畜生たちの楽園のこと
twitterやfacebookなどには終演直後にご挨拶の言葉だけ綴ったのですが、少しだけ自分の備忘録的な意味も含めて書いておこうと思います。
AI・HALLで上演されました劇団不労社「畜生たちの楽園」劇場での本番が終わりました。このご時世に、劇場までご来場くださいましたお客様、共演者、スタッフの皆様、そして支えてくださった全ての方に感謝します。本当にありがとうございました。
ご覧になった方々は感じられたように、なかなかに衝撃要素が多い内容で、はっきりと好みが分かれる作品だったと思います。実存のコミューンを題材に、取材研究の上で作・演出の西田くんが創作した戯曲です。役者の私たちもほんの少しだけですが、その実存のコミューンの入会活動(劇中「特活」と呼ばれていた7泊8日の合宿)のことなどを勉強したりしました。
私はたまたまですが、幼い頃、この実存のコミューンの方が育てた野菜や生産した牛乳を近所に売りに来るという場面に何度も遭遇していて、販売の日毎に「体に凄くいいものだから」と、その売り場に多くの人が集まっていたことを思い出したり、母に当時の話を聞いたりしました。
(以下ネタバレあります)アフタートークで岩崎さんと西田くんの話を聞いてくださった方はわかると思うのですが、卑猥なものが飛び出してくるとか、カルト化するコミューンという場所で起こる、台詞にもある「狂ってんな」と思われる様々な奇怪な行為などは、そういったコミューンそのものや、そこに生きる人たちを決して馬鹿にしているわけではなく、そうなっていく可能性を秘めた人間の脆さや、目玉がぼろんと取れるという象徴もそうですが、手放すとか、見えているものとはなんぞや、見えてないものを見てみろよという要素にも関わるところで。またそこが広がり過ぎたテーマで実に難解なのですが。現象だけを面白がっているのではないということが伝わればと思っています。
観た方からいろんな感想を頂きました。どの感想もありがたいです。ダメやったぁという率直なものもあり。でも個人的に連絡くれたりの中で一番たくさん言って頂いたのは、「テルの笑顔が怖い」でした。これは、おおう……と思いました。
これまでこういうタイプの作品に関わったことがほぼなかったので、自分としても手探りで、先ず「どう居ればいいのか」というのをずっと考えていたのですが、演出からは大体、笑っておいてください。そこはもう強烈に優しく、と言われていて。その結果、観た方の中に、不労社特有の「なんとも言えぬ恐怖感」という感情が沸き起こったのなら、それは全部西田くんの演出なのです。劇団としては、怖いけど笑える。笑えるけど怖い。を目指しているそうです。まだまだ私の芝居はそこまでには至ってなかったと思うんだけども。
本当に怖い部分はラスト間近、一番お客様と近い感覚のはずのカメラマン乾が豚小屋に誘われるところ、有馬の「もうこっち側に半分入ってるんですから」という台詞などのああいう恐怖かなと。人間があっちとこっちという境界があってそこで揺れる様は分かるんだけど、もう揺れている自分すら不確かっていう脆い感覚。ラストで新井くんが自分の体があるのかどうか確かめる一瞬とか。そんなこと普段思いもしないけど、それ考えたらめちゃ怖くない?みたいな要素をするりと持ってくる。実に怖い。
あと、不労社の台本は、言葉選びが凄く面白いのも魅力だなあと思って。作品そのもののタッチもそうだけど、こんな台詞を書く人にはあまり出会ってこなくて、とても新鮮でした。彰とバイオ牛嶋のやりとりは何処も笑えるし、なくなった目玉の痛みを手放せーから探すシーンの天天丸と有馬もほんま台詞聞いてるだけで面白い。笑えるけど、実はなんて怖いことに言ってんねんっていうやつです。
もうひとつ感じたことは集まっている役者の皆。とても若いんだけど、皆めちゃいい芝居します。どんだけギリでもバンバン台詞変わっても即対応。そしておもろい。凄いなぁ。この古ぼけた脳味噌は稽古場で、ああ見習いたいーとばっかり思ってました。
続く緊急事態宣言や蔓防の影響で、稽古も毎日できない上に、稽古帰りも勿論即解散。本番中の食事も個々の鏡前でみんなほぼ無言。打ち上げも当然無しでした。仕方ないんだけど……。もうねえ、会話したくてしかたなかった。メンバー皆いい人ばかりで芝居好きで、ほんまもっと話したかった。本当なら、本当?何が本当?いや、私が思う本当なだけやけど、本当は稽古中からしょうもないことでもあーだこーだと言い合って、もっと色んなこと試したりもしたかった。会話したからできるというものでもないけど、した方がいいこともいっぱいあるよな。
作・演出の西田くんはじめ、不労社の劇団員のみんな、共演者のみんな、本当にありがとう。とても楽しかったです。スタッフ・協力してくださった皆様本当にありがとうございました。あんな素晴らしい美術の中で、素敵な音と明かりがあって役者冥利に尽きる本番でした。
20代まだまだ若い団体なので、不労社これからもっとおもしろくなると思う。私は楽しみにしています。
まだ暫く体調管理の日は続きますが、劇場での本番を無事終えれてホッとしています。コロナ禍になってから、自分の劇団では何もしてないのですが、声をかけてくださる団体様のお陰で芝居ができて、しかも幸運にも稽古始まっていざスタートしたものは中止にならず板の上に立つことができています。本当にありがたいことです。この情況でも本番を打つということの大変さよ。でもやり遂げた後の嬉しさよ。ああミクロも頑張らなあかんなと思いました。
観てくださった皆様。そっと遠くから見守ってくださった皆様。心より感謝致します。少しずつですが、これからも精進していきますので応援してもらえたら嬉しいです。
次は、8月無名劇団さんがつくる映画に出演させて頂きます。映画の完成は来年の予定です。そのあと、9月に松原市で阿笠清子先生の作・演出の作品に出演します。劇団員泥谷も9月にまた「ばぶれるりぐる」さんの最新作に出演致します。劇団員共に細々と頑張っていますので、ミクロも今後ともどうぞ宜しくお願い致します。
最後にインパクトが凄い大河さんのフライヤーと写真数枚載せておきます◎
令和3年次世代応援企画 break a leg 参加作品
劇団不労社 第八回公演「畜生たちの楽園」
2021年 7/17〜18 会場:伊丹市立演劇ホール AI・HALL
【追記】2021年 8/2 劇団不労社よりお知らせ🔻🔻
『畜生たちの楽園』公演終了から観察期間の2週間を経過し、お客様/座組一同から体調不良の報告もなくこれにて正式に終演となります。
感染症対策へのご協力誠にありがとうございました。
ということで、無事公演が終わりました。皆様。本当にありがとうございました。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?