“夏菜子浴”を全身で浴びる。百田夏菜子ソロコンサート「Talk With Me ~シンデレラタイム~」(1日目)@さいたまスーパーアリーナ
ももクロ百田夏菜子による初めてのソロコンサート。演出には本広克行監督が起用された。客席はスタンドサイドの後方(17列)だったが、入ってみるとセンターステージで視野は良好。SSAでこの形態は初めてではないか。両サイドにはかなり巨大なモニター画面が一対設置されていた。
初日ということで詳しい中身には触れないことにするが、結論からいえばとても素晴らしいソロコンだった。もちろん、毎年開催を続けることで進化を続けている佐々木彩夏、高城れにのソロコンはそれぞれまったく違ったよさがあるのだが、この日のソロコンはこのグループにとって百田夏菜子がどういう存在だったのかを再認識されてくれた意味でも極めて有意義なものだったと思う。夏菜子の特徴は人の感情を揺り動かすようなエモーショナルな歌声であり、ももクロにとっては落ちサビなど楽曲の決定的なイメージを決める場面で起用されることが多いのだが、ソロではすべてを歌うのでそういう効果は持続的に現れ、観客は身体全体でそれを浴びることになる。いわば「夏菜子浴」といってもいいがこの威力の凄まじさを身を持って感じることになった。
そして、普通はその間に他のメンバーの歌が入り、違う声質の影響も受けるのだが、次も次も夏菜子の歌というソロコンの恐ろしさ。最近はほかのメンバーのソロコンにも慣れがきているが、初めて高城れにのソロコンをライブビューイングで目撃し、有安杏果のソロコンを横浜アリーナで体験した時に感じた「ソロコンってこういうことなんだ」という忘れていた感情の記憶が鮮やかに甦ってきた気がした。
それにしてもももクロでも披露したのは数えるほどの「魂のたべもの」をあえて冒頭に持ってきたのは驚いたが、そのままミュージカル曲といっても通るぐらいの難曲をなんなく歌いこなす歌唱の安定度にも改めて驚かさせられた。上演される予定がコロナ禍で延期となった明治座公演はミュージカルの予定だったと聞くが、明治座もこの日と同じ本広克行演出、宗本宗兵音楽監督のコンビだったので、ある程度分かっていたことではあろうが、より本格的なミュージカルへの挑戦とこの日はまだ限定的ではあったももクロ大規模ライブのミュージカル的演出に向けても一歩前進を思わせるものであった。
(2日目終了後以下を加筆)
自ら作詞したというソロ曲が2曲入り、ファンにとっては何よりのプレゼントだった。ただ、歌詞は正直言ってまだまだ試行錯誤の域を否めず、すぐに配信などがなかったのはキングレコードサイドも同じような判断だったのではないか。ナオト・インティライミによる新曲「わかっているのに」もソロ曲が少ない夏菜子にとっては重要な楽曲だが、配信曲になるかどうかは微妙。そういう楽曲と比べると大人の味を感じさせる「赤い幻夜」は映画「すくってごらん」の主題歌に選ばれた歌だけに今後も歌い継がれていきそう。カバー曲ではあるが、大人になった夏菜子の魅力を感じさせる楽曲であった「強がり」も印象的であった。
ただ、それでもソロコン全体の目玉はピアノ演奏による「白金の夜明け」とソロピアノだけの伴奏による「イマジネーション」である。ももクロでもまた聴きたいアレンジであった。
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