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#4.NEW GAME!

「道をひらく」・「実践経営哲学」・「リーダーになる人に知っておいてほしいこと」

大学4年の3月。4月に入社する会社の人事から、入社するまでに読むように言われた本だ。
社会人必読の本らしい。

ちなみに全て松下幸之助が著したものだ。
なぜ松下幸之助なのかは、まぁ察してください。

学生生活ラスト1か月。
ゼミの友達と旅行したり、サークルの同期とスノボに行ったり遊び急いでいたが、時間を見つけて何とか3冊読み切った。
1冊につき原稿用紙3枚分の感想文を書かされた覚えがある。

はっきり言って内容は全く覚えていない。
良いことは書いてあったと思うが、まだ学生だった僕からしたら「まぁ、そんなもんかな」と思うような内容だった。
「へー、まつこう頑張ったね」みたいな。
※まつこう=松下幸之助

もし当時の自分に声をかけてあげられるならこう言いたい。
「そんな本読んでも難しくてよく分からねーぞ!時間があるならアニメ『NEW GAME!』を観ろ!その方がよっぽど社会人になってから役に立つぞ!」と。

そう、今日は超人気アニメ「NEW GAME!」について話したい。

「NEW GAME!」は2013年から「まんがタイムきららキャラット」で連載されている得能正太郎先生の4コマ漫画で、2016年と2017年にアニメ化された。
※2017年に放送された2期は!が2つで「NEW GAME!!」だが、便宜上「NEW GAME!」で統一する。

「NEW GAME!」とはどんな話なのか。
一言でいうと、「キャラクターデザイナーになる」という夢を追いかけて、高卒でゲーム制作会社に入った新入社員の女の子が頑張る話だ。

正直に言おう。
僕は最初、ネットの評価やキャラの見た目から、可愛い女の子たちがキャッキャしてる百合百合しい日常系アニメだと思っていた。
ただ単に設定が会社なだけだろ?と。

とんでもなかった。

めちゃくちゃアツい話だったのである。
確かに1期では、ほのぼのした様子も多く描かれている。日常的な要素も5割くらいはあるかもしれない。だが残りの5割は夢を追いかける者達の努力の話である。
2期になるとその割合は2:8くらいになる。

「NEW GAME!」には夢に向かって頑張る社会人にとって大切なものがすべて詰まっている。

さらに詳しく説明するためにキャラを紹介する。
「NEW GAME!」では本当に魅力的なキャラがたくさん登場するが、全員紹介していると流石に長くなるのでここでは2人だけ。

●涼風青葉
「NEW GAME!」の主人公。18歳。
ゲーム会社「イーグルジャンプ」の新入社員。
小学生のときにゲーム「フェアリーズストーリー」に出会い、キャラクタ-デザイナーを志す。
たまに18歳らしい幼さを見せることがあるが、基本的には真面目で明るくて前向きな性格の持ち主だ。
コミュニケーション能力が高く、周りの先輩や八神コウともすぐに打ち解ける。
入社初日の2時間半残業や、入社1ヶ月もしないうちに発生した会社での泊まり込み作業(!)を嬉々として楽しむなど社畜気質だ。
グラフィッカーとしての採用だが、キャラクターデザイナーとして活躍するため日々努力する。その姿は周りにもいい影響を与える。
※グラフィッカー=キャラクターデザイナーがデザインしたキャラを3Dにする仕事

●八神コウ
青葉の上司。25歳。
「フェアリーズストーリー」のメインキャラクタ-デザイナーで、青葉の憧れの人である。
青葉がイーグルジャンプに入社したのは八神がいたからである。
青葉と同様に高卒でイーグルジャンプに就職。
一年目からメインキャラクタ-デザイナーになる実力の持ち主で会社の顔。
ただ、プライベートはずぼら。
下着姿で会社で寝泊まりするなど、見た目にはあまり気を使わない。
一方で、仕事の才能と熱意は本物で、1人で数人分の仕事をこなす。
あまりの天才ぶりと、仕事へのストイックな姿勢から入社当初は先輩から疎まれ、浮いた存在だったが、今ではすっかり人付き合いにも慣れた。
基本的には優しく、ときに厳しく青葉を育てていく。

