明日の神話

明日の神話を知っていますか?
東京に住んでいる人なら1度は目にしたことがあるかもしれません。
明日の神話は岡本太郎さんの原爆が炸裂する悲劇を描いた絵です。
僕が初めて明日の神話を目にしたのは中学3年生の時でした。初めて1人で行く渋谷にワクワクしながら、井の頭線の改札を出ました。すると、少ししたところで異様な空気を感じました。前を歩いていた靴はどんどんと遠ざかっていき、さまざまな靴が僕を横切っているのが見えて、自分の足が動いていないことに気づきました。どんどん脚の力が奪われていき立てなくなりそうになったところで僕はガラス窓の少し座れそうなところに倒れるように座りました。そこで顔を上げると、目の前には明日の神話が飾られていました。絵の大きさも相まって、迫力がすごく、このままでは飲み込まれてしまいそうだと思ってすぐに目を逸らしました。目を逸らしても、絵から発されるパワーに圧倒されて約15分間、全く立つことができませんでした。それが僕の明日の神話との初めての対面でした。その後何日か夢に出てくるくらい、トラウマにもなりました。次に明日の神話と対面することになったのは浪人生になった時でした。
渋谷にある予備校に通うことになって、井の頭線の渋谷駅が通学路となって、毎日明日の神話の下を通らなければならなくなりました。
毎日、そこを通る時だけは気を張っていないと絵に飲み込まれて、全エネルギーを奪われてしまうような気がして、毎日グッと力を入れて歩いていました。それでも、明日の神話から放たれるエネルギーは凄まじいもので、自分の無力さやちっぽけさを感じさせ、希望すらも吸い取られてしまう気がしました。怖くて怖くて、そこを通らないで遠回りしていく日も何日もあったし、予備校がめんどくさくて1日中眺めていた日もありました。
所詮絵なんてと思っていた自分が恥ずかしくなるくらい、一つの絵によっていろんな感情にさせられた1年でした。

芸術の意義というものを明日の神話から学んだ気がします。

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