアンジェの方であるという。そしてアンジェは二人だけで逃げようとしていた。ところがプリンセスはアンジェがかつて言っていた「この世界を変える」というのを自分が成し遂げるという。

でまあ一応了承したけどやっぱりアンジェはプリンセスを自分のせいで「巻き込んだ」と思っていて二人で逃げることを優先しちゃうんだけど、プリンセスはそれを拒絶して命がけで戦争に繋がる革命を止めようとする。

アンジェは7歳くらいの時に革命のどさくさで入れ替わって平民としてなんとか生き長らえてスパイになるわけだけど、それまでに王族として英才教育をされた知識や教養も活かしてトップクラスのスパイになったんだろうけどプリンセスのことに関してはポンコツになりがちなんですよね。自分の素を「クロトカゲ星人」で隠すあたりも割とポンコツな気がするけど、そういったことも含めて本当のアンジェもとい「シャーロット」を知って理解して見抜いているのが唯一プリンセスであるという。

それを表現しているのがOPのクロトカゲ星人なんですよドン!熱い!知らんけど!

■見所が沢山

スチームパンク的世界設定もアンジェとプリンセスのことでも割とややこしい上にスパイのあれやこれやも割と説明なしにやってるのでスパイ小説とか読んだことない人にはハードル高めな気もする「本格派」な作りになってるんですが、主人公たちが可愛い女の子であることでそういった面でも「騙される」作品ですねこれ。

世界観をちゃんとするために建物とか乗り物とかもしっかり作り込まれてる。描くの大変そうw

衣装のデザインとかもすごく良いんですよねー。それぞれの特徴を活かすのももちろんデザインとしてもシャレオツだし。

武器にもこだわってるみたいで効果音とかにもそれが現れてますね。

あと、割と普通に人を殺すしバタバタ死ぬとこあるw

描いてないけどドロシーはけっこうエグイ女の武器を使ってそう。ていうか各キャラをフューチャーした話があるけどドロシーだけ異常に重くないですかね…。いや他の子たちも重いか。でも父親の回と委員長の回見るとね…。よくあれであの陽気な姉御肌のままでいられるな怖ってなるw

ちせも父親を刺すっていう重い回あるけど、戦闘シーンの素晴らしさがそれを和らげてくれるというかwアクション要因はアンジェとちせだけなんだけど、アンジェの方はCボールとか銃使う分、近接戦闘はちせの独壇場で、その描写が物凄いんすよねこのアニメ。それ以外の時は割と癒し要員なだけにギャップもあってカッコいいという。ちせとベアトいなかったら本当に気が荒むと思うw

一番フツーの子で視聴者目線の説明要員でもあるベアトリスもキャラ的には癒し要員なんだけど彼女の特技である声帯模写に関わる部分はどす黒い重さありますからね。

可愛いビジュアルにドロドロに重いもの仕込むあたりはまどマギを彷彿とさせます。

■劇場版第1章公開中

なんでこのアニメを俺がつらつらを語っているかというと、もちろん作品が素晴らしいからなんですが、これ劇場版第1章が今公開中で6部作やるらしいんですね。

劇場版のオープニングもかっちょよかった…。

しかし、ちゃんと6章までやってくれる?

っていう不安がありましてwこのご時世だしただでさえ映画館行く人少ない上に元々のテレビ版見てる人がどれだけいるのかっていう。若干とっつきにくさがありそうな気もするし。6章までやれるかどうか毎回の興行成績次第なんじゃないかって。だとしたら1章の売上が一番響くと思うんです。そして第1章がまずコロナの影響で延期されまくって今公開しているという。本当は2019年公開予定だったとかw

この劇場版6部作でテレビ版では出てこなかった他の王位継承権者が出てきて王位継承に関わる大きな陰謀を描くみたいで。それこそがアンジェとプリンセスを描くこの作品の本当のドラマ部分だと思うんですよね。テレビ版は完全にプロローグ。そんで1章はちゃんと単体のお話としてもまとまってるけど、まだその陰謀の触りでしかないというw

しかし、このお話の中でチェスが出てくるんだけどチェスの盤面がストーリーを表してたりとか細かい!

そしてテレビ版ラストのお話の続きってことでスパイ狩りが始まり、ノルマンディー公は明らかにプリンセスに疑惑を持っているっていうか確信を持って泳がせてる?って感じだし、アンジェたちは自分たちがいつビショップや第1話のエリックの立場になってもおかしくないというのを感じてるし。

重い!

重いだけにこの作品というかアンジェとプリンセスの行く末がテレビ版で言ってたような断頭台で終わるのかどうかそこはちゃんと描き切って欲しいなと思ってるので、だからまあみんな売上に貢献しようぜっていう話ですw

ところで5人のイニシャルがアンジェ、ドロシー、ベアト、ちせがA、D、B、Cでアルファベットの最初の4文字なのは別に偶然なんですかね。プリンセスはPだしシャーロットだとCで被るし…特に意味はないのかな

サポート頂けたら…どうしよっかなぁ〜。答えはもちろん、イヤァオ!