先に述べた通り他にも魅力的なキャラは多く、
・遠山りん
・滝本ひふみ
・篠田はじめ
・飯島ゆん
・桜ねね
・阿波根うみこ
などなどいるのだが、ここでは紹介しない。
このnoteを読んで興味を持ったら是非アニメを観てみてほしい。
八神コウ×遠山りん・青葉×滝本ひふみの百合展開に興味がある人も。

んで、

「NEW GAME!」はキャラの仲の良さやのほのぼのした雰囲気も魅力だが、やはり一番の魅力は涼風青葉と八神コウの師弟関係を中心に描かれる「夢を追う人の美しさ」だ。

そこには夢追う人への教訓が詰まっている。

ここで6個紹介する。

前置きが長くなったが(ここまで約2,000字)、最後に1つだけ。
「キャラクターデザイナー」がゲシュタルト崩壊してきたので、以降「キャラデザ」とします。

では、6個の教訓、行きます。

その1.【無駄な仕事はない】
1期の3話である。
入社1ヶ月、青葉は八神からNPCのモデリングを頼まれる。NPCとはNon Player Characterの略で、操作できないキャラのことだ。
まぁ、言ってしまえばただの村人。

意気込む青葉だが、初めてなので当然上手くいかない。
何回八神に見せてもダメされてしまう。
全然OKが出ない青葉はつい「え、でもこれって村人ですよね?そんなに見ないんじゃ…」と言ってしまう。
NPCを軽視するような青葉の言葉に八神は優しく「そう?私はしょっちゅう見てるけど?リテイクお願い」と答える。
何回もリテイクを食らいながらも色々な人(と猫)に応援してもらってこの仕事をやり切った青葉は、徐々に信頼を勝ち取り重要なキャラの仕事をもらうことになった。

このエピソードは、無駄な仕事は1つもないことを僕らに伝えてくれる。
大小に関わらず、目の前の仕事を頑張っていれば必ず誰かがそれを見ている。
それが次の仕事に繋がっていったりするものだ。

ただ、同時にもう1つ憶えておいてほしい。
無駄な仕事は1つもないということは裏を返せば「無駄なことは仕事じゃない」ということだ。
どう考えてもこれは無駄だと思ったら、周りの人に相談してみるのが良いかもしれない。

その2.【チャンスは突然くる】
1期の6話である。
NPCのモデリングの仕事が認められた青葉。
八神から次の仕事をもらう。
内容は「重要NPC」のデザインである。
そう、デザインである。
キャラデザになりたい青葉にとって、自分をアピールできる貴重なチャンスだ。
だが青葉は入社以降ずっと3Dモデリングの練習ばかりして、絵の練習を怠っていた。
「最近仕事でいっぱいいっぱいで絵も書いていませんでしたし…キャラデザをさせてもらえるって分かってたら…」という青葉に対して八神は「それは言い訳!」と切り捨てる。

これは、社会人になってからもよく起こる。
「うわー、この仕事あるって分かってれば普段からその業界のこと研究してたのに」とか「今日の会食〇〇さんがいるって分かってれば、著書読んでたのに」などなど。
だが、チャンスが前もって分かっていることなんて滅多にない。
有名な広告クリエイターの言葉を借りれば「チャンスは、ルーティンみたいな顔をして突然やってくる」のだ。

普段からどんなチャンスが来ても良いように準備をしておくことの重要性と、最低でも前もって分かっているチャンスには全力を出すことの大切さを思い出すエピソードだ。

その3.【頑張っている人はカッコ悪くない】
2期の2話である。
青葉がイーグルジャンプに入って2年目の春。
新しいゲーム「PECO」のメインキャラデザをかけて社内コンペが行われた。
圧倒的な天才・八神がいるため、多くの社員はコンペに参加しなかった。
「どうせ八神さんでしょ?」みたいな。

だが、ポジティブの塊である青葉は果敢に参加する。
そして、八神に助けてもらいながらではあるが、八神に勝って(複雑)なんと青葉の案が採用されるのだ。
八神ではなく入社2年目の若手社員がキャラデザになるわけだから結構な快挙である。
コンペ後、青葉の先輩・飯島ゆんがある告白をする。
「うちな、正直。ほんまは落ちるの分かってて頑張ってる青葉ちゃん見てて、カッコ悪いなって思ってて…。気づいたらウチだけなんも進んでへん。うちが一番カッコ悪い…。ちょっと出遅れしもうたけどウチも次のコンペ出ようと思うんや!普段から努力してこやんかったから、ダメやと思うけど。でも、頑張ってみる!せやからカッコ悪いと思ってたこと堪忍な…」
3個目にして八神と青葉の話じゃなくてすいません。でもどうしても言いたくて。
これ、これ、すごいことですよ。
なかなかできません。

