【アイテム紹介】アンティークステッキ
ステッキとは?
現在ステッキ(杖)というと歩行補助のための介護用品のイメージが強いと思います。
しかし中世ヨーロッパだけでなく明治時代の日本でも、かつては紳士のファッションに欠かせないアイテムでした。
当時のステッキはハンドルのデザインや装飾に様々な意匠を凝らし、実用性よりもアクセサリーとしても意味あいが強いものです。
18世紀後半から19世紀の英国ではステッキが英国紳士のシンボル的なアイテムでした。
今でもタキシードにシルクハットそしてステッキのスタイルが、定番の英国紳士のファッションスタイルというイメージが強く残っています。
ステッキの歴史
杖を表現する英語はステッキ(STICK)の他にもケーン(CANE)、ワンド(WAND)、スタッフ(STAFF)、ロッド(ROD)、ポール(POLE)、メイス(MACE)、セプター(SEPTER)などいろいろなものがありますが、長さや用途(歩行補助、農具、武器、権威の象徴など)によって呼び方がかわります。
ステッキは英語のSTICKがなまった和製英語で、おしゃれと歩行補助のための杖を指します。
STICKには単純に「棒」の意味もありますので、杖の意味を明確にするために「WALKING STICK」と表現することも多いです。
杖はもともと農具や武器、歩行補助などの実用品として使われていたものです。
それが古代エジプト、古代ギリシャ、古代ローマなどの神々の絵には様々な杖が登場するようになり、御神木から加工するなど神聖視されたり権威の象徴となっていきました。
ヨーロッパでは王様が権威の象徴として国家的儀式に使用したり、聖職者がその位を象徴する杖を持つなど儀礼的な意味合いが強くなっていきます。
徐々に王様だけでなく貴族の装飾品としても広まり、様々な装飾のものが使用されるようになりました。
王様や貴族などにとって、歩行補助の目的でない杖を持つことは「片手を塞いでいても何不自由なく暮らすことが出来る」ということを主張するための、権威の象徴となっていったようです。
18世紀に産業革命によって大きく発展したイギリスの紳士たちの間ではファッションアイテムとしてステッキが大流行し、ハット、ネクタイ、手袋などとともに「きちんとした身なり」のシンボル的なアイテムとなりました。
20世紀に入るとファッションも実用的なものが好まれるようになり、男性のステータスが自動車に変化していくなどの流れでステッキを携帯する習慣は徐々に失われていきました。
ステッキの部位
1.ハンドル
ステッキを握る部分です グリップとも呼びます
様々な形状、材質、デザインのものがあります
2.カラー
ハンドルとシャフトをつなぐための金具です 中環リングとも呼ばれます
持ち主のイニシャルやメッセージが刻印されているものもあります
3.シャフト
ステッキの支柱の部分です
様々な木材が使用されます
4.フェルール
地面に接する部分を補強するパーツです 石突きとも呼ばれます
金属や水牛の角などで作られます
ダメージを受けやすい部分なので消耗品です
アンティークのステッキは途中で交換されているものが多いです
いろいろなステッキ
アンティークのステッキは様々な形状、材質ものもがありますが、ここでは代表的なものをご紹介致します。
1.ハンドル(グリップ)の種類
A.クルックハンドル
傘の持ち手のような形状の丸いハンドルです
丸形、曲がり型とも呼ばれます
B.クラッチハンドル
グリップ部分がT字型になっていて、長いほうを手前にして握ります
長い方が下に曲がっているタイプはダービーハンドルとも呼びます
C.ポンメルハンドル
ハンドル部分が瘤状の丸い突起がついているタイプです
ノブハンドル、握り玉、大黒とも呼ばれます
D.アニマルヘッドハンドル
ハンドル部分に鳥や動物の頭をかたどった彫刻があります
高級ステッキによく見られるデザインです
2.ハンドルの材質
A.シルバー
英国のものはスターリングシルバー(純度92.5%)のものが多いです
美しい銀彫刻がほどこされているものが多いです
B.木材
シャフトと同じ材質タイプと異なる材質をつなぎ合わせたタイプがあります
C.動物の角・牙など
水牛や鹿の角や象牙などでできたタイプです
D.その他
タイガーアイなどの天然石やマザーオブパール、銅や真鍮などのものがあります
3.シャフトの材質
A.黒檀(エボニー)
東南アジア原産の木で高級家具の材料としても有名です
深い黒色で非常に硬い材質です。
他の木材を黒檀のように黒く着色したエボナイズド加工のものもあります。
B.紫檀(ローズウッド)
黒檀とならぶ高級材です。
新鮮な材木はバラのような香りを持つものもあることからローズウッドとも呼ばれます。
材質は固く色は薄い褐色から紫のような色まで多彩です。
C.竹(バンブー)
ヨーロッパにもアジア産の竹が使われたステッキが数多く存在します。
軽くて丈夫で東洋趣味のオリエンタリズムもあり人気だったようです。
D.マラッカ藤
マレーシアやインドネシアの熱帯に自生する木です。
竹のようなフシがありますが、節の間が長いものを切り取ってステッキに使用します。
非常に軽く適度なしなりがあります。
アンティークのステッキは現在のような歩行補助用の医療器具として作られていないものがほとんどで、強度的にはそうした使い方には向いていません。
しかし、当時のジェントルマン達が少しでも人と違うものを使いたいという要求から生まれた様々な意匠のステッキ達は見ているだけでも美しいものがたくさんあります。
もちろんクラシックな装いに合わせて、ファッションとして使用する分には今でも実用することが可能です。
当店のアンティークステッキの商品リストはこちら
https://silver-lug.com/collections/stick
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