このエピソードから得られる教訓は2つ。
1つ目は、たとえ誰かが、頑張っているあなたを冷ややかに見ていたとしても、結果を出すことで跳ね返すことができるということ。
そして2つ目。
もしあなたが、誰かの頑張りを冷ややかに見る側になってしまっても、相手の努力を素直に認めて反省することで自分自身もまた成長できるということだ。
特に僕は比較的性格が悪いので、特に2つ目の学びは大きい。
他の誰かが妬ましくなったり、周りを下げることで自意識を保とうとしているときに思い出したいシーンだ。

その4.【師弟関係はいつかライバルに変わる】
2期の6話である。
再び、八神と青葉がコンペをすることになる。
青葉がメインキャラデザを務めるゲーム「PECO」の制作終盤。
キービジュアルをかけたコンペだ。
キービジュアルとは、ゲーム雑誌や広告に使われる絵で、そのゲームの顔。
基本的にはメインキャラデザがキービジュアルを担当する。つまり青葉だ。
だが今回は事情が違った
なぜ、青葉と八神のコンペになったのか。
前作の大ヒットで、ゲームファンからイーグルジャンプへの期待が高まりまくっていたのだ。
絶対に失敗できない状況で出資会社は若手の青葉じゃなくて、実績十分の八神にキービジュアルを任せようとする。
大人ぶって納得しかける青葉だったが、八神が「なんでそんなに物分かりが良いんだよ!」と一喝。結局、八神と青葉がコンペをすることになったのだ。
ディレクターから面と向かって、このコンペは出来レースで青葉がどんなに良い絵を描いても八神の絵を採用する。これは青葉を納得させるためのコンペだと言われるが、健気に頑張る青葉。
コンペ前、夜中まで残って悩みながら絵を描く青葉と八神が会話する。
八神
「悪いね、変なことになっちゃって。私がコンペのときに青葉を助けてなければ、青葉にこんな半端な思いをさせなくて済んだのに…」

青葉
「こ、子ども扱いしないでください!確かに、八神さんの助けが無ければキャラデザは通ってませんでしたけど、それを受け入れたのも私の意志です!ちょっとくらい辛いことがあっても私は我慢できます!」

このシーンは本当に青葉の成長を感じた。週に30分しか青葉を観ていない視聴者ですらそう感じるのだから、上司として毎日接している八神はなおさらそう感じたはず(?)だ。

このとき、八神は青葉を初めて弟子としてではなくライバルとして意識することになった。
結局、圧倒的な実力差で八神の絵がキービジュアルになったが、この日を境に八神はある決心をする…。

このエピソードが教えてくれるのは、いつまでも弟子の気分でいたら師匠を抜くことはできないということ。ライバルとして喰らいついていくことが重要。もし今超えたいと思っている人がいるなら、その人に憧れるのではなく、まずはライバルとして意識してみるのが良いかもしれない。

その5.【楽しまないと良い仕事はできない】
これも2期の6話である。
不本意な形で八神とコンペすることになってしまった青葉。なかなか良い絵が描けずに悩んでいた。
頻繁に両手で頬を叩き無理矢理口角をあげる。
そして思う「楽しんで描けてる!」。
恐らく入社当社八神に言われたことを思い出していたのだろう。(1期6話)
八神「青葉は村人作ってて楽しかった?悔しいって気持ちも大事だけど、やっぱり楽しいって気持ちはこうして伝わると思うんだ。それが一番大事かなって」
作中では特に触れられていなかったが、1年経っても青葉の座右の銘になっていたのかもしれない。

本来仕事は人を楽しませるもの。自分たちが楽しくなったら、相手が楽しいはずがない。

皆さんも仕事が辛いとき、疲れたときはこの言葉を思い出すと良いかもしれない。

その6.【弟子の頑張りが師匠の背中を押す】
2期12話である。
さらに技術を磨くためフランスのゲーム会社に行くことを決意した八神。
一応は送別会で八神にお別れを伝えた青葉だったが、まだモヤモヤが残っていた。
渡仏当日空港に駆けつけた青葉。
八神とこんな会話をする。

青葉
「本当に自分勝手な上司だと思います。八神さんは会社の看板なんですよ。自覚はあるんですか?それに、いつも適当だし、それでいてナイーブだし。振り回されるこっちの身にもなってください!八神さんは馬鹿野郎ですよ。八神さんは私の目標なんです。今だって十分すごい人なのに…なのにどうしてフランスなんかに行っちゃうんですか?」

八神
「私を、もっと上手くなりたいという気持ちにさせてくれたのは青葉なんだよ。キービジュアルのコンペ前日の夜、頑張っている青葉を見て私も負けてられないって思ったんだ。今に満足していた私に青葉が思い出させてくれたんだ。私、もっと上手くなりたいんだって。だから私は知らない環境で、海外でたくさん勉強してもっと上に行くよ。私が帰ってきたとき、今よりヘタレてたら承知しないんだから。これでも期待してるんだぞ。青葉のこと、離れていてもずっと見てるから」

2期6話。八神が青葉をライバルとして意識したキービジュアルコンペ。
青葉の頑張りが、八神の向上心のスイッチを押したのだ。

本当の師弟関係は師匠から弟子へのgiveだけではなく、弟子から師匠へもgiveが発生する。
もし今あなたが弟子として誰かの下について、勉強をしている立場だったら、自分が師匠をさらに上に押し上げるという意識を持つことでより良い関係になるだろう。

以上、青葉と八神の関係を軸に様々な教訓を紹介してきた。
もしほんの少しでも興味を持ったら、アニメを観てほしい。
本当に面白いから。

一回観た人は改めて観返してほしい。

あ、そうだ。ここで少しだけ脱線を。
涼風青葉役を演じたのは高田憂希さん。
八神コウ役を演じたのは日笠陽子さん。
1期が放送された2016年、高田さんはデビューしたてで、本作が初主演。

一方日笠さんは大ベテラン。
常に年間アニメ出演本数ランキングでは上位。
2016年に関してはトップに1本差の2位。
押しも押されもしない大スター。

これ何かに似てません?
そう!青葉と八神の関係!
高田さんはインタビューで「自分と青葉が重なる所があるか」という質問にこう答えている。

「等身大感はちょっとあるかなと、演じていて思うことはあります。例えば、青葉ちゃんがキャラクターデザイナーとしてぶつかる壁には、声優としての自分の中にも似たところがあるなと感じたことがありました。オーディションを受けるときの心境に近いものがあるというか。オーディション会場で日笠さんとお会いすることもあるんです。始めはビックリしましたし、なんだかすごいことだなと思いました。役は違うかもしれませんが、同じ作品で演じようとする声優として、ライバル……というのは、おこがましいのですけれど、そういうかたちで関わることがあるのだと分かったときには、本当に気の引き締まる思いがしました。」(一部抜粋)
高田さんも声優として、日笠さんと同じステージに立てていることを誇りに思っていたし、嬉しかった。
また、ラジオでも尊敬する先輩に日笠さんの名前を挙げていた。

こういう関係性だから、アニメ内でも相性抜群だったのかもしれない。
このように、役を超えて声優としての2人の関係性にも注目するともっと「NEW GAME!」を楽しめるかもしれない。

さて、話が逸れたのでそろそろまとめよう。
「NEW GAME!」には青葉と八神以外にも魅力的なキャラだらけで学ぶところが多い。
桜ねねからは、期待されることの有難さを。
滝本ひふみからは、伝えることの重要性を。
篠田はじめからは、素直さを。
遠山りんからは、同期の大切さを。

繰り返しになるが、夢を追う社会人に重要なことが全て詰まっている。

「NEW GAME!」全体を通じて根底に流れるメッセージは「楽しみながら喰らいつけ」だ。

その姿勢が人の心を動かし、夢を近づけると思う。

偉そうに色々書いてきたが、僕もまだまだなので頑張る。
頑張っている同志の皆さん、青葉が楽しみながら八神に喰らいつく姿に自分を重ねて、今日も一日頑張りましょう。


いや、
今日も一日がんばるぞい!


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